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はじめに
皆様、こんにちは。群馬大学医学部附属病院の黒澤と申します。今回は、2025年9月に開催されたSIEMENS社共催の「MAGNETOM Japan Grand Prix」で発表したSegmented TOF法を使って113秒でMRA(MIP)、VR、Bone image、3つの画像を1slabで同時に撮像する方法について紹介します。
まず、背景について説明します。当院では頚椎に関連する術前検査として、レントゲン、単純MRI、造影CTを撮像します。造影CTでは血管走行や骨構造、血管と骨の位置関係を把握するために撮像しています。また、この造影CTからVR、MIPを作成しています。しかし、造影CTでは被ばくや造影剤の使用といった患者さんへの負担を伴いますのでこれを省略し、MRIのみで同等の情報を得られないかと本法を考案しました。さらに、短時間で撮像可能にすることでの患者負担や体動リスクの軽減も、重要な目標としました。
撮像パラメータの3つのポイント
撮像時間と画質のバランスを考慮して、MRA(MIP)、VR、Bone imageを同時に取得するために、3つのパラメータ設定ポイントがあります。
ポイント① 高速化:Segment数の設定
本法は、高速化のためにSegmented TOF法を用いて1slabで撮像します。従来のTOF法では励起前に毎回飽和パルスを印加しますが、Segmented TOF法ではその飽和パルスを数回に一度だけ印加します。これによりSAR低減と高速化が可能になります。文献報告1)では、頭部領域では従来のTOF法と同等の血管と背景のコントラストを維持しつつ、拍動によるアーチファクトの軽減効果も期待できるとされています。また、Segment数を9まで上げても、静脈信号は軽度にとどまると報告されています。
本法においても、Segment数を上げて撮像時間を短縮したときのコントラストと静脈信号の変化を検討しました。Segment1、3、6と変化させた画像をFig.1に示します。
Segment数を6まで上昇させても、静脈信号の増加は見られず、血管と背景のコントラストも良好でした。撮像時間は155 secから113 secまで短縮できました。Segment数を6以上に設定しても時間短縮はほぼなくなるため、最終的にSegment数は6を採用しました。
ポイント② 多目的性の実現:Contrast数の設定
本法の目的は、MRA(MIP)とVRとBone image用の画像データを同時に取得することです。Bone imageはin phaseのTEの画像を3から4加算することにより作成可能です。一方、VRはin phaseとopposed phaseを加算し、皮質骨と海綿骨のコントラストを抑えた、骨が真っ白になる画像から容易に作成できることが、過去の報告(茨城県西部メディカルセンターの飛田様)で示されています。
そこで本法では、Bone image作成に必要なin phaseに加え、その直前のopposed phaseも取得する設定としました。具体的にはContrast数を6(TE=2.38 – 4.76 – 7.14 – 9.53 – 11.91 – 14.29 ms:opp-in-opp-in-opp-in)に設定し、MRAの撮像と同時にin phaseおよびopposed phaseを交互に取得することで、MRA(MIP)、VR、Bone imageを同時に取得するという多目的性を実現しました。
ポイント③ 末梢血管描出の向上:FA・TONE Ramp設定
本法の1 slab撮像では撮像範囲を134.4mmに設定したため、末梢血管の描出を最適化することが重要です。そこで、FAとTONE Rampを変化させ、右椎骨動脈(VA)と筋肉のコントラスト比を測定しました。
Fig.2aのように位置をProximal、Middle、Distalと設定し、FAを5°から20°まで5°ずつ変化させ、6つのTEのうち最も描出能が良好だったTE=11.9msで評価しました。
測定結果をFig.2bに示します。Proximal、Middleの位置ではFAが高い方がコントラスト比は高値ですが、Distalの位置だと、FA10°が最も高値でした。このため、末梢血管の描出を考慮しFAは10°に設定しました。
次にDistal位置でTONE Rampを50%と70%で比較したところ(Fig.2c)、すべてのTEで50%の方が高いコントラスト比を示しました。したがって、TONE Rampは50%に設定しました。
本法の有用性と課題について
本法で取得した健常ボランティアの画像とパラメータをFig.3に示します。本法では、113秒という短時間でMRA(MIP)、VR、Bone imageの同時取得が可能です。さらに、6つのTEの中から最適な画像を選択してMIPを作成できるため、流速依存による描出不良を回避できると考えています。また、同一シーケンスで画像を取得するため、VRで位置ずれが生じないという利点もあります。
今回は短時間撮像を重視しましたが、空間分解能を上げる設定も可能です。ただしその場合、撮像時間は延長してしまうため、目的に応じたバランスが必要となります。一方で、発表時にもご指摘を頂きましたが、本法と従来の個別撮像を比較し、画質面での優劣を評価することが今後の課題です。また、3Tではopp-inの間隔が短くなるため本設定は使用できず、現状では1.5T装置でのみ実施可能な手法となります。しかし、設定は比較的簡便であり、1.5T装置であれば多くの機種で使用可能と考えられます。ぜひ臨床で活用してみてください。
参考文献
1):Zhang Zihao, Deng Xiaofeng, et al. Segmented TOF at 7T MRI: Technique and clinical applications. Magn Reson Imaging, Vol.33, No.9, (2015), p1043–1050.
ライター紹介
群馬大学医学部附属病院(グンマダイガクイガクブフゾクビョウイン)黒澤裕司(クロサワユウジ)
群馬大学医学部附属病院の黒澤裕司です。いつも皆様が考案された撮像法を拝見し、自分でも実際に撮像してみては、その精度と工夫に感動しています。MRIの奥深さに魅了され、日々学びを重ねる中で、これまで多くの方々との出会いや交流を通じて、たくさんの刺激と成長をいただきました。出会った皆様は本当に素晴らしい方ばかりで、自分もいつかそのような存在になりたいと心から思っています。職場のMRI室には尊敬できる上司がいて、明るく頼もしい部下たちにも恵まれています。この環境で働けることに感謝しながら、県内外を問わず、これからも多くの方とつながり、学び合える関係を広げていきたいと思っています。
学会で皆様にお会いできることを楽しみにしています。ぜひ、見つけたらお声がけ下さい。
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