- Home
- ★★脳DWIのMPGの印加方向の違いによる簡易Tract image
★★脳DWIのMPGの印加方向の違いによる簡易Tract image
- 2024/2/23
- BLOG, Education, 撮像のワンポイントアドバイス
- コメントを書く
<新企画>「撮像のワンポイントアドバイス」
★~★★★までの難易度を設定し、MRIにおける基本的な注意点や撮像のポイントなどをまとめていくコンテンツです。初学者の方やローテーターの方など是非ご一読ください!
今回の「撮像のワンポイントアドバイス」の難易度は★ふたつです。
関東中央病院の坂井香澄です。今回は、脳DWI coronal撮像時に情報を追加できる方法についてまとめてみました。
拡散の異方性とは?
臨床の現場で通常使用されている拡散強調画像(DWI)はx、y、zの3方向に同じ強さのMPGを印加しています。そのため、3次元的に平均化した拡散を反映した画像となっていて、異方性は現れません。拡散の異方性を画像化するには、方向の異なる双極磁場勾配(MPG)を印加します。もし組織に異方性があれば、MPGの方向によって拡散強調画像(DWI)の信号が異なってくるはずです。x方向だけにMPGを印加した画像はx軸方向の拡散の強さを反映した画像なので、y、z方向の拡散には鈍感です。例えば、頭部のDWI transverse(axial)でx(左右)方向だけにMPGを印加すると、これと垂直方向に走行する神経繊維を有するボクセルの信号が相対的に上昇します。x(左右)方向の神経繊維を有するボクセルは、x(左右)方向の拡散係数が大きいため、これが強調されて信号が低下するのに対し、MPG方向に垂直方向に走行する繊維を有するボクセルはMPGの影響を受けにくいためです。y(前後)あるいはz(頭尾)方向だけにMPGを印加した場合も同じで、MPG方向に対し垂直に走行する繊維を有するボクセルの信号が(相対的に)上昇します(図1)。
1軸に設定する方法
SIEMENSの場合、Diffusion Modeから選択できます(図2)。
(Orthogonalを選択すると3軸それぞれの画像を一度に取得できます。)
またMPGの印加方向を変えた場合の簡易Tract imageを2断面で示します(図3)。
Coronal画像で撮ってみると・・・
Coronal画像でSlice方向にMPGパルスを印加すると、直接的な皮質脊髄路や皮質網様体脊髄路を確認することができます(図4)。
臨床でどのように役に立つのか?
DWI画像から直接的な皮質脊髄路や皮質網様体脊髄路の損傷を確認することができます。皮質脊髄路は身体の筋組織に神経支配を供給する場所で、人間の運動機能の最高位と言われ、微細な動きを最も直接的に制御します。皮質脊髄路に沿ったシグナル伝達は、歩く、手を伸ばすなど様々な動作に関与していますが、特に文字を書く、タイピングをする、服のボタンをかけるなどの細かい指の動作に重要です。
錐体路繊維の圧迫や損傷があれば非可逆的な脳損傷を意味し、麻痺は重度で遠位筋は回復困難であることが予測されます。よって、装具療法などが必要になると考えられ、治療方針を決定する際の一助となります。
患者様を直接、みることができるのは私たち、技師の特権です。病変をみるときに撮像断面を変えて追加撮像することがあると思いますが、さらに一工夫することで、情報を追加できる可能性があります。
コメント
トラックバックは利用できません。
コメント (0)
この記事へのコメントはありません。