RSNA2015 その10 シカゴ大学病院でDWIBSのスキャンを実践!

RSNA中に、シカゴ大学でDWIBS撮影をしてきたので報告します。欧州では、オランダはもちろんのこと、ドイツやベルギーのいくつかの場所で撮像に臨んだことがありますが、米国は95年の短期留学中にエモリー大学で行って以来で、久しぶり。患者さんの撮像を手助けするということでとても張り切って行きました。

ホテルにピックアップしてくれたのは、Oto先生*。日本語のような苗字ですね。もともとはトルコ出身の方です。愛車はLexus ES350。”Thank you for using Japanese car.”といったら”Of course! Thanks for Japanese engineering” と話してくれました。僕も昔、ES300(Windom)を乗っていたことがちょびっとあり、懐しい気持ちでした。

01 DrOto *Oto先生:Dr. Aytekin Oto (アイテキン・オト) みなさんはアイテックさんと呼んでいるようです。

米大学のキャンパスは広いですが、このシカゴ大学もその例外ではなく、敷地内に入ってから病院まではクルマで数分はかかります。到着して駐車場近くの渡り廊下から撮影。中央奥が2年前に完成した新病院、左が外来棟、右が小児病院です。半分以上が富豪の寄付で建ったとのことでした。ありがたや。億万長者になってそういうことにお金を使うのは気持ちがよいことでしょうね。

02 Hospital

03 Corridor途中の廊下は、さすが新病院だけあって写真や絵が飾ってあり、とても素敵でした。

MRI室に到着してみると、技師さんがちょうど前の患者さんをガントリー(患者さんが入るトンネルのこと)に入れるところでした。米国の患者さんはこのように極端に大きな方が多く、このためにgantryの直径の主流が、60cm→70cmに変わりました。10年ぐらい前にシーメンスが”cylindrical open”というコンセプトで出したらものすごく受けて、あっという間に普及しましたね。それにしてもコイルの感度がきつそう・・ (^^;)

04 PatientMR検査の様子。患者さんのサイズがかなり大きいことが印象的。

 * “cylindrical open: 円筒形状だから本来は”open”とは言えないけれどそういう風に表現した。これはネーミングが大変上手でした。

 

操作室で記念撮影。中央のDonovanさんという技師さんは、MRI室きっての優秀な技師さんということでしたが、”Really exciting!” と言ってくれて、最後までものすごく長い時間つきあってくれました。やっぱりこういうのは情熱が一番大切ですからね〜うれしかったです。

05 MrDonovan左:筆者。中央:Donovanさん。右:アイテック(オト)先生。

ちなみに反対側にはGEの装置が入っていました。サンタさんの右の方に「STOP」って書いてあるので、「これはなに?」って聞いたら、「サンタさんもここでSTOPしなくてはいけない」って意味だそうです(笑)

07 GESantaさんも磁性体をチェックしない限り、MRI室内には入れない(笑)


それで、いよいよ患者さんを〜となったのですが、なんと雪のためにどうやら来ないらしい。残念でしたが、折角の機会。若手の技師さんがvolunteerになってくれるということで、早速撮影に臨むことになりました。

06 Volunteerボランティア撮影に変更

浜松のすずかけセントラル病院(松下技師)から急遽、電子撮影リスト(Examcard)をインターネット経由で送ってもらい、そのプロトコールが米国で走ります。これってかなりエキサイティング。撮影自体はとてもうまく行って、通常30分で終わるところ、若干の試行錯誤もいれて35分で終了しました*。

*30分検査内容:Ingenia 3.0T用 /がん経過観察用 簡易版プロトコール(検査時間全体で30分、理論スキャン時間は合計18分程度)
  • 3 stations X COR DWIBS (b=999, direct coronal scan, 2m25s/station)
  • 3 stations X COR FSE T2WI(breath hold)
  • 3 stations X TRA FSE T2WI (breath hold)
  • 3 stations X COR FSE T1WI(breath hold)[key technique because this is done with breath hold]
  • 3 stations (Whole Ppine) X SAG STIR
  • 1 station X COR GRE FS-T1WI(breath hold)for whole abdomen [for analysis of intestinal contents]

やっている間に、全身のDWIBSが上から順番にでてくるわけですが、すごく喜んでくれました。せっかくなので動画をとりました。Oto先生が、Chairmanと電話で話している内容、ぜひきいてください!本当にうれしいです。

/ 短い撮像時間なのに信じられない画質 / あとでがんのスクリーニング法としてがんセンターの人と話しあいたい / 患者さんが来なかったから親切な技師さんがボランティアになってくれた / ・・といったようなことを話してくださっています。

ところがフィリップスの純正コンソール作成で重大な問題が。

それで、出た画像がこれです。

スクリーンショット 2015-12-05 6.23.16

実はね、フィリップスのスキャナーはとても好きなのですが、この間のRelease 5で信じられないような改悪がされてしまって、撮影台(on console)で後処理をするとものすごくボヤけた画像がでてくるのです。これは本当に残念ですね。OsiriXで処理した画像とくらべてみてください。とんでもないでしょう、これ。突然改悪されて、いまだに1年以上こんなことが続いているのです。

