Chief Editor’s comment
皆さん注目の「ラジエーションハウス」第1回の放映が終わりました。
皆さんの感想はいかがだったでしょうか。
私の感想は
- 専門家からみると、磁化率アーチファクトでかなり引っ張っているのが冗長でちょっと疲れた
- しかし、「能動的診断」をしようとしている姿勢は素晴らしいと思った
- 技師が「医者のオーダーを聞いていれば良いんだ」というセリフを何度も言うのは聞きたくない
の3つでした。
まぁ1番目は、私達は専門家なので、どうしても冗長に、また大げさには感じてしまうけれど、テレビの演出としては、まぁ妥当ですよね。
2番めは、これは一番大切なことだと思います。
放射線科医が、届いた画像のみを用いて読影することを私は「受動的診断」と呼んでいます。実際にはもっと情報を取ってこれるのだけれども、ルーチン撮影で終わってしまっているので、診断できないことはままあります。
放射線科医に限らず、診断ができる人が装置のそばにいて、適切な撮影法を選択すると、かなり診断の極限まで行けるのですが、それがなされていない現状があります。
3番目の「医者のオーダーを・・」みたいなのは、よくある話ですが、技師のみなさんはそんな意識を持たず、もちろん医師の方もそんな偉そうなことを思わず、患者さんを診断するために仲良く全力を尽くしてほしいと思います。
撮影時に画像を見て所見に気づく能力
そのときに、やっぱり最終的に重要なのは、「撮影時に、画像をみて所見に気づくこと」だと思います。所見に気づけば、追加検査ができます。
受動診断しかできない放射線科医は、その威力を知らないので「俺達の言うことを聞けばいいんだ」と思っている人もいるかも知れません。
でも本質はそうではない。
それが誰であっても、撮影時にすぐ診断ができて、適切な検査を選択できる人が、患者にとって最も必要な人です。
放射線科医でも、臨床医でも、技師でも良いのです。それは関係ない。
そして今、放射線科医が(画像枚数の爆発により)検査機器のそばにいなくなったのですから、技師のみなさんにその多くが委ねられています。
現状は、(1)めちゃウインドウが広い(2)大事なところがハレーションを起こしている、の2つは非常に多い。この点には注意が必要です。
技師の皆さんは、最前線で患者さんの所見を読めないといけない。そのうえで検査の技術を磨いてほしいなと思います。
そういう人は、放射線科医や臨床医から頼りにされて、幸せな仕事ができると思います。
若手は目指せ福澤圭
副編集長の高橋光幸さんなどは凄腕の代名詞で、ここの編集委員や、執筆してくれた人を始めとして、優秀でやる気のある人がたくさんいます。
最近の若手の仕事で関心したのは、虎の門病院の福澤圭さんの仕事。
彼が手塩にかけて作り上げたvascular compression syndromeを診断するための撮影法、表示法は、脳外科にものすごく信頼されています。彼は脳外科医と一緒に診断をしています。
彼がいなければあの診断はできるようにはなりませんでした。
その原点は、「診断」にあります。
聴神経や前庭神経を、脳血管が圧迫して生じる病気は、いま、虎ノ門病院で診断してもらうのが最高です。それは断言できます。
放射線科医の皆さんは、座ってばかりいないで、もっと撮影法を勉強して、能動的診断ができるようになるべき。
技師の皆さんは、撮影しただけで満足するのではなく、もっと診断を勉強して、気の利いた撮影を追加できるようになるべき。
そう思います。言い過ぎかな? でも本当にそう思いませんか。だって自分の肉親が患者なら、みんなそうするでしょう。
あと、「医者の言うこと聞いてればいいんだ」と思う人は、それが医師であれ技師であれ、ダメな人。
まず、患者本位ではない。また、相手のことを信用しないから、全体としての能力が低い。臨床医が放射科医を信頼しないのもダメ。レベル低い。
放射線科医が、重要な所見を見つけたのに、レポートしただけで仕事が終わった(責任は果たした)と思い、主治医に連絡しないのもダメ。想像力が足りなすぎ。
お互いが専門家として凄くないと、うまくいかないので、ぜひお互いの事をわかって仕事をして欲しい。
・・・以上感想でした。いろいろな意見があるけれど、啓蒙としてはとても良かったと、私は思います。
いくつかFaceBookにコメントをいただきました。ありがとうございました。
風間 清子 高原先生がおっしゃる「撮影時に画像をみて所見に気づくこと」、本当に大事だと思います。画像で気づいたことは医師に連絡する。また、技師としては、画像だけじゃなくて撮影中の患者さんの状態や様子を撮影しながら見ているので、変だなと思ったことも伝えるようにしています。
