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腰椎MRI検査の基本(撮像範囲や構造上注目すべき点)
- 2016/9/2
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腰椎Sagittalの撮像範囲どのように設定していますか?
画像診断において、撮像範囲の設定はとても重要です。なぜなら撮像範囲内に映された画像(情報)の範囲でしか確信的な診断はできないからです。つまり、診療放射線技師は、読影医や臨床医がどの断面でどの範囲まで求められているのかを理解する必要があります。
では腰痛で受診された患者さんの腰椎MRIの撮像範囲は、どのように設定していますか? 皆さんも経験があるかもしれませんが、腰椎MRIでは所見がなく、後日追加オーダーされた胸椎MRIで異常(圧迫骨折や黄色靭帯骨化症)が発見され、二度手間となるケースがたまにあります。つまり胸椎に生じた異常が腰痛や下肢痛の原因になることがあるわけです。
胸椎の圧迫骨折に関しては、好発部位は胸腰椎移行部(Th11, 12)ですが、次いでTh7, 8にも多く発生します。そのため当センターでは、上下方向のFOVを380mmとし、可能な範囲で下位胸椎を含めるように設定をしています(図1)(腰椎のレントゲンも半切で撮影しています)。
次に左右方向の撮像範囲に関してですが、左右の椎間孔狭窄が確認できるレベルまで範囲に含めることが重要です。加齢に伴う椎体配列の乱れや外側ヘルニアは椎間孔狭窄を招き、腰痛や下肢痛の原因となるからです。
MRIにおいて、T1強調画像の傍矢状断像における椎間孔部の脂肪消失は、椎間孔狭窄の感度が高いと言われています。ただし、この判断基準にはピットフォールがあります。Aota Yら(Spine. 2007 Apr 15;32(8):896-903.)の論文では、MRIのT1強調画像の傍矢状断像における椎間孔狭窄の検出率について述べられています。
下記図2の特異度(赤線)に注目してみると,L4-5、L5-S1が低い(偽陽性が多い)ことがわかります。特に高齢者ほど特異度が低くなるので注意が必要です。つまりMRIによる椎間孔狭窄診断の特徴を理解することが重要だと考えます。
馬尾の位置を観察しよう
脊髄の本幹はL2あたりの高さで終わり、その下は馬尾という脊髄神経の束が脊柱管内を走っています。この馬尾を観察することは、腰椎MRIにおいて重要です。健常者の馬尾は、まっすぐ伸びた状態で重力方向に落ち込んでいます。そのため馬尾が前方に変異している場合、血腫や腫瘍の存在を疑います。またまっすぐ伸びているはずの馬尾が弛緩していれば、脊柱管狭窄症による馬尾神経への圧迫が想像できます(図3)。
AxialのT2強調画像における馬尾の位置から腰部脊柱管狭窄症の重症度を判定する基準として、sedimentation signがあります(図4)。
腰部脊柱管狭窄症患者の約66%はsedimentation sign陽性と言われています。また手術を必要とする腰部脊柱管狭窄症患者の89.5%はsedimentation sign陽性であり、このサインは客観的かつ定量的に腰部脊柱管狭窄を計測できるツールである (Fazal, A. Spine J. 2013 Aug;13(8):837-42.) 、陽性の場合は保存療法に抵抗性がみられ外科的手術の方が効果的である可能性を示唆する (Barz, A. Spine J. 2014 Apr;14(4):667-74.)等の研究報告があります。このように馬尾に注目し、多方向から観察することにより診断情報が増えることがわかります。
[高原注:Sedimentationとは「沈殿」などの意味です。ここでは、仰向けになって寝ている場合、正常な状態では、馬尾神経が重力に従って背側に「沈殿(Sedimentaion)」していることを指しています(だからこの状態を「陰性」という)。脊柱管狭窄があると、狭窄部を通過した後の馬尾神経がすこしバラける感じになり、これを「陽性」と呼んでいるようです]
撮像範囲の意味を捉え、形態所見を観察しながら検査を行うとよりMRI検査が楽しくなりますね!
ライター紹介
「たかが1枚、されど1枚」の精神で、画像診断に取り組んでいます。
MRの無限の可能性に心躍ります。
東千葉メディカルセンター 坂井上之
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