MTC併用Multi-echo FE法で骨・骨髄浮腫・脊髄を同時描出!

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皆様、こんにちは。千葉県済生会習志野病院 放射線技術科の長谷川晋也と申します。今回は、2025年の「画論 The Best Image」で発表させていただいた撮像法についてご紹介します。

脊椎MRI検査において、1回の撮像から「骨・骨髄浮腫・脊髄」の3つの情報に分けて個別に出力・描出する技術、MAESTRO(Multi-echo Acquisition: Efficient Spine TRiple-Output)法の原理や撮像条件の工夫、そして臨床応用について解説いたします。

はじめに

脊椎MRIでは、骨形態・脊髄・骨髄浮腫の3つの情報が、診断や治療方針の決定において極めて重要です。皆様の施設でも、Bone image(骨画像)、MR myelography(脊髄造影画像)、STIRなど、複数のシーケンスを組み合わせて撮像されているのではないでしょうか。

しかし、撮像シーケンスが増えるほど検査時間は延長し、画像間における患者様の体動による「位置ずれ」も大きな課題となります。そこで我々は、Multi-echo Field Echo(FE)法を応用し、1回の撮像から骨・骨髄浮腫・脊髄の情報を同時に取得するMAESTRO法を考案しました。

MAESTRO法の原理

MAESTRO法は3D multi-echo FE法をベースとしており、第1エコーをIn-phase(IP)、以降はOpposed-phase(OP)とIPが交互になるよう設定し、計4エコーを取得します(Fig.1)。

  • Bone imageの生成 IP画像(第1・第3エコー)を加算・反転することで生成します。
  • 骨髄浮腫画像・Myelography画像の生成 OP画像(第2・第4エコー)を加算してT2*強調画像を作成し、キヤノンメディカルシステムズ社製の「TONE処理」を適用します。

※ここでの「TONE処理」とは? γ曲線によるS字型の非線形コントラスト変換を行い、明るい領域(髄液)をより明るく、暗い領域(脊髄)をより暗く表示する画像処理です(Photoshopのトーンカーブに近いイメージです)。3D-TOF法などで用いられる可変フリップ角の「TONE法」とは異なります。

この処理により水成分のコントラストが強調され、同一のボリュームデータから「骨・骨髄浮腫・脊髄」の3種類の情報を位置ずれなく取得でき、包括的な評価が可能となります。

Fig.1 MAESTRO法の原理と画像生成フロー

1TR内で4エコー(IP/OP交互)を取得。IPエコー(第1・3)の加算・反転でBone imageを、OPエコー(第2・4)の加算+TONE処理で骨髄浮腫・Myelography画像を生成する。本法により、骨・骨髄・脊髄の3種類のエコー情報を1回の撮像で同時に取得できる。

撮像条件と技術的な工夫

安定した画質を担保するため、技術的に3つの工夫を加えました(Fig.2)。

  1. 展開エラーの抑制(FFE-MAPの採用) 感度マップに「FFE-MAP」を採用することで、本撮像との位相不整合を低減し、呼吸変動などによる展開エラーを抑制しました。
  2. コントラストの向上(MTCパルスの併用) MTC(Magnetization Transfer Contrast)パルスを併用して白質の信号を抑制し、脊髄と脳脊髄液(CSF)のコントラストを向上させました。
  3. フリップアングル(FA)の最適化 Bone imageとMyelography画像の双方で良好な画質が得られる条件を検証した結果、FA 5〜7°が最適でした(FA 1°ではSNRが不足し、FA 10°ではT1コントラストが強くなりすぎるため)。
Fig.2 MAESTRO法における3つの工夫

左:FFE-MAPの採用により、呼吸変動による展開エラー(矢印)を抑制。中央:MTCパルス併用(MTC On)による脊髄コントラストの向上。右:フリップアングルの比較(FA 5〜7°が最適。FA 1°ではSNRが低く、FA 10°ではT1コントラストが強すぎる)。

臨床での活用例

1. 腰椎圧迫骨折例へのアプローチ

Bone imageで骨折線と椎体変形を捉え、T2*強調画像で骨髄浮腫を描出することにより、急性期骨折との診断が容易になります。さらに、Myelography画像から脊柱管狭窄も同時に評価できるため、1回の撮像で「骨・骨髄・神経圧迫」を包括的に把握できます(Fig.3)。

