みなさんご存知、DeltaFlow
今回我々は、GE社製 Discovery750w 3.0Tを用いて、DeltaFlow の様々な部位への臨床応用について考察した。周知の通り「DeltaFlow」は東芝が開発したFresh Blood Imaging(FBI)と同様の原理を用いている。従って、脈波同期を用いて拡張期動静脈と収縮期静脈の画像をサブトラクションすることで、血管の走行を描出する撮像法である。
その主な特徴は
- 3D収集により高いSNRが得られる。
- サブトラクションにより、血管とバックグラウンドとのコントラストが高い画像が得られる。
- Time of Flight(TOF)法に比べて撮像時間が短縮できる。
本実験では、2D Phese Contrast(PC)法を用いて全身の各部位の動静脈の流速を測定し、Fig.1のように赤線(動脈)と青線(静脈)の差がDeltaFlowの描出能に依存するか検証した。
測定部位と流速差
流速測定部位(Fig.2)と各部位における流速差(Fig.3)を以下に示す。
Fig.2 流速測定部位
流速差は最大で胸部大動脈の780mm/secであった。最小では頭部の188mm/secであった。
Fig.3 各部位の流速表
どこまでいけた!?DeltaFlow
Fig.4より、どの部位においても流速差が多少でもあればDeltaFlowの撮像は可能であった。また、各部位における動静脈の流速差と実際に撮像したDeltaFlow画像を比較すると、流速差の大きい部位ほど血管描出能が良い結果となった。
Fig.4 DeltaFlow画像
一方で、腹部では流速差が大きいにも関わらず、画質はあまり良いものとは言い難い。これは、蠕動や呼吸によるモーションアーチファクトがサブトラクションによって除去しきれていない為と考えられる。従って、動きなど何らかの理由でサブトラクションが不十分になると、動静脈に大きな流速差があっても画質低下は避けられない事が予想される。また、パーシャルボリューム効果による血管とその他実質との境界不明瞭化や、低流速により血管信号が低く実質との差が乏しい場合、サブトラクション時にミスレジストレーションが起こり、血管の描出能が低下する原因となった。この場合、TEを短縮し信号強度を上げる、薄いスライス厚にする、ZIP2を使用するなどの工夫が必要である。
まとめ
DeltaFlowは非造影下肢MRA専用に用いている施設が多い。当院においても同様であった。しかし、今回の実験で下肢のみならず鎖骨下動脈や上肢、手や足の末梢においても有用であることがわかった。また、同時に静脈の情報も得られることは大きなアドバンテージである。CTAではアーチファクトが出現しがちな鎖骨下動脈や、造影剤の投与が禁忌な患者に対する血管撮像の症例において、DeltaFlowで撮像することで検査の幅が広がり、より低侵襲な検査が可能になると考えられる。
ライター紹介
新百合ケ丘総合病院 診療放射線科
叶内 将司 (写真左)
H01.04.16生まれ O型 福井県出身
趣味 ゴルフ、お酒
MRIを始めて約2年。勉強すればするほど壁が立ちふさがり、挫折しそうな日々ですが、その奥の深さに興味が止まりません。北陸新幹線、早く福井まで通って欲しいですね。
児玉 毅 (写真右)
H02.11.18生まれ O型 新潟県出身
趣味 ツーリング、お酒
働き始めて二年目の新米ですが、先輩方のお力添えもあり何とか実験を終える事ができました。MRIの奥の深さに迷子になりそうですが、いつかこの迷路から抜け出せるように日々精進します。
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