はじめに
DWIにおいて、歪みを低減するためにはParallel imagingのReduction factorを大きく設定する必要があります。しかしGEHC社製MRI装置はParallel imagingのReduction factorを実質2.0以上に設定できません。
このことは他社装置と比べて歪みを低減するのに不利な状況であり、歪みをより低減させようと考えた場合には、長方形FOVを併用する必要があります。
しかし、冠状断で位相方向をS-Iに設定し長方形FOVを併用すると、S-I方向にPallarel imagingの展開エラーによるArtifactが発生する事となります。
【当院第一号のDWIBS画像】
Fig.1 当院初のDWIBS画像
Fig.1は当院にて初めて撮像したDWIBS画像です。FOV60cm、長方形FOV値0.6を使用し、4stationにて撮像しました。このときに使用したCoil Configurationは、①Head+Neck48 ②Body36AA1 ③Body36AA2 ③Lower Limb 36 7です。一見するときれいな画像であるように見えますが、1st Stationの頸部の部分にParallel imaging特有のRip like Artifactが発生していることが分かります。(Fig.2)
Fig.2 Rip Like Artifact
脳はDWIで著明な高信号となるため、このような現象が発生すると考えています。他のStationではこのようArtifactは目立ちません。
このときに使用した1st StationのCoil Configurationは、Head+Neck48で、そのコイル感度領域を確認するとFig.3のようになっていました。コイルの感度領域が撮像領域外にあり、さらにその場所に信号値の高い脳があることから、Rip like Artifactが発生したと考えられます。このArtifactが脳の折り返しであることはAxial Reformat画像を確認すると分かります。(Fig.4)
Fig4. 頸部のArtifact
Artifact低減のために
そこで、このArtifactを低減するために頭部に感度領域を持たないCoil Configurationを使用して撮像しようと考えました。そこで、Coil Configurationを、①C-Spine + Neck 36 ②Body24AA1 ③Body36AA2 ④Lower Limb36 7にて撮像した画像がFig.5です。
Fig.5 改善後のDWIBS画像
最初に撮像した際に発生していた折り返しArtifactのない、良好なDWIBS画像となっていると感じていただけると思います。この時のそれぞれの感度領域はFig.6となります。
Fig.6 改善後のコイル感度
これを見て一つの疑問点が生じている方もいるのではないでしょうか。②領域の感度が撮像範囲よりも小さいことが分かります。
これでは画像の上端と下端のSNRが低下して、画像合成の際に影響が出るのでは?と心配になります。
画像処理への拘り
そこで使用するのが長方形画像処理です。当院にて臨床に使用している画像はZ軸を25cmにReformatした長方形画像です。これには2つの理由があります。1つ目は画像合成時の信号低下防止です。本法のCoronal DWIBSでは位相をS-Iとし長方形FOV値0.6を使用していますので、上下40%は無信号領域となります。
GEHC社製MRI装置にて画像合成(Pasting)を行うと、無信号領域も画像として認識します。そして、Pastingする際のOverwrap部分の信号値は単純平均となります。よって、合成画像ではOverwrap部分の信号が低下してしまいます。
2つ目は歪の低減です。
Fig.7 長方形画像処理
Fig.7のZ-FOV 36cmの画像をご覧いただくとわかるように、画像の四隅が歪んでいます。長方形画像(Z-FOV 25cm)を使用することにより、四隅の歪みが排除されます。Overwrap部分も小さくなるため、Stationの違いによる画像のズレも少なく済むという事になります(Fig.8)。
Fig.8 オリジナル画像と長方形処理画像の違い
ポジショニングへの拘り
また、当院ではDWIBSを撮像する際にはFeet Firstにて撮像しています。この理由は2nd Stationの感度領域にあります。Fig.9をご覧ください。
Fig.9 Head FirstでのCoil感度
Feet FirstではFig.6でBody24AA1の背側の感度が揃っており、撮像範囲にCoil感度がありますが、Head Firstでは背側のCoil感度が無いことが分かります。これでは、SNRの低下を招く恐れがあるため、適当ではありません。
また、頭頚部用コイルに頭部を入れすぎると、前述したように頸部にLip like Artifactを生じる原因になるため、Fig.10に示す赤いラインが眉間よりも1横指程度上になるようにポジショニングしています。
Fig.10 ポジショニング
おわりに
以上が私の考えるDiscovery MR750wで冠状断DWIBSを撮像する際のessenceとなります。
是非、皆さまにも冠状断DWIBSを撮像して頂けると幸いです。
【自己紹介】
上尾中央総合病院 石川 応樹(イシカワ マサキ)
技師歴は今年で19年目、MRI歴は15年くらいになると思います。最近はMRIのコンソールに座る機会が少なくなり、責任者としてMRI画像の検像業務を淡々とこなしている毎日です。しかしMRIのアプリケーションは日進月歩ですので、今後も自己の知識と撮像技術の向上に邁進していきたいと考えています。
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