条件付きMR対応Device植え込み症例でヒヤリハットがありました
当院で数年前に条件付きMR対応ペースメーカーを植え込んだ症例です。
心不全の悪化で、心臓再同期療法(CRT; Cardiac Resynchronization Therapy)を受けることになり、他院へ紹介となりました。
その際、条件付きMR対応ペースメーカーに変わって、CRTに除細動器機能を併せ持った植込み型のCRT-Dに交換されました。この交換では遺残リードが発生してしまいましたが、病状は回復されたため、退院し当院へ逆紹介されました。
“D”とは、Defibrillatorの頭文字“D”をとったもので、除細動器のことです。CRT-Dは条件付きMR対応Deviceの一種ですが、MRI検査の際には除細動機能を停止することになります。そのため、更に注意が必要です。
遺残リードがあるためMRIは禁忌です
当院へ逆紹介された後は外来で経過観察されていましたが、ある時、脳梗塞疑いで来院されました。
ペースメーカー手帳は携帯しており、MR conditionalの記載がありました。しかし条件付きMR対応ペースメーカーカードの携帯は無し。
当院のカルテの情報は、数年前に条件付きMR対応ペースメーカーを植え込んだ情報から、更新されていませんでした。
主治医は、過去の情報のみでMR検査を行おうとしました。しかしCE(臨床工学技士)とMR安全管理責任者が情報収集し、遺残リードとCRTDを発見。
MRI検査は中止となり、最悪の事態は避けることができました。
2022年2月2日 追記
遺残リードの発見に至った経緯について、どのように情報収集したのかを補足します。
当院では、心臓植え込み型Device植え込み症例のMRIに際しての安全確認は,医師の負担軽減のためにタスクシフトを図っています.
主治医、CE(臨床工学技士)、MR安全管理責任者で分担して、以下のような段取りを踏んでいます。
1.主治医は、カルテ記載とDeviceの手帳の持参を確認
2.主治医の依頼を受けて、CEは、Deviceとリードの型番・コンディションを確認
3.CEとMR安全管理責任者が、共同で検査内容とDeviceの検査内容を突合し、MR適合性を判断
4.循環器内科に報告し承認
5.主治医に報告し、検査実施
今回の事例では、主治医は手帳の存在を確認したのみで中身の精査は行わなかったため、
CEがデバイスの手帳を確認したところ、ペースメーカーからCRTDへのアップグレードを発見しました。
そしてCEとMR安全管理責任者がアップグレードの内容を調査したところ、レントゲン撮影による画像確認で遺残リードを発見した、という経過をたどっています。
条件付きMR対応ペースメーカーを初期に植え込んだ症例も高齢化が進んでおり、CRTDなどへのアップグレード症例が出てきています。
注意深く安全確認することが必要です。
(oct)
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