唐津赤十字病院の立川です。私自身初めてITEMに参加しました。
Philipsブースの取材を行いましたので、ご報告させていただきます。
内海さまに取材にご対応いただき、大変詳細に教えていただきました。
多核種(Multi Nuclei)イメージング対応のMR7700
MR7700や多核種分子イメージングについては、昨年のITEM2023の記事でも紹介されていますので、併せてご覧いただければ幸いです。
MR7700は3.0T、70cmボアの全身領域に対応した研究用装置になります。Vega XP Gradientというグラディエントシステムにより、高い傾斜磁場印加精度(Gradient Fidelity * = 99.97%)を実現でき、高品質マグネットによる高い磁場(B0)均一性とMulti Transmit 4Dによる高いRF(B1)均一性を組み合わせることにより、高分解能にも関わらず高い信号が得られるとのことでした。
*パルスシーケンスチャートをそのまま装置で実現できるかどうかを反映した数値のように考えてください。
紹介されていた画像の中でも、特に脳DWIや腕神経叢の高い解像度の画像がとても印象的でした。
また、最大の特徴である多核種(1H、31P、13C、23Na、19F、129Xe)に対応した分子イメージングは、どのように臨床で使うのか?と思っている方もいらっしゃるかと思います。
研究発表の一例が紹介されていました。
脂肪浮腫という皮下に脂肪組織を過剰に蓄積する疾患があり、治療のためには肥満との鑑別が重要なのですが、mDIXON XD FFEではfat image、water imageともに鑑別することは困難です。しかし、ナトリウム画像では筋肉や皮膚のナトリウム濃度が上昇しているのがわかります。
これまで鑑別が困難であったものが、多核種の分子イメージングを使いこなすことで診断に導くことができる未来がくると考えると非常にワクワクしますね!
Smart Fit coils
ついに、Philipsからも待望のコイルが登場です。
Smart Fit TorsoCardiac 1.5T:体軸方向60cmの範囲を有し、1.2kg(ケーブル込み)と非常に軽量なので、そのまま体の上に乗せて体幹部の撮像もできますし、折り曲げて四肢の撮像にも使うことができます(下図左)。
Smart Fit Shoulder 1.5T:各被験者の肩にFitするように設計されており、こちらも1.1kg(ケーブル込み)と非常に軽量なので、立位や座位の状態でもコイルを取り付けて固定することが可能です(下図右)。
今回は1.5TのMR5300のみの対応であったため、今後、3.0Tの機種への拡大にもすごく期待しています。
SmartSpeed
SmartSpeedに関しては昨年のITEM2023でも紹介されていますが、今回は頭部・整形領域・腹部・骨盤・心臓と様々な部位での臨床応用が紹介されていました。
また、SmartSpeedを使用したSmartQuant Neuroも新たな臨床応用が紹介されていました。
特に、ミエリンの定量評価が軽度外傷性脳損傷(mTBI)の評価に有用という報告は非常に興味深かったです。
「頭部外傷後の持続的な頭痛で来院された患者さんに、CTやMRIを撮っても特に何も所見が無い」といった経験はないでしょうか?このような従来の画像では明らかな器質性病変がないmTBIにミエリンマップが診断の一助になりえるとのことでした。
SmartQuant Neuroの別の臨床応用として、髄膜腫の硬さを予測できるとのことでした。
腫瘍の硬さにより手術器具等が変わるようですので、SmartSpeedで短時間化できることにより、術前評価の撮像として十分に実用的であると感じました。
これまで、時間がかかり撮像しにくかったSynthetic MRがSmartSpeedで短時間化されることにより、気軽に撮れることで、今後多くのご施設で定量評価が行われるのではないか感じています。
CMR innovation
心臓MRIに関しても効率的で効果的な内容が報告されていました。
効率的な検査室内でのVCG Calibration、SmartSpeedによる高速化、ワークステーションISP v12による解析の自動化に加え、心臓のスライスプランを簡単に設定できるEasy Scan Planが発表されていました。
始めに3Dの位置合わせ画像を撮ることにより、3軸が連動するプラン画面(設定軸を動かすと画像も連動して設定断面が表示される機能)で失敗なく任意の断面を設定できます。
また、その断面をワンクリックで簡単に登録し、以降のスキャンに反映できるとのことでした。
これは心臓MRIの撮像に不慣れなローテーターの方のために朗報だと思いました。
また、条件付きMRI対応デバイスへの安全管理ツールであるScanWise ImplantはPhilipsユーザーにとってはお馴染みと思いますが、デバイスに起因する金属アーチファクトの低減機能が発表されていました。
下の画像のように、これまでのLGEではデバイスによりIRパルスが正確に印加できず、アーチファクトとなっていましたが、各デバイスに適した任意の周波数オフセットに対応している広い送信バンド幅のIRパルスを使うことで、大幅にアーチファクトが改善されていました。
そして、ついに日本で開発されたREACTがAV-TRANCEとして製品化されていました。
これまでT2prepを使うにはCoronaryオプションが必要だったので、心臓や冠動脈の撮像が必要ないご施設ではREACTを撮れなかったと思いますが、AV-TRANCEオプションを導入すれば、Coronaryオプションがなくても全身領域でREACTを使用することができます。
Pediatric Coaching
数年前に、日本小児科学会・日本小児麻酔学会・日本小児放射線学会からのMRI検査時の鎮静に関する共同提言の中に、薬に頼らない鎮静という項目が追加され、昨年のJSRTの秋季学会でも小児MRIのプレパレーションが話題となりました。今年のPhilipsブースでは、鎮静しない小児検査の実現に大きく役立ちそうな技術が紹介されていました。
まず、自宅にてスマホやタブレットのアプリを使い、ゲームを通してMRI検査やMRI室に持ち込めない物などについて学びます。また、仮想空間(AR)を用いて実際にキャラクターが検査を受ける場面を見たり、MRI装置に貼ってあるシールを360°方向から集めることでMRI装置を身近に感じてもらいます。
次に、病院でMRI装置の模型と動物のキャラクターを使って、デモンストレーションを行います。
キャラクターを模型の中に入れると、各キャラクターに応じたビデオが流れるようになっています。
(象[Ollie]:頭部、ワニ[Chris]:四肢関節、ニワトリ[Doris]:腹部造影)
スキャンしたそれぞれのキャラクターの身体の中身を知ることで、これから行われる検査について理解を深めてもらうといった感じになります。
そして、検査中はコイルに付属された鏡に映るボア外のキャラクターのアニメ映像を見ながら、検査を乗り越えるといった流れになります。
ここまで遊びの要素が多いと、子供からしたら検査を受けているというよりかは某遊園地のアトラクションに乗っている、といったところでしょうか。
実際の研究でもPediatric Coachingを取り入れることにより鎮静率の大幅な低下が見られたと報告されていました。
このような技術が発展し、鎮静しない小児検査が多くの施設で実現できる日がくると良いですね!!
なお、小児をサポートするチャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)という専門職もあり、過去の記事でも紹介しています。ご興味のある方はそちらもお読みください。
おわりに
今年は、一昨年から発表されているSmartSpeed AIの実際の臨床現場での多くの応用が報告されているだけでなく、“Philipsのコイルは重い”の固定概念を打ち破る軽量コイル、Pediatric Coachingなど、臨床現場からの要望にうまく応えているな、と感じました。
今後使うのが非常に楽しみでとてもワクワクしました!
ITEMに参加出来なかった皆さんに少しでも参考になりましたら幸いです。
以上、PhilipsブースからのITEM2024レポートでした!
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