はじめに
腹部造影MRIでは、T1強調脂肪抑制画像を息止めで撮像することが多いと思います。一般的に撮像には20秒程が必要で、息止めの指示が呼気であると、かなり患者さまに負担がかかるものと考えます。
当院のMRI装置である3.0T GE社製Discovery MR750wはLAVA(liver acquisition with volume acceleration)法において「turbo mode」というオプションが加わりました。以前よりTRが短くなり、撮像時間の短縮が可能です。
Turbo modeについて
LAVA法では、ARCと呼ばれるk-space domainタイプのパラレルイメージング法が併用可能です。これは事前のコイル感度マップなどを必要としない、セルフキャリブレーション方式のパラレルイメージング法です。今回の「turbo mode」を更に併用することで、高周波領域におけるk-spaceの間引き率を上げています。これにより、撮像時間短縮を実現します。間引き率をあげることで、懸念される画質の劣化は、専用のアルゴリズム(ブラックボックス)を用いることで画像のボケ感を軽減しています。この「turbo mode」によって撮像時間を約40%も削減することができます。
「Turbo mode」の有無によるファントム画像の比較
LAVAのファントム画像
Turbo LAVAのファントム画像
上のファントムは生理食塩水に造影剤を希釈させたもので、右の高信号のものから右回りに5mmol/l、3mmol/l 、1mmol/l 、0.5mmol/l 、0.3mmol/l、0.2mmol/l、0.1mmol/l、生理食塩水となっています。臨床で考えられる濃度を加味してファントムを作成しました。生理食塩水とそれぞれのモル濃度のファントムを比較し、CNRを測定した結果が、下記のグラフです。
「turbo mode」を使用すると若干CNRが下がる傾向があるのですが、これは「turbo mode」の使用に伴ってTRが減少したことが原因だと考えられます。データの間引き率があがっているので、ノイズの影響も増大します。
息止めが10秒程度しかできないという想定で実際に撮像しました。左はわざと息止めを11秒でやめたLAVA、右は「turbo mode」を使用したLAVAです。撮像の途中で息止めが中断してしまうと、当然ですがモーションアーチファクトの多い画像となってしまいます。Turbo LAVAでは撮影時間が短くなっているので、モーションアーチファクトを抑えられ、各臓器の評価が可能な画像を得ることができます。
ロカライザーを撮像中、息止めが10秒前後しかできないことが判明した患者です。
動脈相は少しアーチファクトが目立ちますが、その他は息止めを最後まですることができ、呼吸によるモーションアーチファクトを低減することができました。また静脈相、平衡相では病変部をはっきりととらえることができています。
まとめ
昨今、高齢者が多くなり、息を止める時間がどんどん短くなっていると感じています。こういった状況を考えてもTurbo LAVAは非常に有効であると考えます。Dynamicのような連続した長時間の息止めが安定しないという患者さんにも、Turbo LAVAは有効な方法であると考えます。当然ですが、息止めが短いのですべての患者さんにやさしい検査だといえます。
ライター紹介
社会医療法人蘇西厚生会 松波総合病院 技師歴6年MRI歴4年の髙木大輔です。
MRIに関してはいつも学ぶことばかりで、様々な先輩方の著書を頼りに勉強させてもらっています。他の施設での撮像方法や運用方法など、様々な交流を行い学んでいきたいと思いますので、ぜひお声掛けください。
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