iPhoneユーザーの皆さん、お気をつけください! 磁場だけではなく、ヘリウムもやばいんです!

MRI隣室のiPhoneが突然起動不能になった

『今大変なんですよ!』

2018年7月、以前勤務していた病院がMRIの移設のために壁を壊すというので挨拶がてら立ち寄った時のこと。

MRI隣室のiPhoneが突然起動不能になったとの話を聞いた。技師もメーカーも知り合いとあって、いろいろと話を聞くことができたが、原因はわからず、対応にてんてこ舞い。android端末も置いてあったものの、影響を受けたのはiPhoneのみであったという。原因が特定できず、装置メーカーも困り果てていたのを記憶している。

ヘリウムガスの可能性を探るため実験をしてみることにした。

11月、当院においてもMRI更新作業中に、サービススタッフ及び職員保有のiPhoneが起動不能に!当初、磁場の立ち上げ、ヘリウムの補充などが目まぐるしく行われており原因の特定は難しいと考えられた。このままだと迷宮入りだが、いまこそgoogle先生のお力を借りるとき!

すると、ヘリウムガスによるiPhoneの故障に関するWeb記事(「iPhoneやApple Watch、ヘリウムガスで動作不能に!Appleも注意喚起」 https://iphone-mania.jp/news-232234/)が掲載されており、もしかして!ということで、ヘリウムガスの可能性を探るため実験をしてみることにした。

記事によれば、影響を受けるのはiphone6以降の機種ということであっためiPhoneを持たない私は、自腹で中古のiPhone6を2台購入。さらに先輩からiPhone8を借りて実験に踏み切った。iPhone6を2台購入したのはiPhone8が故障したときのバックアップとして使用してもらうため。

実験の方法は、いたってシンプル。

Web記事を参考にしながら、ジップロックにiPhoneを封入し、そこへ風船用ヘリウムガスを満たしストップウォッチ機能を用いて時間計測を行いながら影響の有無を観察するだけ。

その結果、iphone8は8分21秒が経過したところで、表示する時間経過が実時間よりも早く進むという現象が発生。

8分38秒突然シャットダウンし起動不能となった。iphone6はその後も異常はなく、24時間後も、ご機嫌に時を刻んでいた。

この結果から、全てのiPhoneに影響しているのではないことが分かった。

また、ヘリウムガスがiPhone8に影響を与えていることは間違いなさそうだ。影響を受けたiPhone8は、今回の実験では一週間程度で充電が可能となり復活している。

ヘリウムにさらされる危険のある状況は、MRIという特殊な環境だけではない。

例えば、イベントでバルーンにヘリウムを注入するようなケース。狭い空間でこれらの作業を行い、換気が不十分であった場合には、ヘリウム濃度があがることも考えられる。

そこで、故障リスクを避けるために事前に対策は可能か!という視点で追加実験を行った。復活したばかりのiPhone8をジップロックに封入し、しっかりと密封したうえで、端を折り返しテープで固定。ジップロックに封入した理由としては、iPhone8の簡単な操作が可能であったからだ。この状態なら、日常使用をしながらの対策になるのではないかと目論んだ。

そして、その状態のiPhone8を別のジップロックにヘリウムとともに封入し時間経過を確認した。結果は23分59秒で先の実験と同じく起動不能。この結果から、ある程度の保護効果はあるものの、やはり影響は避けられないことが分かる。

先輩には、またしばらく代替え機のiPhone6を使用してもらう羽目になった。

Web記事によると、ヘリウム分子は非常に小さく、iPhone内部に侵入し発信器に影響を与えることで作動不能となっているとのこと。

つまり、ヘリウムの侵入で影響を受ける発信器を搭載している製品が起動不能の対象となっているようだ。2回目の実験では、ジップロックよりもヘリウム分子が小さいために、袋を通過してしまったヘリウムがiPhone8内部に侵入したことが原因だろう。ジップロックを通過してしまう分かりやすい例えでは、ヘリウム入りの風船は、普通の風船に比べてしぼむのが早いことを体験したことがないだろうか?これはヘリウムがそれだけ小さな分子であることを示している。

しかしながら、これほど高濃度のヘリウム中にさらされ続けるという状況は、滅多にはない。気になるときにはiPhoneを近づけないことがベストだが、緊急避難として、ジップロック保護にはある程度の効果は期待できるものと考える。実際に当院において、ヘリウムが出る作業時にはスタッフのiPhoneをジップロック保護したところ、現象は発生しなくなった。

先輩のiPhone8も無事だ。

報告者 市立大洲病院 大下友昭

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