原則を守らなかったが故に、造影効果が分からなくなった!
最近やってしまった大失敗です。肩の軟部腫瘤の造影検査です。肩はCHESS法などの脂肪抑制が効きにくく、ムラが出てしまいますよね。そこで、新しく使えるようになった、TSE DIXON法をトライしてみることにしました。DIXON法は、均一な脂肪抑制法として期待されているからです。まず、造影前のT2WIとT1WIではそれぞれ高信号、低信号を示す楕円形の腫瘤を認めます(図1、図2)。
造影後のT1WI画像(TSE法、CHESS法による脂肪抑制)(図3) においては、辺縁部の増強効果が認められる一方、内部は染まっていないように見えますので、嚢胞性の病変や、中心壊死が考えられることになります。
ところが意外なことに、同じ造影後のT1WIでもDIXON法による脂肪抑制法で撮影されたもの(図4)を見ると、なぜか腫瘤の中身が高信号を示し、染まっているように見えますね。
充実性の病変も疑われることになってしまいますから、180度逆の結論も考えられるのです。
このような、変な画像を撮像してしまった原因は、完全に私のミスなのですが、restore pulse *がonになっていました。
* GEではFRFSEにFSEを変化させるFlip back、PhilipsではDRIVE
短いTRでT2強調画像を得るためのシーケンスで造影脂肪抑制を撮影したがゆえに、T1なのか、プロトンなのかわけのわからない画像になってしまいました。 パラメータのチェック漏れでした。この効果については再度検証しましたので後述します。
もう一つ重大な検査ミスがあります。
反省するのは、「造影前と造影後は同一撮像法で検査する」という鉄則を守らなかったこと。これにより、造影されているのか造影されていないのかという、最も大切な情報が欠落してしまうことになりました。同一撮像法であれば、造影効果がわかりにくい場合であれば、Subtractionを行って確かめることができるからです。
別の症例(原則を守った・・)
で、このミスを踏まえて、撮影した症例が、下の画像です。
骨髄炎疑いで検査した症例です。
↓ 踵骨と、その周囲の測定部に異常があるのですが、T2WIでは詳細が分かりません。
↓ 脂肪抑制T2WIでは、踵骨とその周囲の浮腫が良くわかります。
↓これは脂肪抑制T1WI(造影前)
↓これは脂肪抑制T1WI(造影後)
↓これはサブトラクション(造影後ー造影前)
こんなふうに、造影前と造影後で同じ撮影をすれば、造影効果が確実に分かりますし、サブトラクション画像を作ればさらに明確にわかります。
誤って入っていたFlip Backの効果
さて冒頭のDIXON法による不思議な「造影後画像」ですが、その原因は、T2コントラストを強制的に付加するプリパルスが入っていたからのようです。
下記に後十字靭帯の後方に(とても小さいですが)のう胞がある造影検査を提示します。
↓ 後十字靭帯後方に、脂肪抑制T2WIで高信号の液体を認めます。
↓造影前後の脂肪抑制T1WIでは、滑膜などの炎症と、その内側の染まらない部分(嚢胞)が分かります。これはrestore pulseが入っていない(つまり正しい方法で)撮像されたものです。
↓ところが、restore pulseが入っていると、嚢胞部分が高信号になってしまい、あたかも「造影効果があるように」写ってしましまいました。
このように、嚢胞性病変のある場合に、間違ってrestoreが入ってしまっていたので、嚢胞内が高信号を示し、あたかも造影されてしまったように写ったということがわかりました。r新しい撮影法であっても基本に忠実に検査する必要性を痛感した検査でした。
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