2018年12月8日(土)に開催された第14回SIGNA甲子園2018に審査員として参加してきました。その模様をレポート致します。今回の決戦会場は東京TKPガーデンシティPREMIUM神保町でした。会場入り口には最近何かと話題の超フレックスコイル“AIR Technology”の展示もありました。(図1)
図1 AIR Technology
今年は、SIGNA甲子園選考会史上最多の30演題が集まったそうです。その中から選りすぐられた上位12演題が本戦へ進出となりました。また、今年は金賞、銀賞、銅賞の他に特別賞として『画質(打点王)、創意工夫(ホームラン王)。臨床的実用性(打率:首位打者)、最速撮像(盗塁王)』の4つの特別賞が用意されていました。(図2)
図2 表彰楯とメダル
果たして金賞は誰の手に!?賞を総なめにする四冠王は現れるのか!?実行委員長の布川 嘉信様(東京UM:慶応義塾大学病院)の「プレイボール」のコールで甲子園は始まりました。
アイディア溢れる演題ばかりで、どの発表も頭が下がるばかりでした。12演題すべてが明日からすぐにでも試したくなる発表で、本当は全てをご紹介したいのですが、この速報では受賞演題をレポート致します。
今年の銅賞受賞者はなんと!!
銅賞を受賞したのは、山口UM JCHO徳山中央病院の岡本 淳さんです。昨年の金賞受賞に続いての連続受賞です!タイトルは「Max-MRA~Ultra Short Time MOTSA MRA~」です。なんと33秒の超短時間撮像MRA。1.5Tでも1分30秒を切る短時間撮像です。Volume Renderingで動脈瘤まで描出されており、十分に評価可能な画像でした。Fast TOF SPGRを使用して、2つのスラブグループを50%オーバーラップさせて撮像するそうです。さらに画像の加算減算機能である、Add/Sub機能のMAXを使用して画像を作成する“MAXの法則”というテクニックを発見したという、創意工夫を多く含んだ演題でした。(図3)
図3 銅賞受賞
続いては銀賞受賞者
銀賞を受賞されたのは秋田UM 市立角館総合病院の千葉 大志さんです。タイトルは「Hyper ART!?」です。ARTを使用した頚部MRAの撮像です。第1エコー(In Phase)では脂肪は高信号化します。そこで、ARTを使用することで第2エコー(Out of Phase)で信号を収集することができるようです。それを応用したMRAです。ARTを入れることで、受信バンド幅を大幅に広げても、第2エコーで撮像できるという点も付け加えさせていただきます。この撮像はSNRを大幅に下げて撮像したことにより生み出されたそうです(なんと元の20%のSNR!)。まさに逆転の発想であり、とても感心しました。MIP像ではカット処理をしなくても十分過ぎるほどキレイな頚部MRAでした。(図4)
図4 銀賞受賞
栄えある金賞受賞者は!?
見事、金賞を受賞されたのは埼玉UM 上尾中央総合病院の木下 友都さんです。今回の実行委員も務められ、SIGNA甲子園2018のお洒落なオリジナルTシャツの作成も担当されたそうです。金賞タイトルは「Rapid SWAN」です。わずか1分台で全脳SWANを撮像されていました。1st echo TEに短い値を入力することでTE of per scanが最小になり、短時間で撮像できるそうです。1分台とは思えないほどハイクオリティーでハイパフォーマンスな画像でした。(図5)
図5 金賞受賞
特別賞
今年は、画質(打点王)、創意工夫(ホームラン王)。臨床的実用性(打率:首位打者)、最速撮像(盗塁王)の4つの特別賞が用意されていました。最速撮像の盗塁王を受賞されたのは広島UM 日本赤十字社 広島赤十字・原爆病院の大胡 文彦さんです。タイトルは「時短に挑戦!!息止めMR-myelography」です。撮像時間は僅か16秒!は、流石です。撮像には3D FIESTAを使用しています。症例画像には敢えてチャンピオンデータではなく、条件の悪いシチュエーションの画像を提示されていました。しかし、16秒とは思えないほどとても綺麗な画像でした。広島東洋カープのユニフォームを着用した発表は風格、タイトルからも盗塁王に相応しい受賞でした。(図6)
図6 盗塁王受賞
創意工夫最高得点のホームラン王は銅賞を受賞された山口UM JCHO徳山中央病院の岡本 淳さんです。Add/SubのMAXを使って信号の高いものを埋めていくという発想に驚きです。“MAXの法則”は本当に創意工夫されたものでした。(図7)
図7 ホームラン王受賞
画質最高得点の打点王と、臨床的実用性最高得点の首位打者は、金賞を受賞された埼玉UM 上尾中央総合病院の木下 友都さんが選ばれました。画質、臨床的実用性共に素晴らしい内容でした。木下さん、金賞と合わせて3つの受賞、本当におめでとうございました。(図8.9)
図8 打点王受賞 図9 首位打者受賞
受賞者の皆さまのメダルを噛んでの記念撮影です。(図10)。12演題全てがアイディアに溢れ、またプレゼン力が素晴らしく、時間を忘れて引き込まれるような会場雰囲気でした。
図10 受賞者の皆さま
さらにSIGNA甲子園はこれだけではありません。全員参加型2択クイズ形式のSIGNA Master選手権も開催されました。今年の豪華景品はAIR Technologyと同じ素材で作られたPCケースでした。これはここでしか手に入らない限定景品です。しかしこのクイズが難問過ぎるのです。例えば「GEヘルスケア日野工場にあるMRI装置のコールドヘッドの音はどちらでしょうか?」東西で電源周波数が違うため、分かる人には分かるようです。このような難しいクイズに正解した今年のSIGNA Masterの皆様です。(図11)
図11 SIGNA Masterの皆さま
SIGNA甲子園2018の後は懇親会がありました。そこで実行委員でありながら、今回の金賞受賞で二冠を達成した埼玉UM 木下さんにインタビューをしたところ、「金賞受賞も嬉しいですが、実行委員の皆さまと楽しくやれて本当に良かったです」とコメントを頂きました。私も本当に楽しく参加させて頂きました。また、銅賞を受賞した山口UMの岡本 淳さんは、昨年のSIGNA甲子園2017で金賞を受賞された演題「EC-MRA ~非造影息止め肺血管描出の試み~」で世界デビューされたそうです。このSIGNA甲子園は日本だけでなく世界も注目している一大イベントだということで非常に驚きました。来年はどのようなSIGNA甲子園が開催されるか、今から楽しみです。最後は参加者全員で記念撮影をしました。(図12)
図12 懇親会参加者の皆さま
自己紹介
初めまして、茅ヶ崎徳洲会病院で診療放射線技師をやっています岩田 剛と申します。技師歴は7年目で、好きなモダリティはMRIですが未熟者です。関東のグループ病院や、神奈川のMRのスペシャリストの皆さまに、ご指導ご鞭撻いただいております。趣味はバイクに乗ることです。よろしくお願いします。
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