皆さまはじめまして。茨城県立こども病院の加藤綾華と申します。茨城県立こども病院は茨城県水戸市にある115床の病院になります。当院は「将来を担うこどもの生命をまもり、心身ともに健やかに育てる」という設立時からの理念のもとに、茨城県における小児医療の中核的な役割を担う唯一の小児専門病院で、24時間365日紹介患者や救急車の受け入れを行っております。
当院では昨年12月にPHILIPS Ingenia 1.5T Release5.4 Ambient Experience In-Bore solutionを導入しました。また今年度から圧縮センシング(Compressed SENSE)を導入し、運用しております。放射線を使わないMRI検査は特に小児での画像診断の需要はとても高く、当院での検査数も増え続けています。そこで小児のMRI検査を行うにあたって注意が必要なポイントについて、動き、MRIの騒音、小児の鎮静などについて紹介していきます。
【体動への対策について】
動きはアーチファクトの原因になります。撮像前のポジショニングでしっかり固定することが大切になります。特に新生児の撮像では陰圧式の固定具を使用しております。患者を固定具で包み、ポンプで空気を抜いて圧縮させ固定しています。また、ベルトでしっかり固定すること、コイルと体の間にできた隙間を埋めるために陽圧式固定具やスポンジを詰めるなど動きを制限する工夫をしています。
しかし、検査中にじっとしているのが難しい患者や、鎮静をして眠っていても無意識に動いてしまう場合には、再撮像を行うこともあります。そのようなときには、PHILIPSのMultiVane(k-spaceを回転しながら信号収集を行い、モーションアーチファクトを軽減させる体動補正)を使用しています。
【騒音への対策について】
鎮静をして眠っている患者には耳栓とヘッドホンをつけて撮像を行っています。さらにドーム状のアコースティックフードをかぶせて音への工夫をしています。また技術面ではIngeniaのIn-bore experienceにより、MRI検査中に発生する音を軽減するConforTone(コンフォトーン)を積極的に活用しております。
【小児の鎮静について】
小児にとってMRI検査を長時間行うのは困難で途中で飽きてしまったり、ガントリーの中に入ることが怖くてできないということもあります。鎮静をするためには医師、看護師、私たち放射線技師が、監視モニタやパルスオキシメータなどを用いて安全に検査ができるように子供たちを見守っています。また、当院では麻酔科医師による全身麻酔下での鎮静MRIも行います。主に呼吸器疾患により呼吸管理が必要な患者や、精神疾患、発達障害のため鎮静薬では眠ることが難しい患者が対象になります。
【Ambient Experience In-Bore solution】
「In-bore solution」を導入したことにより、患者が映像や音楽を楽しみながらリラックスした環境で検査を受けることが可能になりました。映像はガントリーの後ろの壁のモニタから反転させた映像を投影し、コイルに装着させた鏡で見ています。映像はプリセットされている動物たちや景色を見ることができ、他にもDVDを見ることも可能です。最近では好きなDVDを持参される患者もいます。導入の成果として、検査時の不安とそれにより発生する不意の挙動による再撮像の低減がみられており、鎮静をしなくても検査ができる患者が増えております。
【圧縮センシング(Compressed SENSE)について】
当院では、メーカーの協力のおかげで早い段階で圧縮センシングを導入することができました。PHILIPSの圧縮センシングはSENSE(パラレルイメージング)とCompressed Sensingを融合した高速化技術です。2D、3D撮影に対応しており、全身領域で使用でき、これは他社にはない技術だそうです。特に3D撮像や白黒のコントラストがはっきりしている撮像,情報量が多いデータに有用であるとの説明を受けております。当院の現状はまだ使用するシーケンスやパラメーターの設定に試行錯誤している状況ですが、T2W系の白黒のコントラストが比較的良好なシーケンス(例えばT2W-DRIVEなど)に使用し撮像時間短縮をしております。
【最後に】
簡単ではありますが、当院での小児MRI検査について紹介させていただきました。いままでのMRIでデメリットとされていた、撮像時間の長さや騒音なども新しいMRIでは解消されつつあります。今後も皆さまと情報共有をしながら、より良い小児MRI検査を行っていければと思っております。
【自己紹介】
加藤綾華と申します。2017年4月に入職し2年目になります。所属は、茨城県立こども病院放射線技術科で診療放射線技師をしております。生まれも育ちも茨城です。学生のときから小児医療に携わりたいと思い、当院を実習病院として選びました。念願の職場で充実した毎日を過ごしております。
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