たった10秒でできる下肢MR-V画質改善!!

背景

近年、下肢MR-Venographyも様々なシーケンスが開発され、非常に美しい画像を目にする機会も増えています。しかし最新の装置でなくても撮像できるinflow効果を用いた2D-TOF法は、当院を含めいまだ広く用いられているのではないでしょうか。

TOF法において流入血流が速くなる事は信号強度の上昇につながりますので、画質改善に重要です。下肢静脈においてもこれまで、 (1) 下肢を少し高くポジショニングして流れを良くする、(2) 検査直前までお湯につけ加温し流れを良くする(入浴剤までこだわった施設もありました)、(3) 冷えないよう暖めたタオルで下肢を覆う、(4) 血管を圧迫しないよう腹臥位で撮像する、など様々な工夫がされてきました。このような情報を収集し、自施設でも可能な「技」を取り入れ画質改善を狙っていた訳です。

ある運動の効果

そんなある日、私が自宅でNHKの「ためしてガッテン」を視ていたところ、脚のむくみを解消する方法について解説していました。静脈の流れを良くし、むくみや血栓の防止の為にある運動をすると良いと言っていました。その運動とは足関節の伸展・背屈(足首の運動)を繰り返し、脚の筋肉(主にヒラメ筋)のポンプ作用を促進するという超簡単なものでした。

http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20070207.html

早速、翌日にボランティアを募り、この運動がinflow効果の上昇にも有効かをためしてみました。するとどうでしょう、何もしない状態ではどうにか観察できる程度だった静脈が、足首曲げ運動の後にはくっきりと描出されているのが確認できます。

画像1

以下は、先ず何もせず撮像(左)した後に、右足だけ足首曲げ運動を加えて撮像した結果(右)です。

画像2

運動を加えた方の静脈 (右) の描出が良くなっているのがお解り頂けると思います。

この効果を学会発表しました:まとめ

これは効果について実験を続け、当院の山下真紀子技師を中心にデータをまとめ、2010年の中部放射線医療技術学術大会(CCRT)で報告してもらいました。

画像3

以上のように、寝台に上がった直後で、なにもしない状態と足首曲げ運動を加えた後では有意にCNRの上昇を認めました。

これ以来、私たちはこれまで行ってきた前処置に加え、患者さんが寝台に上がった後にこの「たった10秒でできる足首曲げ前処置」も加え下肢MR-Vを撮像しております。ここまで書いて、CCRTにて「この運動の効果はどのくらい続くのか?」とのご質問をいただいたものの、当時はまだデータがまとめきれず、今後の課題としていた事を思い出しました。山下技師、続きを是非お願いしますよ (^^)

最近は、下肢血管の検査は、動静脈共にほとんどCTで行われます。腎機能等の理由で造影剤が使用できない患者にしかMR依頼がありません。少ないチャンスではありますが、このような小技を用いてきれいな画像を提出し、依頼医に「非造影MRもきれいやん!」とリピーターになってもらえるように、力んでみているわけでございます。皆様も是非、実践してみてください。

ライター紹介

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市立砺波総合病院 放射線技術科 嶋 剛

技師歴も20年を超え、MRIに携わるようになり10年以上経ちました。学会をはじめ研究会、ユーザーズミーティング等を通しいろんな方々と交流できる幸せを感じておりますが、同時に自分の勉強不足を痛感しております。

休日はロードバイクにまたがりのんびり(時には心拍数↗)で、自然豊かな富山平野を走ったり、あちこちイベントに出かけたりしております。

いつかSigna甲子園か自転車レースの表彰台に上がる日が来るといいのですが。

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