脳血管のMRAを撮影する際、義歯による金属アーチファクトが問題となることが、しばしばあります。当院においては「脂肪抑制パルス(CHESSパルス) をOFF」「TEをout-of-phase(1.5Tなら6.9ms)に設定」「撮影対象FOV内にVolume Shimを入れる」などの対処法でアーチファクトを抑制してますが、歯科用ブリッジなど、強磁性体でそれなりの大きさがあるデバイスに対しては、これらの対策も無効となります。
例えば、上図のようにlocalizeの時点で歯の周囲に広範な信号欠損が見られた場合、左記の要領で「脂肪抑制OFF、TE:6.9ms」にすれば、アーチファクトはルーチンスクリーニングレベルの読影に支障がない程度には抑制することができます。今回、この方法でも歯が立たないほどの強力なメタルアーチファクトに遭遇したのでご紹介します。
ご覧の通り、内頚動脈のごく一部、両椎骨動脈と脳底動脈が見える他、ウィリス動脈輪以遠の血管はほとんど確認できません。末梢部分がチラチラ見える程度です。現画像に至ってはこのような状態で、まったくお手上げです。
ダメモトで”3D Inhance Velocity“(GEの新しい3D-PC-MRA)を使ってみました。
【症例】20代女性、頭痛精査目的のMRI&MRA、歯科矯正用ブリッジ装着中
上にあげた画像はこの患者さんの3D-TOF-MRAです。 金属アーチファクトが強力で、MIP画像を作成しても、何がなんだか分かりません。”3D Inhance Velocity”をルーチンのMRAと同様、Axial、VENC35cm/sで撮影してみたところ、 何ということでしょう!(ビフォアーアフター風に)
3D-TOFでは全然見えなかった内頚動脈や前大脳動脈が、ハッキリと写りました。 原画像を確認してみましたら、金属アーチファクトによる影響は、ほとんどありません。
最近では、撮影時間がやたらと長いことからあまり使われなくなってしまった3D-PC-MRAですが、一般的な知識でPC法が「磁性体アーチファクト対策に有効」という話は聞いたことがありません。むしろ従来のPC-MRAは、血管の末梢部などで位相分散の影響を受けやすいと言われており、撮影時間が長い、VENCの設定値に当たり外れがある、などの欠点によりルーチンでは使われなくなってしまいましたが、3D Inhance Velocityなら、このレベルの画像が3分ちょっとで撮ることができます。VENCは若い患者さんだったので40cm/secと早めの設定としましたが、中高年の方ならもう少し遅くても良いかと考えます。
なぜ3D Inhance Velocityが磁化率の影響を受けないか?という点の考察ができれば、立派な論文が書けます。どなたか検証してくださる方はおられませんでしょうか?
コメント
トラックバックは利用できません。
コメント (0)
この記事へのコメントはありません。