ためしてみました!!パイナップルジュースはボースデルの変わりになるのか?

  • 2014/12/18
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ボースデルとは?

ボースデルとは『塩化マンガン四水和物』を有効成分とする造影剤です。特長としては有効成分のマンガンによってT1強調像では陽性造影剤、T2強調像では陰性造影剤として効果をもつ経口消化管造影剤です。(詳しくは2014年臨床画像12月号-MRCP経口造影剤との併用について:高原太郎(著)をご覧下さい)
プレゼンテーション2

ボースデルとMRCPについて

MRCPは水分を強調する撮像方法であるため、通常、胆道・膵管は高信号に描出されます。また同様に液体成分が貯留されている胃、十二指腸なども高信号に描出されます。しかし、これでは同じように高信号に描出されるため、胆道・膵管の診断が不良になります(左図)。そこで陰性造影剤として効果をもつボースデルを服用し、かつT2強調撮像を行うことによって、胃・十二指腸の液体成分が低信号になり胆道・膵管のみが高信号に描出され診断能の向上が期待出来ます(右図)。
スライド1

ボースデルと同じ有効性成分のマンガンが含まれている飲料水は”パイナップルジュース”だった!!

第40回日本磁気共鳴医学会大会(2012年京都)において済生会熊本病院 沖川隆志先生が『市販飲料水を用いたMRCP消化管陰性造影効果の検討 (O-1-70)』という内容を発表されていました。そもそもの研究背景は3TMRIにおいてボースデルを原液のままで飲用するとT1強調像では高信号として描出されアーチファクトが出現するため3倍程度の希釈が適当という報告を背景に、マンガンの含有量が高い飲料での水抑制効果を検討した結果、パイナップルジュースに到達した報告であった。そしてパイナップルジュースはボースデル希釈の50%~25%と同等の信号値であったと報告されている。この演題発表を拝聴してすぐに試したくなるのが私の性分である。

ためしてみました!!パイナップルジュースはボースデルの変わりになるのか?

市販の濃縮還元100%パイナップルジュースを用いるとTE500msのHeavy T2WIでは胃の液体成分は低信号になりました。すごい!!、パイナップルジュースはHeavy T2強調像では陰性造影剤として効果をもつ経口消化管造影剤(造影剤と呼んでいいのかわかりませんが・・)でした。
スライド2

ところがTE100msのT2強調像では低信号にはならず、むしろ陽性造影剤のような効果でした。
スライド3

ん?パイナップルジュースはdual contrast法としても使用できるのでは?!

今から17年前にMRI-fanの編集担当されている高橋光幸さんが、”MRI用経口「両性」消化管造影剤としてフェリセルツを用いたdual-contrast MRCPの基礎的検討”*という論文を書かれていたのを思い出しました。消化管の信号はMRCPにおいて重なりを防ぐために抑制された方が良いはずです。しかしファーター乳頭の同定のためには消化管信号はむしろ抑制しないほうがよい。そこでフェリセルツを3倍濃度で用いると通常のT2強調像では消化管の信号は陽性造影効果を示し、HeavyT2強調像では陰性造影効果として利用できるdual contrast法が可能であると論じていたのを思い出しました。つまり、パイナップルジュースは2種類の異なったTEを使用することによって消化管内の液体成分の信号強度を変化させることができるdual contrast法を可能にする飲料水ではないかと思っています。

あらためて、『温故知新』と『TEの違いが引き起こす面白い現象』を感じた今日この頃でした。

*高橋光幸ほか:MRI用経口「両性」消化管造影剤としてフェリセレツを用いたdual-contrast MRCPの基礎的検討.日磁医誌、17:377-381、1997

スクリーンショット 2014-12-13 16.56.46

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