- 「心臓ペースメーカや人工内耳は入っていませんか?」
- 「手術を受け、体内に金属はありませんか?」
- 「入れ歯、コンタクトレンズはありませんか?」
- 「狭いところは苦手ではないですか?」
この4つの質問の共通点は何でしょう?
みなさん、こんにちは。
静岡済生会総合病院 山崎敬之です。
みなさんは患者さんに問診を行う際、どのように問診していますか?
上記の答えは、全て「はい(YES)」で返答ができることです。
質問に対して患者さんは「はい」と答えてくれますが、雪崩のようにやってくる質問事項に、患者自身しっかりと考えて、回答してくれているのでしょうか?
今回は、問診票の聞き方について投稿します。
日本人の特徴
日本人の特徴を示す面白い論文を1つ紹介します。
日本人の回答バイアス−レスポンス・スタイルの種別間・文化間比較−
田崎 勝也. Japanese Journal of Psychology. 2017. Vol 14.
この論文は、日本人の回答バイアスについて書かれた論文です。
回答バイアスとは、アンケート調査や質問において、回答者が実際の意見や状況を正確に反映していない現象です。これには、意図的なものも非意図的なものも含みます。
例えば、「一晩にどのぐらいの睡眠をとっていますか?」と尋ねた場合、みなさんはどのように答えますか?
正確に回答する場合もあります。しかし、6時間しか寝ていないのに「7〜8時間は寝ています」と答える場合もあります。
これは、健康的な生活習慣を示したいという願望や、睡眠不足を問題視されたくないという気持ちから起こります。
こういったことが回答バイアスです。
この回答バイアスについて、日本人は他の国と比較して特徴的な部分があるのか調査した論文となります。この論文では、回答バイアスである黙従反応傾向、極端反応傾向、中間反応傾向について、日本とアメリカと韓国の調査を比較しています。
黙従反応傾向とは、内容を十分に吟味することなく項目に同意する傾向のことです。例えば、「いいえ」より「はい」、「あてはまらない」より「あてはまる」に回答することです。
極端反応傾向とは、端の選択肢ばかりを選択する傾向のことです。例えば、5段階評価で1と5ばかりに◯をつけることです。
中間反応傾向とは、中央の選択肢を回答しやすい傾向のことです。例えば、「いいえ」「どちらでもない」「はい」の選択肢がある場合、「どちらでもない」を回答することです。
論文の結果は以下となっています。
- 日本と韓国は、アメリカに比べて中間反応傾向が強い
- アメリカは、日本と韓国に比べて黙従反応傾向が強い
- どの国においても、3つの回答バイアスのうち黙従反応傾向がもっとも強い
- 日本は、黙従反応傾向と中間反応傾向の強さが同じくらい
この論文より、日本人は黙従反応傾向と中間反応傾向が強いことがわかります。
ということは、
- 「心臓ペースメーカや人工内耳は入っていませんか?」
- 「手術を受け、体内に金属はありませんか?」
- 「入れ歯、コンタクトレンズはありませんか?」
- 「狭いところは苦手ではないですか?」
この4つの質問をした場合、内容を十分に吟味することなく「はい」と答えてしまう可能性があります。これでは、正確な問診が行われないことになります。
NOと言わせる放射線技師になりましょう!
では、どのように改善すれば良いでしょうか?
それは、患者さんに「いいえ(NO)」と言わせるように質問すると良いでしょう。
- 「心臓ペースメーカや人工内耳は入っていますか?」
- 「手術を受け、体内に金属はありますか?」
- 「入れ歯、コンタクトレンズはありますか?」
- 「狭いところは苦手ですか?」
このように質問されると、どうでしょう?
少し考えて、「いいえ(NO)」と答えると思います。
問診を行う際、語尾を変化させることで、簡単に否定方向に回答を促すことができます。
このように、「いいえ(NO)」を回答する質問を行うことで、患者さんは聞かれている内容を吟味し、正確に問診を回答してくれることでしょう。
今日から実践してみてはいかがでしょうか?
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