他の装置とちょっと違う高速SE法の挙動 ~PHILIPS装置~
PHILIPS ユーザーの常識と一般論の乖離
フィリップス装置における高速SEの挙動を紹介します。フィリップスユーザーの多くは既に理解していることと思います。
でも、このフィリップス装置の挙動は一般的な高速SE法の理解と少しだけ異なることを再認識していただくため、ここに記しました。
Philipsユーザー以外の方には、“へ~そうなんだ!”と思っていただけたら幸いです。
ETLの設定に応じてエコー間隔が変化する
一般に高速SE法ではTurbo Factor(ETL*)を変化させるとT2減衰による画像影響の程度が変わってきます。「ETLが増えるとblurringが増す」と言った現象は皆さんもご存じのことと思います。
この挙動はエコー間隔(echo space)を一定とした場合、最初のプロファイル収集から最後のプロファイル収集までの時間(duration time)がETLの増加に比例して延長し、T2減衰の影響が大きくなることによって生じる現象です。
しかし、Philipsの装置ではETLの増加・減少に併せてecho spaceが自動的に変化し、T2減衰の影響程度が変わらないように装置側が制御しています。
* ETL: Echo Train Length: 高速SE法において、1回の励起で得るエコーの数のこと。「数」なのだが、「Length(長さ)」と呼ばれている。フィリップスではこのことをTurbo Factorとよんでいる。
ETL5 (Echo space は20ms)
ETL15(Echo space は6.9 ms)
【図1】は、Turbo Factor(ETL)の異なる画像です。ETLが3倍に増えても、共に最初のプロファイル収集から最後のプロファイル収集までに要する時間が100ms 程度に整えられています。(完全に同じではありません。)
この挙動によって、TEL:15 ではdecouplingによる脂肪変化*を認めるものの、ETLの変化に伴うボケや白質・灰白質のコントラストの変化が少なく抑えられます。
(一般的な常識論とちょっとだけ異なってきます。他社の画像変化と比べてみると、高速SE法におけるJ-coupling効果やMT効果を理解する道標になるかも。)
* ETLを狭い間隔で増やすとJ-coupling効果の減少による脂肪信号のT2短縮を抑制するため脂肪Contrastが変化する。
コツがいるblurringの改善
この制御形態では、比較的少ないETLの増減範囲では有益な効果を齎しますが、一般に言われるような「ETLや収集プロファイル数を減らすとblurringは改善する」効果は得にくくなります。
ETL 256 parallel (-) この画像からblurringを改善するには…
ETL 128 (parallel+) に加え、startup echo*を利用してecho spaceを短く保てば、それなりにblurring軽減は図れます。
Philips社の装置においてblurringを解消するためにはstart up echoやhalf Fourier、profile orderなどを操作してecho spaceを間接的に制御することが必要になります。但しこの場合には、なんらかのtrade offが生じますのでご注意ください。
高速SE法は最も臨床で活用されるシーケンスです。 また、実験等でもたびたび利用されます。施設間や異機種間で共同実験などを行う際には、この挙動の違いに注意しましょう。
* startup echo: ダミーパルスによるエコーのこと。たとえばstartup echo数として5を入力すると、最初の5個のエコーは画像には利用されず、その後に続くETL(Turbo Factor)で指定したエコーは、echo spaceが短くなる。この結果最初のエコーと最後のエコーの時刻差(TEの差)が短くなり、T2 blurringが減少する。