自分の撮った画像はちゃんと確認しないと撮影も上達しません。。。
放射線科の医師がいつも側にいる環境で働いてる方々がちょっとうらやましいです。
高原 太郎 いつも考えて現場にいる風間さんらしい発言、ありがとうございます。とても大切なコメントだと思うのでMRIfan.netにもコピペしておいていいかな。
検査のときに患者さんの様子を見て、撮影に反映させたり医療チームに伝えるのはものすごく大切ですね。学生のときに、「吉利(よしとし)の内科診断学」等を読んで、「患者が診察室に入ってきた瞬間から診断が始まり、名医は患者が座るまでの一挙手一投足や、爪の色、肌の湿潤などをみる」と教わります(ました)が、まさに検査時に気づくこと、患者情報を把握して検査を行うことがとても大切だと思います。
いま、「AIが進歩するので、画像もなくなり(TVであった位相情報なども用いて)、診断の結果だけでてくることになる」という意見がありますね。僕自身もSynthetic MRIを研究して(そんなものは想像できているはずと踏んでいた)プロトン密度に考えが及んでいなかったことに改めて気づいたり(この間通った論文)、MR Fingerprintingがあればもっとアドバンスでもう要らなくという推論もわかります。でも、コンピュータが上手にできることは「内挿」なので、外挿になるととんでもなく不正確になるということを忘れて論じられているのは痛い。パラメータの外側はまるで不正確。だから私達がお払い箱になるにはもう少し時間がかかるんです。不必要になる前には脳を拡張してもうすこしやれることもあるでしょう。
「AIが診断して99%」という論調にみんなが盲信しているのも困ったもので、たとえばマンモグラフィを99%(エキスパートのように)診断できても、それはマンモという画像の限界にかなり迫れたということだけであって、いま提供しているMRI(DWIBS)ではうんと多くの乳癌が検出できるのだから、そのニュースだけを見ていても本質が見えません。両者の相加効果も考えなくてはなりませんし。
また、尊ばれている「エビデンス」は、「資本主義ベースのエビデンス」でもあるので、例えば製薬会社がものすごくお金を投じたいところではたくさんの研究費が投じられてエビデンスができてくるけれど、そうでないところはあんまり高いレベルのエビデンスがでにくいということもあります。つまり真のエビデンスを知るためには「逆資本主義補正」して考えることが必要なのですね。「500人の研究でわかる有意差」と「5000人の研究でわかる有意差」に着目するのも賢い。
そういったことまで考えると問題は膨大なのですが、ひとりひとりの現場の人間が、目の前の患者にできることは、逆資本主義補正をして考えると立派に役立っていると思います。
矢部 英貴 臨床医ではなく放射線医じゃなきゃ出来ないこと、放射線医だからこそ見つけられる事がある、と言うところが良かった。今まで放射線医、技師を取り扱うドラマはなかったから。注目浴びれば良いと言うわけでは無いけど、やはり何をやってるのか、が一般の人にも理解してもらえるのは良い事ですね。
高原 太郎 矢部くん、ああ、それはそうだよねえ。ありがとう。たしかに知られていないからね。感謝感謝。
煎本 正博 私が放射線医の修行を始めた頃はバリウムの消化管検査が全盛の頃で、ずっと自分でマーゲンや注腸を撮っていました。その頃のボスの中島先生は、レポートなんかどちらでもいい、まずは写真が病変を物語る画を作れと教えていました。
昨今の技師会は技師がレポートを書けるようにすると言って、日医放とギクシャクしています。
レポートなんか料理で言えば最後の盛り付けです。素材をしっかり作って、調理することが大切です。
そんな作業を放射線科医と技師が協力して行ける環境が望ましいですね。
高原 太郎 ああ、先生、マリアンナの当直(放射線科医として)で、多発外傷の方のフィルム現像が終わり出てくるやいなや、必死でデルマトグラフで骨折部位にマークしていたことを思い出しました。マーゲンや注腸でも、病変を露わにしていく過程は、医療者の醍醐味ですね。あと、有所見のフィルムをジャケットの前に並べ直しておきましたね。そういうのが大切と思います!
なるほどレポート、、、議論は難しいのでしょうね💦
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