ITEM2021レポートGE Healthcare編

【編集委員 堀 大樹】
読者の皆さま、今年もITEMに行って参りました。
ご存じのように3密防止のため今年のITEMは事前登録制で、ブース訪問も予約を入れてお邪魔してきました。

今年もGEの一押しは「AIR」がテーマでした

MRI fan.netでも何度か登場したAIRコイルです。写真を見て頂いてもわかるように、HeadコイルとAIRコイル一枚で頭から骨盤まで撮像範囲をカバー出来ます。しかもAIRコイルは非常に軽いので圧迫感なく全身のDWIBS検査が可能になります。

また、AIRコイルはコイルセンターを自動認識してくれる上に、これだけ感度範囲が広いと、コイルを適当に置いても感度範囲が足りなくてコイルのセッティングをやり直すなんてことが起こりません。MRCPや肝臓を撮像する際、予想以上に横隔膜が上方に位置していた為コイルセッティングをやり直す、婦人科骨盤の初診スクリーニングで巨大卵巣腫瘍がありコイルの感度範囲が足りない、などの心配がなくなります。

さらに、AIRコイルのパラレルファクターは1に近いため、パラレルイメージングのgファクターを最小に押さえることができるそうです。今後のバージョンアップでアクセラレーションを最大4まで選択出来るようになる予定だそうですが、AIRコイルを使用すればgファクターを最小に押さえる事が出来るので、SNRの低下が起こりにくく、高速化、若しくは高分解能化が現実になりそうです。

今年のGEの目玉はAIR Recon DL

DLは近年大注目されているDeep Learningの事です。

DLはDiscovery 750wでもバージョンアップで使用可能になる予定だそうです。楽しみです。

まず、AIR Recon DLではReconstructionのアルゴリズムが大きく変わったそうです。通常のReconstructionでは、フェーズドアレイコイルの各エレメントの信号を合成して画像を作成します。一方AIR Reconでは、信号だけではなく各エレメントのノイズも拾い上げて、エレメント毎に重み付けをして画像再構成をしているそうです。従って、ノイズを低減しつつ信号を持ち上げる事が出来るようになりました。写真を撮ることが出来なかったのですが、このAIR Reconの恩恵の一つとして、PROPELLERで発生するストリークアーチファクトが消えていました。衝撃的です。つまり、今まで皆さま、オーバーサンプリングを今まで1.5以上を選択していたと思いますが、1.0でも大丈夫になると言うことです。短時間撮像に大きく貢献しますね。

このAIR Reconの技術にDLが加わるとさらに凄いことになります。それがAIR Recon DLです。

何はともあれ、まずは画像をご覧下さい。

全く同じ撮像条件にも関わらずノイズが驚くほど改善されていることがわかります。なんとこのAIR Recon DLは、1.5T装置でもVer29.1から使用できるようになる予定だそうです。

ルーチン検査でもAIR Recon DLは有効

DLを使用すれば分解能を上げてもSNRを担保できるので、パーシャルボリューム効果が低減もします。AIRコイル使用してアクセラレーションファクターを高く設定し、DLを使用すれば高分解能・Thinスライス・短時間撮像を可能にします。これはとにかく短時間で検査を終了させたい超急性期脳梗塞セットにも有効ですし、高分解能化が求められる関節領域や厳しい撮像条件の設定が求められているPI-RADSにも余裕で対応可能になります。

AIR Recon DLはSNR改善以外にもメリットがある

なんと、DLはSNRの改善だけではなく、シャープネスの改善までするそうです。

供覧した画像のように、ノイズ除去だけではなくシャープネスが向上し、骨梁や冠動脈がくっきり、はっきり確認することができます。

GEのAIR Recon DLはフーリエ変換後の画像にDL処理をするのではなく、フーリエ変換前の周波数データ(サンプリングデータ)にDL処理をするそうです。処理の詳細はブラックボックスで教えてもらえませんでしたが、恐らく私の予想では、周波数空間に一様に分布するホワイトノイズの成分をDLで除去し、さらに分解能を司る高周波領域の揺らぎをスプライン補正の様なもので学習したDLを施す事によってトランケーションアーチファクトの除去やシャープネスを向上させているのでしょう。これはあくまで私見という事にご注意下さい・・・・。

AIR Recon DLの弱点

AIR Recon DLの唯一の弱点は、フーリエ変換後が画像に後がけでDLができないということです。撮像する時点でDLを選択しておかなくてはならいということですね。また、周波数領域でのDLなので、モーションアーチファクトの改善には対応していないそうです。モーションアーチファクトの改善には後がけDLの方が強そうですね。