Fig.3 腰椎圧迫骨折の提示例

(a) Bone imageでL1・L3の圧迫骨折、(b) T2*WI(TONE処理後)で同部の骨髄浮腫、(c) Myelography画像でL2/3・L3/4の脊柱管狭窄を描出。骨・骨髄・神経圧迫を1回の撮像で評価可能。

2. 側弯症を伴う腰椎椎間板ヘルニアへの応用

側弯を伴う症例では、標準的な矢状断(サジタル)や軸位断(アキシャル)だけでは脊柱全体の評価が困難な場合があります。本法は3D収集であるため、Curved MPR(曲面再構成)を作成することで、湾曲した脊椎を連続した1枚の画像として観察可能です。

Bone imageでは椎体配列や椎体前面の形状を、T2*強調画像ではヘルニアによる脊髄圧迫を明瞭に描出できます。また、インフロー効果により前方血管も描出されるため、椎弓根から椎体前面までの距離を左右別々に評価でき、スクリュー長の決定や前方血管との位置関係の把握など、術前計画にも極めて有用です(Fig.4)。

Fig.4 側弯症合併腰椎椎間板ヘルニアのCurved MPR像

(a) Bone image:椎体配列の側方偏位および椎体前面形状の左右差を評価。 (b) T2*(TONE併用):ヘルニアによる脊髄圧迫を明瞭に描出。 (c) 椎弓根スライス:椎体前面までの距離(青矢印)を左右別に計測でき、スクリュー長の術前計画に有用。

Fusion画像による応用と変革

MAESTRO法は、すべての画像を同一のデータセットから生成するため、位置ずれのないFusion(融合)画像やVR(ボリュームレンダリング)画像を容易に作成できます(Fig.5)。

  • Bone image + 骨髄浮腫画像 骨形態と骨髄浮腫の位置関係を正確に重ね合わせることで、骨折の新旧判定や治癒過程の評価に威力を発揮します。
  • Bone image + Myelography画像(VR) 骨形態と脊柱管の立体的な位置関係を直感的に理解できるようになります。複雑な脊椎変形例の把握や、整形外科医との術前計画の情報共有・ディスカッションにも非常に役立ちます。
Fig.5 同一撮像データから作成したFusion画像とVR画像

※Bone imageは加算するエコーを変えて2種類を作成。 上段:IPエコー(4.6 ms / 18.4 ms)加算のBone imageと骨髄浮腫画像のFusion。下段:後半3エコー加算で海綿骨を強調したBone imageと、Myelography画像から作成したVR画像。脊柱管(青)を立体的に描出し、骨形態との位置関係を把握しやすいため、整形外科医との術前評価の共有にも有用。

おわりに

MAESTRO法は、約4分30秒という1回の撮像で「骨・骨髄浮腫・脊髄」の3つの情報を同時に取得できる新しいアプローチです。特別なAI再構成技術や圧縮センシング(Compressed Sensing)を必要とせず、多くの施設の既存システムで導入可能な点も大きなメリットです。

本法が脊椎MRI検査の効率化と、さらなる診断能向上の一助となれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

ライター紹介

千葉県済生会習志野病院 放射線技術科 長谷川 晋也(ハセガワ シンヤ)

日々の臨床の中で「もっと短時間で、もっと多くの情報を得られないか」と試行錯誤するうちに生まれたのが、今回のMAESTRO法です。 正直なところ、MRIは知れば知るほど奥が深く、その難しさに“沼り”ながら日々格闘しています(笑)。それでも、全国のMRIの達人の方々との出会いに刺激をいただき、モチベーションを保ちながら走り続けています。学会や研究会でお見かけの際は、ぜひお気軽にお声がけください!

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Fumio Ishimori医療法人聖麗会 聖麗メモリアル病院 放射線科

投稿者プロフィール

茨城県北の脳外科専門病院にMR専従技師として勤務しています(GEユーザーです)。また都内の脳外科クリニックに月2回ペースで勤務しています(キヤノンユーザーでもあります)。猫を多頭飼いしてます。

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