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静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針を読み解く
- 2020/10/15
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静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針 第三版
2019年3月に静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針が改訂され、第三版が発行されました。
MRIに関わる事項として第二版と大きく変わった項目の一つに、脳梗塞発症時刻の定義があります。
※画像をクリックするとリンク先に移動します。
第二版から第三版への変更点:発症時刻の定義
第三版では、
『発症時刻が不明な時は、最終健常確認時刻をもって発症時刻とする【推奨グレードA、エビデンスレベル低】。
ただし発症時刻が不明な時でも、頭部MRI拡散強調画像の虚血性変化(DWIにて高信号)がFLAIR画像で明瞭でない場合(いわゆる DWI/FLAIR ミスマッチ)には、発症4.5時間以内の可能性が高い。
このような症例に静注血栓溶解療法を行うことを考慮してもよい』
との記載がなされました。
※脳梗塞発症後のMRI画像はDWIにて高信号となった後にFLAIRにて高信号となるため、高信号呈示時刻に差が生じる。
第二版では、
『発見時刻は発症時刻ではない。発症時刻が不明な時は、最終未発症時刻をもって発症時刻とする【エビデンスレベルIV,推奨グレードA】。』
のみの記載でした
ので、今回の改定により適応が広がったと考えます。
しかし、これは【推奨グレードC1、エビデンスレベル中】であり、今後さらなる研究が実施された場合に評価が変わる可能性が高いレベルです。
※第二版と第三版ではエビデンスレベルが変更されていますので、記載が異なります。
DWI/FLAIRミスマッチ陽性は発症4.5時間以内の可能性が高い
発症早期にMRIのFLAIR画像でDWIの虚血性変化が明瞭でない場合には、発症4.5時間以内の可能性が高い。
欧州で行われたWAKE UP試験では、起床時に発見もしくは発症時刻不明で、かつDWI/FLAIR ミスマッチが陽性な患者に、MRI撮影から1時間以内かつ発見から4.5時間以内に治療を開始した場合、アルテプラーゼ群が偽薬群に比べ3ヵ月後に完全自立に至る転帰良好例(modified Rankin. Scale (mRS):脳卒中発症後の生活自立度の尺度 0〜1)が有意に多かった(53.3% 対 41.8%)。
一方、アルテプラーゼ群で実質性血種(parenchymal hematoma : PH)2タイプの頭蓋内出血が増加し(2.4% 対 0.8%)、 症候性頭蓋内出血や発症3ヵ月後の死亡(4.1% 対 1.2%)が多い傾向であった。
(同指針の項目【2-4頭部画像診断による発症時刻推定】から引用)
なお、これらは1.5もしくは3TのMRI装置で、以下の条件にて撮像されたFLAIR 画像で行われた試験となっています。
・ TR >8000 ms
・ TI:装置依存 (1.5Tなら2300 ms程度,3Tなら2600 ms程度)
・ TE:装置依存 (1.5Tなら100〜140 ms,3Tなら95〜125 ms)
・ 加算回数:1回
・ FOV:220〜300 mm
・ 収集マトリックス: 192 × 128 以上 (1.5T) 、 256 × 92 以上(3T)
・ スライス厚 : 5〜7 mm
・ ギャップ:最大20%
まとめ
第二版では最終健在が発症時刻となっていましたが、第三版では最終健在確認時刻が不明な患者でも、DWI/FLAIR ミスマッチが陽性でMRI撮像から1時間以内かつ発見から4.5時間以内に治療を開始できれば完全自立に至る転帰良好例(mRS:0〜1)が有意に多いとの記載がなされました。
今回このように改訂された事で、今後の急性期脳梗塞症例におけるMRIの重要性はますます高まると感じています。
因みにわが国でもWAKE-UP試験に準じたプロトコールで0.6mg/kgのアルテプラーゼを使用したTHAWS試験が行われており、3ヵ月後に完全自立に至る転帰良好例(mRS 0〜1)に有意差は無いが、副作用発現率にも有意差が無いとの結果が示されています。
しかし、WAKE UP試験ではrt-PA使用時の副作用発現率が高く慎重投与となっていますので、使用の際には個々の患者さんに対してその適応を十分考慮する必要があります。(あくまでも【推奨グレードC1、エビデンスレベル中】ですからね・・・)
何れにせよ、MRI撮像から1時間以内かつ発見から4.5時間以内に治療を開始することが条件となりますので、患者さんの選択肢を狭めないためにも、われわれ診療放射線技師は迅速なMRI検査を提供する必要がありますね。
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