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「真の」後交通動脈瘤について
- 2015/5/31
- Any Modality, ミニレクチャー
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今回は症例報告として比較的レアな脳動脈瘤についてお話しします。
【症例】60歳代女性。頭痛のため、近隣のクリニックを受診し、CTを撮影。按上部に腫瘍らしき病変が認められたため、当院に精査依頼紹介。
上の画像上、2本ある矢印のうち左側が病変のようで、周囲の後床突起(左半分)が破壊されていることが分かります。とりあえず、当院の担当医指示で「単純MRIとMRA」を撮ることになり、以下のような画像が得られました。
MRI&MRAの結果、CT上で腫瘍と思われた病変は、後交通動脈の中央部付近にできた脳動脈瘤で、CT画像上の右側の矢印は拡張した内頚動脈(内側に偏位)のようです。反対側の内頚動脈と比較して明らかに太いため、動脈解離の可能性もあります。この患者さんは、後交通動脈以外にも左右の中大脳動脈、脳底動脈先端部に多発性の脳動脈瘤が疑われます(下記画像)。
後交通動脈瘤に発生する動脈瘤として、まず「内頚動脈ー後交通動脈分岐部(いわゆる”IC-PC”)」は頻度が高いためしばしば見つかりますが、後交通動脈自体に発生する動脈は比較的希で、IC-PCに対して「真の」後交通動脈瘤とよばれます。
この部位の動脈瘤は、他の部位では破れにくいとされる「5mm以下」の大きさでも破裂しやすいと言われており、早い段階で血管内治療などの介入が必要となりますが、この症例においては、左後大脳動脈のP1部*が低形成のため、血管内治療で後交通動脈を塞栓してしまうと、左後大脳動脈領域に広範囲の脳梗塞を起こす恐れがあります。また、外科的治療を選択する際も、後交通動脈の周囲には海綿静脈洞や脳神経があるため、非常に難しい手技になるとの事です(当院医師のコメント)。
※この患者さんは、3D-CTAや脳血管撮影などの精査を行う予定で、実際の治療方針については、検査の結果が出次第、医局カンファで話し合い、ということになりました。
「真の」後交通動脈瘤について、発生頻度など詳しい情報を知りたい方は、下記「参考文献」のリンク(論文pdf)をご参照ください。
■参考文献
・破裂前交通動脈瘤に合併し,画像診断上判定が困難であった多発性「真の」後交通動脈瘤の1例
左後大脳動脈のP1部*: 脳底動脈から左後大脳動脈に分岐したあと、後交通動脈と合流するまでの短い部分(近位部)のこと。合流部より末梢がP2。
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