MRエラストグラフィってどんな検査?

MRエラストグラフィの必要性

成人病が増加している現代、隠れ脂肪肝も増加していると考えられています。脂肪肝の約25%は肝線維化を起こすと言われており、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)を誘発する因子の一つとして注目されています。

低侵襲な検査で脂肪肝を見つける方法はCTやエコーによる肝腎コントラストが有名ですが、肝線維化の程度まではわかりません。また脂肪含有率の定量評価を行うには肝生検など痛みや出血のリスクがある侵襲的な検査が主流でした。しかし、近年GE Healthcareが商品化したMR touchと呼ばれるMRエラストグラフィー(以下MRE)を用いた低侵襲的な検査によって肝臓の線維化を定量評価出来るようになりました。

そこで本稿では、すでに知っている読者も多かと思いますが、MREについてお話します。MREの概要は、まずパッシブドライバーと呼ばれる振動子(図1)を腹部に当て、物理的に肝臓に振動を与えます。

図1 パッシブドライバー(左図)とポジション(右図)

その振動している肝臓をMRIで撮像し、どの位肝臓が震えているかを計測します。もし肝臓が柔らかく正常な状態であれば細かく、たくさん震えます。一方で肝臓が硬くなり繊維化を起こしていると震えは少なくなってしまいます。

MREの撮像と波長

基本シーケンスはphase contrast(pc)法を用いています。肝臓の震えの大きさによって肝臓の硬さがわかる原理は、水に小石を投げ入れた時の波紋の広がり方を想像するとわかりやすいです。皆さん子供のころからの経験から想像できると思いますが、柔らかい水に小石を投げ入れた場合と、ゼリーのように硬い液体に小石を投げ入れた場合では波紋の広がり方は異なります。

の場合、波紋の数は多く、波長の短い波が形成されます。一方でゼリーの場合、波紋の数は少なく、波長が長い波が形成されます。これはパッシブドライバーで物理的に肝臓に振動を与えた場合でも同じ現象が起こります(図2)。

図2 波紋の広がり方

MREの波長から硬さへ

振動が与えられた物質の硬さによって波長が変化することがわかったら、次は硬さの定量評価です。波長から肝臓の硬さは図3の計算式によって求めることができます。

μ:剛性率 , ρ:媒体密度 , ν:波の速度 , f:Driver周波数 , λ:波長

肝臓の媒体密度はおよそ1と考えられている定数であり、Driver周波数(加振周波数)はシーケンスカード上で変更可能ですが、60Hz程度の固定値を使っている施設が多いと思います。従って肝臓の硬さを表す剛性率は式からもわかる通り波長によって変化します。この剛性率をピクセル毎に算出することによってWave imageからElastogramを作成することができます(図3)。

図3 剛性率の算出

剛性率のエビデンス

肝臓の硬さを数値で表すことはできたが、その数値と肝線維化のステージングはどのような関係になっているのでしょうか?様々な論文が発表されているため、カットオフ値に多少の違いはありますが、平均値の目安としては硬度が2.5kPa程度ではstage1、3.0kPa程度ではstage2、4.0kPa程度ではstage3、4.5kPa以上ではstage4とされています(図4)。ここで注意が必要なのは、このグラフからも読み取れるように、硬度はステージング間でかなりの重なりがあることです。従って、MREによって2.5kPaという測定値が得られたとしても、Stage 1と断定できるのではなく、Stage 0からStage 2程度の可能性が高いという幅を持っていることには注意が必要です。

(肝臓MR Elastography; http://innervision.co.jp/suite/ge/advanced_report2011/120106.htmlより抜粋)

 

図4 硬度と肝線維化の関係

MREの臨床症例

ここで臨床画像をいくつか提示します。図5の症例1↓は線維化のないケースです。Wave imageの波の間隔は狭く、Elastogramでは青く表示され、硬度を表す数値は約2.3kPaだったことから、肝臓の線維化は起こっていないか、線維化の程度は低いことが考えられます。

図5 症例1 正常肝


一方で図6の症例2↓は高度な線維化を起こしているケースです。この症例は事前に血液検査によってAST、ALTおよびγ-GTPの上昇が認められ、肝機能低下が疑われていました。さらにエコー検査によって脂肪肝も疑われていたため、肝線維化の精査目的でMREを施行しました。Wave imageの波の間隔は広く、Elastogramでは赤く表示され、ROI内の数値は約5.6kPaであり、Stage 3以上の高度な肝線維化を起こしている可能性があります。

図6 症例2 肝線維化


最後に珍しいケースをご紹介します。図7の症例3はnormal populationのMREによって肝線維化が疑われた症例です。この症例は、患者の自己申告ではありますが飲酒もなく、今まで肝機能障害など指摘されたことがない症例です。Wave imageの間隔は広く、Elastogramは赤く表示され、ROI内の数値は約4.6kPaであり、stage3-4の線維化が起こっている可能性があることがわかります。

図7 症例3 normal populationのElastogram

現在、このような”隠れ肝疾患”が疑われる症例は比較的稀ですが、今後MREの普及によってnormal populationによる肝疾患の報告が増えると、MREの新たな活用法が見えてくるかもしれません。このあたりは研究対象として大変興味深いところです。

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Hori Hiroki

Hori Hiroki新百合ヶ丘総合病院 診療放射線科

投稿者プロフィール

MR guided Focus Ultrasound(FUS)というMRIガイド下で行われる治療に関する研究を特に行っています。
「FUSと言えば堀」、「堀と言えばFUS」と呼ばれる男になれるように日々精進しています。

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