スクリーンショット 2015-12-05 7.32.45


左:R.5のコンソールで作成したMIP画像。右:OsiriXで作成したMIP画像。R.5が搭載されたコンソールで作成するとこんなに元の画像の品質をダメにしてしまいます。右はOsiriXで作成しましたが、R.4以下のコンソール、EWS、ISPどれでもこのようなもともとの高画質が得られます。※なおこれは、DWIBSだけでなく、MRAでも同様です。とんでもないことですよね。

救世主はEWSのはずだったが・・・

現場の人は、DWIBS法でWB-DWI(全身拡散強調画像)が得られたことに感動してくれたけど、僕はまったく満足できないので、「EWS(Extended Work-Space)かISP(Intelli-Space Portal)はありませんか」と聞きました。(EWSは古いバージョンの、またISPは新しいバージョンのフィリップスのWorkStationで、本来は、標準コンソールで出来ない高度な処理を担うものです)。そうすると、EWSはあるけれど、別棟にあるとのこと。

米国の病院ですから、そこまで行くにはかなりの距離があります。業務中ですし、普通なら「じゃあまたあとで」となりますが、それでも皆興奮してくれているので、とにかく見たいということで、連れて行ってくれました。

08 EWSEWSのバージョンが古くて、MobiViewができませんでした・・・(TT)

そうしたら、なんとなんと、EWSのバージョンがとても古くて、MobiView(いくつかをくっつけて、全身の画像を合成する機能)などが使えないのですね。これには本当にがっかりしました。

09 dissapointedDonovanさんもがっかり

というわけで、いささか不完全燃焼になりましたが、帰国後に画像を作成してお送りすることにしました。さらに、来年2月か3月に、シカゴ大学で先生方を集めた臨床の講演を、また技師さんを集めた技術講演をしよう、ということで盛り上がりました。米国でも実際に導入されることで、はじめて世界的な意味合いで普及したと言えると思いますので、これは頑張ります。同様に、発展途上国でもできるようにがんばります。

[追記] 2015.12.5 9:00am  片平和博先生からの情報によると、Release 5.2ではこの問題はFixされているそうです。片平先生のところは日本で一番早く、先週upgradeされました。いままでのPhilipsに対する働きかけではR.6にならないと対処できないような返事でしたが、本社工場の方で急いだようです。この情報はまだ日本のPhilips担当者も詳細を知らないようですが、片平先生に電話をして、間違いなく直っていることが確認できましたので、おそらくupgradeで問題が解決することになりそうです。

 

DWIBSは繰り返し検査が出来る

ちなみに「PETと比べてどうなの」とまだ聞かれます。それに対しては「Overallではだいたい同じ。どちらにも得失がある」としか答えようがありません。リンパ節転移の診断は、PETが勝るでしょう。しかしそれは実は、がんの患者さんの初回診断だけを述べているのです。実際にあなたが癌になったら、初回はともかく、それから長い治療が始まります。

DWIBSがPETに比べて明らかに優っているのは「経過観察」です。PETはMRIに対して6倍以上も高価。以下の写真の検査、すべてあわせてPET1回分の医療費です。「PETでの経過観察」を研究している研究者もいるけれど、考えてもみてください。例えば3人家族の家賃補助に10万円だしてくれる企業はいるでしょう。その増額を希望したとして、16万だったら交渉の余地があるかもしれないけれど、60万と言って、それが現実になりますか。それが可能になる日は、未来永劫に来ません。もしできたとしても非常に限られた症例(患者さん)に行えるだけです。お金がかかり過ぎるので到底無理なのです。

DWIBS follow up

私には皆さんにも問いたいです。「あなたが進行がんにかかったら、弱った身体に毎回、身体が熱くなる造影剤(私は2回経験しました)を打って造影CTを毎回取りたいですか。それ(CT)は頻度を落として、代わりに、造影剤を打たず、被曝もせず、寝ているだけの検査にして欲しくはありませんか」と。あるいは、「こんな風に、きめこまかく治療をしてもらいたくありませんか」と。
経過観察はDWIBSの独壇場です。この視点に関しても、ぜひ発信していきたいと思っています。


 

帰り道では、シカゴ科学博物館のそばを通り過ぎたのですが、ちょうどロボット展をやっていて、それがみたかったなぁ。

10 Humans Welcome”Humans Welcome” – この響きとっても良いです。

帰り道はすこし天候が回復してきましたが、Oto先生が、「シカゴは皆冬しか来ないけれど、夏に来ると、このミシガン湖畔のbiking(サイクリング)は最高だよ。ずーっとサイクリングロードがあるよ」と教えてくれました。一度は来てみたいです。

11 lake Michigan

遠景にミシガン湖を臨む。手前が自転車道。とても長い距離を走れるらしい。センターラインがついていたので走りやすそうでした。

以上、シカゴ大学でのDWIBS撮影の報告でした。Oto先生は、RSNA中毎日講演があり、この日も1:30, 2:00, 5:00のRSNA会場での会議と、3:00からの講演の合間をぬっての大学行き。本来なら午前は読影をしなくてはならない時間でした。ご苦労さまです。

スクリーンショット 2015-12-07 8.34.51

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tarorin東海大学工学部 医用生体工学科 教授

投稿者プロフィール

MRIの撮像・フィルム焼き・患者導入に従事していた経験を活かし、企・技・医の中間の立ち位置を大切にしています。モットーは研究結果を中立的に判断すること、皆で研究成果を愉しむことです。

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