Look back Gyro cup ⑤「T2 shine through suppressed DWIBS」

Look back Gyro cup ⑤

今回、素晴らしいアイデアだけど惜しくも予選落ちした発表を紹介するシリーズ企画「Look back Gyro cup」を企画しました。

第5回目は「DWIBS MIP像の障害陰影を消す挑戦です。未完成のアイデアですが、考え方が非常にユニークで、その後の発展が気になります。

T2 shine through suppressed DWIBS

DWIBSは皆様もご存知の通り、全身の癌検出に非常に優れたシーケンスです。

しかし、DWIBSにて高信号となるのは癌だけではなく、腸管・腎臓・膀胱などの正常臓器も高信号となり、MIP像での観察時に障害陰影となることがあります。

この障害陰影を抑制し、より視認性の高いMIP像を作成することができないかを考えたのが本手法です。

b0画像とADC mapに着目

僕の一日は、愛犬との散歩から始まります。

解決策を考えていた時期は、白と黒のDWIのようなコントラストの犬を見ながら、この白の部分(高信号)を黒にするにはどうすればいいかなぁ、と考えながら散歩をしていました。

 

ある日、障害陰影のADC値が高いことに気づきました。(実は至極当然のことですが、、、)

そこで、画像上のDWI(High-b),b=0,ADC mapの信号値を調べてみると、それぞれの関係性は下図であることがわかりました。

何を示すかおわかりでしょうか?そうです!T2 shine throughです!つまり、High-bの画像からT2 shine throughの領域を削除することで、障害陰影が消えるのではと考えました。

T2 shine throughを抽出する

ADC mapを作成する際、自動作成することが多いかと思いますが、多くのベンダーで空気の領域など、ノイズのみの領域を排除する閾値の設定を変更して作成することができます。

特に、Philipsはコンソール上で、閾値をWinowレベルを合わせるようにリアルタイムで調整ができます。これを応用し、ADC mapにおいてT2 shine throughとなる領域だけ残るように、視覚的に閾値設定を行いました。

ここで作成された画像をT2 shine through (ST) mapと命名しました。DWI (High-b) – T2 ST map = 障害陰影が無いDWIBS になるはず。。。

サブトラクションしてみた

早速、装置のコンソール上でサブトラクションしてみましたが、うまくいきません。考えてみれば当然のことで、DWIBSとT2 ST mapは信号強度のレンジが全く異なるからです。

Philipsはコンソール上で簡便にサブトラクションできる機能(Image Algebra)がついており、サブトラクションする2者の重み付け(通常は1:1)を設定することができます。T2 ST mapの重み付けを可能な限り小さくし、サブトラクションすると多くのT2 shine throughと思われる領域を削除することができました。

この方法であれば、目的であった障害陰影を低減できたように見えます。

 

DWI(High-b) – T2 shine through mapの根拠

上記手法だと、視覚的には改善されているものの、画像の次元が異なるもの同士をサブトラクションしてもいいのか? T2 shine throughとなる領域を、視覚的に設定してもいいのか? サブトラクション時の、重み付け比重の根拠がない、、、など様々な問題点があります。

そこで、MATLABを利用し、ADC mapに閾値を設定すること閾値に2値化処理をおこないサブトラクションすることで、次元の問題や重みづけが解決できないかと考えました。

この手法を用いると、任意のADC値(カットオフ値)で削除するT2 shine throughと考えられる領域を調整することができます。

しかし、ADC値は装置のスペックや磁場強度、撮像条件などの違いにより、変動することが知られています。また、多くの論文で示されるように、癌とひとくくりに言っても、それぞれのADC値には差異があります。単一のカットオフ値を設けて、背景信号を抑制することは難しく、様々なファクターを考慮しなければならないことが分かりました。

より良いものにするために

機器コンソール上にて、WL/WWはリアルタイムに変更できます。

computed DWIは、スライドバーを動かすことで、任意b値のDWIを作成できます。この様に、ADC値の閾値をスライドバーにて任意の設定ができるようになれば、DWIBSにADC値を加味したT2 shine through suppressed DWIが取得でき、最適カットオフ値の検討が進むのではないかと考えるようになりました。ゴールはまだまだ見えませんが、今後も研究を続けていきたいと思います。

自己紹介

千葉メディカルセンター 小島正歳

千葉県にはMRIに詳しい先輩や後輩がたくさんいます。いつも刺激を受け、勉強させてもらっています。

 

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