いかがでしたでしょうか?今回のGE Healthcareの一押し情報はAIR Recon DLでした。これはSNRの改善・シャープネスの向上・トランケーションアーチファクトの改善という3つの効果が得られることでした。

ぜひ他のブースレポートもご覧下さい。

GE Healthcare Virtual Exhibition2021(Web)に参加してみた

【副編集長 高橋 光幸】
横浜栄共済病院の高橋です。当院は残念ながらJRC&ITEMへの参加はWEBのみとなり、直接会場に伺うことができませんでした。
そこでGE Healthcare Virtual Exhibition2021というWEB-ITEMへ参加してみました。実は昨年もWEB-ITEMへ参加したのですが、表紙からのリンクは各会社ホームページへの誘導ばかりで、すぐに見るのを辞めてしまいました。今年はGEのみですが表記へ参加してみたので感想を書きたいと思います。

まずは登録。6/3(木)までやっていますので、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか?リアルのITEMとリンクしており、ブースの見どころを各セクションのトップリーダが動画で伝えています(リアルのITEMが終了したあとでもなんか会場に行った雰囲気になります)。加えてVR技術でGEブースを回ることができます。説明用の動画や資料は、VR技術の中で出てくる ○ をクリックすると出てきます。これは見ごたえがあるものでした。MRIと少しだけCTを回って見てみましたが、リアルITEMに行かなくても会場に行った感覚になれます。

目玉は堀 編集員が書かれている通り、DLを使ったノイズ除去技術です。これはルーチンワークを変えてしまうほどインパクトの強いものです。Canonが先行していましたが、GEはノイズ除去のみでなく、鮮鋭度の向上やトランケーションアーチファクトの抑制をアナウンスしていました。実際に処理した画像から実画像を引き算した画像では、Edgeが残っていました。ノイズ除去のみではこの現象は確認できません。また効果はユーザ側で3種類の中から選択することができます。ローデータを使うため、堀さんが書かれているようにできあがってしまった画像にDLリコンを用いることはできません。素人ですが、本当にすごいという感想と、意地悪な視点でフェイク画像を生み出さないか?と強く思いました。T1強調画像は比較的、Nexを抑えるのでノイジーな画像が出てくるのですが、これもDLリコンを使うとものすごく綺麗な画像が出てくるので驚きました。すべてのプラットホームで使えるというのも魅力ですね。

新しい1.5T Signa Voyagerでは、70cmのワイドボアでエアコイルも使え、そして私が絶対必用だ!と思っている着脱テーブルが選べるようになったとのこと。これは本当に羨ましいです。ぜひ皆さん、引き合いにして説明などをGEの方から受けてみてください。さてWEBに戻るのですが、動画であったり、資料であったり、はたまた会社WEBに飛んだりと統一性がないのが少し残念に思いました。動画なら動画でぜひ作りこんで欲しいですね。VR技術はとてもよかったと思います。

Chief Editor’s Eye

以前 CS(圧縮センシング; Compressed Sensing)が搭載されたとき、一日で撮影できる件数が3件程度増えました(例:15例撮影できていた施設なら18例)。この結果、担当技師は忙しくはなりましたが、外来からのすぐに撮像して欲しいオーダーなどを受ける余裕もできました。1000万円ぐらいのオプションなら、3件/日(75件/日)なら、半年あまりでペイできるという計算も成り立ちます。その意味でも(価格によりますが)革命的なものだと思います。レトロフィットできることも魅力ですね [高原]

Deputy Editor’s Comments

AIR Recon DL は今回リリースされた AIR IQ Edition シリーズのすべての1.5Tと3T装置に搭載されるそうです。また既存のMR装置すべてにAIR Recon DLのアップグレード対応とのことです。このディープラーニングを用いた画像再構成は、信号とノイズを瞬時に判別し、分解能やSNRの改善のみならず(堀さんも書いておられますが)ストリークアーチファクトやトランケーションアーチファクトも除去してくれるそうです。かつては、SNRの悪い画像をフィルタ処理で少しでも良い画像に見えるようにする、なんていう涙ぐましい努力もありましたが、自分のようなロートル技師には隔世の感があります。GEの Virtual Exhibition2021 に出ている AIR Recon DL のデモ動画はYouTubeでも見ることができます(こちら

[石森]
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