「Coil配置がカギ」 ~ DWIBS折り返し?様アーチファクトの低減 ~

皆さまはじめまして。岡崎市民病院の久米 勇人と申します。岡崎市民病院は, 愛知県岡崎市にあります660床の病院で, 2019年2月にGE社製Signa Artist 1.5T, 2019年4月にGE社製Signa Architect 3.0Tを導入しました。

DWIBSチャレンジ

愛知県の三河地域では積極的にDWIBSを撮影していないというのが現状でした。ちなみに当院のDWIBSの実績もゼロでした。そこで, 「東三河RF研究会」 という研究会で3T MRIを保有している施設で3TのDWIBSプロトコルの初期検討をしてみようというのがスタートでした。MRIfan.net, Body DWI研究会, GE DWIBS研究会に投稿されている多くの先生方の記事を参考にプロトコルを作成しました (Fig. 1, Fig. 2)

Fig. 1(左) 当院初のDWIBS画像  Fig. 2(右) DWIBSプロトコル (3T MRI)

 

撮影方法

当院では, Head Neck UnitとAnterior Array Coil×2を使用しています (Fig. 3)

Fig. 3 Head neck unit(左) Anterior coil×2(右)

 

もちろんHead Firstでも撮影可能ですが, 患者様の精神的な要素を考慮してFeet Firstで撮影しております (Fig. 4)

Fig. 4 ポジショニング

Direct Coronalにて3stationに分けて, FOV外にSATパルス, 胸部領域にShimを置いて撮影しております (Fig. 5)

Fig. 5 撮影範囲の設定

 

しかし・・・

一見, 全く問題のないきれいなDWIBS画像を撮影できたと思ったのも束の間, 頸部領域に 「折り返し?様アーチファクト」 が出現していました (Fig. 6)

Fig. 6 折り返し様アーチファクト

 

いろいろと文献を読んでみるとこのアーチファクトは, Lip like Artifactであり, 対策として以下の2つの点を試してみましたが, 当院のDWIBSにおいてはなかなか改善されませんでした。

① 頭部に感度領域を持たないNeck Spineを使用して撮像する (Fig. 7)

② 頭頸部用コイルに頭部を入れすぎないようにポジショニングする

Fig. 7 Head Neck (左), Neck Spine (右)

 

何気なしにファントムを撮影してみると・・・

何か改善策がないか何気なしにファントムを撮影してみると, これはDWIの最大の敵である 「歪み」であるということが分かりました (Fig. 8)

Fig. 8  T2Wi (左), DWI (右)

 

歪みを低減させるために

歪みを低減させるパラメーターで第一に考えたのがParallel Imaging Factor (以下ASSET Factor) です。しかし, Neck Spineは, ASSET Factorを2.0より大きく設定できません。ですが, Body Array Coilと併用させることでASSET Factorを2.0より大きく設定することが可能となります (Fig. 9)

Fig. 9 Coil Configuration

 

Neck SpineでASSET Factor 2.0の場合とNeck ChestでASSET Factorを2.0 ~ 3.0まで可変させ, ファントムを撮影し (Fig. 10), 歪みの実測値を求めました (Fig. 11)

Fig. 10 ファントム撮影

 

当然ですが, ASSET Factorを大きくすると, 歪みが低減されます。また, 同じASSET Factor2.0でもCoil ConfigurationがNeck SpineよりNeck Chestの方が歪みが少なくなっているのが分かります。

Fig. 11 歪みの実測値

 

ここでカギとなるのが 「Coil Configuration」

様々なパターンのCoil ConfigurationでASSET Factorを可変させ, DWIBSを撮影しました (Fig. 12)

Fig. 12 様々なパターンのDWIBS

 

Neck Spine, Neck ChestのASSET 2.0とHead Neck ASSET 2.5は, 頸部領域に歪みが顕著に見られていますが, Head Neck Chestと Neck Chest ASSET 2.5では, 歪みが低減されています。

しかし, Neck Chest ASSET 3.0では, アーチファクトが発生しており, これは展開エラーによるものではないでしょうか (Fig. 13)

Fig. 13 歪みの評価

 

折り返し様?アーチファクト低減のPoint

① 被検者の前面と後面の感度領域が揃ったCoil Configurationの選択 (Fig. 14)

Fig. 14 感度領域が揃っているCoil Configuration

 

② Neck Spine ASSET Factor 2.0 → Neck Chest ASSET Factor 2.5への変更 (Fig. 15)

Fig. 15 変更前 (左), 変更後 (右)

 

まとめ

この折り返し様アーチファクトは歪みである以上, 完全に消すことは不可能であり,  Coil configurationを揃える, ASSET Factorを可能な範囲で大きくすることで歪みを低減させることができると考えます。

当院のDWIBSにおいては, まだまだ実績が少なく, 課題もありますので, 今後とも検討を続けていきたいと思っております。

ライター紹介

岡崎市民病院の久米 勇人と申します。診療放射線技師になって12年, MRIを担当して11年になります。

野球とMRIが大好きな2児の父親です。私が思うMRIの興味深いところは, アーチファクトです。MRIを11年間経験しても初めて遭遇するアーチファクトであったり, 常にMRIの奥深さを感じております。MRIを通して他施設の先生方と出会い, 多くのことを日々勉強させていただいております。今回, 執筆するにあたりご協力をいただいた岡崎市民病院 MRI室の皆様, 放射線室の皆様に感謝申し上げます。

 

 

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Fumio Ishimori医療法人聖麗会 聖麗メモリアル病院 放射線科

投稿者プロフィール

茨城県北の脳外科専門病院にMR専従技師として勤務しています。昨年、8年ぶりに勤務先のGE製MR装置がバージョンアップされ、Deep Learning画像再構成(Air Recon)が使えるようになりました。また最近は、都内の脳外科クリニックにも月2回ペースで勤務するようになり、キヤノンユーザーにもなりました。いまだに覚えることがたくさんありすぎて困ってます。猫を多頭飼いしてます。

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