Siemens CT〜Force 3D Camera
Siemens のCT本体のことは余り聞かないで来てしまったのですが、CTに付加されたこの3Dカメラは大変よろしいと思いました。
いまどの会社でも「AI」がキーワードになっているのですが、画像取得時のSNRの向上や、アーチファクトの低減、また病変の検出、サイズ計測などの方向性が多く見られます。そのなかにあって、撮影の自動化支援に用いたのがこのカメラ。
↑青矢印の位置に可視光カメラ、赤矢印の位置に赤外線カメラが搭載されています。また白矢印はコンピュータで、演算が多いからなんでしょうか、ここに必要なようです。アームで支えられていますが、実際のCT室では、天吊りにできるとのこと。
↓下から上を見上げるとこんな風になっています。
可視光カメラで身体の形がわかり、かつ赤外線カメラで、位置(身体の表面の高さ)が把握できます。
このため、「頭」とか「腹部」などのアイコンにふれるだけで撮影範囲を決めたり、
テーブルの高さを、撮影対象がガントリーのiso-centerにくるように自動設定できるとのこと。image baseで細かく設定したい人は嫌だろうけれど、初心者が操作するにはもってこいの機能ですね。
ちなみに、AIが引いている点線の描く曲線が、Headの下端とAbdomenの下端で、向きが違う(上に凸と下に凸)なのわかりますよね。本当に高さを読んでいるのがわかります・・・。
◆動画で確認
ちょうど、東海大学のホープ、渋川くんが来たので、モデルさんになってもらいました (^^)
AI Solution(の一例)
今年のブースはどこにいっても、モダリティ(CT, MR, PET, US etc)の柱のほかに、こういった「AI」という柱が立っています。それも一本ではなくて複数立っているんですね。それだけどこでもAIベースのなにかをしています。
そのなかで、この展示がいいなぁ、、、と思ったのを紹介します。
これは前立腺がんの人の、総合的な診断・治療ヒストリーを示しています。ちょっと見にくいと思いますが、、、
↓上段には、このように「時間軸上に」MRIとか、Biopsyを施行した記録がなされています。ただの「時系列」だと、一行一行に羅列しているから、各々の検査や治療がどの程度お互いに時間軸上で離れているかがわからないのですが、これはわかるんです。臨床医の先生が、スライドで治療経過を示すときのやつ。そう、これが欲しかったんです。 上図(↑)には、PSAレベルとか、グリソンスコアも、「時間軸」で示されているので、病状の変化がすぐにわかります。
そして、「MRI」をクリックすると、MRIで癌があると判断された領域が示されます。
↓そのときのレポートも表示されます。
MRI後、1ヶ月以内にBiopsyを行なっていて(つまりBiopsyにMRIはきちんと先行しることが分かり)、Biopsy の結果を見ることもできます。MRIはoverdiagnosisしているのか、ふむふむ。
Bone Scanではこんな感じか・・・といった具合です。
ちなみに、EORTC(2014)ではBone Scanはもう第2選択でしかない(Table 2)ので4年時代遅れで、ここは第1選択となっているWhole Body DWIだとうれしかったですが、とにかく臨床的な流れがすぐにわかります。
◆患者さんの病状がすぐに伝わる
僕らが読影するときには、臨床医に(検査と読影のための)「依頼票」を書いてもらいますが、これはいろいろな問題を含んでいます。
まず、放射線科医と臨床医のコミュニケーションがとれていて、臨床の先生が放射線科医を知っている(認めている)場合は、それなりに分かるように書いてくれます。友達だったら、しょぼいの書かないからです。
しかし、コミュニケーションがないときは、ほとんど記述がないこともあります。「検査やればそれでいい」と思っている臨床医もいます。
そうすると「知らない」患者さんのことを電子カルテでみなくてはなりませんが、1分で把握できるはずもなく、かなり時間がかかります。10分かけるのはなかなか難しいので、結局は臨床情報が不十分なままで読影を開始せざるを得ません(読影がたくさんあるから)。
臨床医にしてみても、忙しい外来などでいちいち依頼票を長く書くことは、たとえその気持があってもなかなかに無理なことので、情報のやりとりができないんです。
こうしたディスプレイでささっと状況がわかれば、臨床医と放射線科医の間の依頼票は、僅かな記述で機能します。たとえば、「前立腺がん、骨転移疑い」というだけでわかります。ディスプレイをみればみんな書いてあるからです。
だからこれはとっても良い設計だと思います。このシステムには、実はAIはほとんど使用されていません。むしろ「従来のワークフローの改善がなされた」ということなのですが、こういった開発も「AIの掛け声」が前に進めてくれています。その意味では良いことだなと思いました。
ちなみに、「MRI」をクリックしたら、読影医や撮影技師の写真も出て欲しい。主治医の写真も出て欲しい。お互いに知っていて初めて患者さんのために役に立つと思います。
僕は、臨床医(小児科)で始まって、MRIが導入されたときに、技師さんと一緒にかわりばんこで仕事をして、その後、放射線科医をしたので、すべての職種を経験したようなものですが、その経験からいくと、「お互いに無理解がすごい〜」と感じることが多々ありましたので、こういったシステムがあると、色んな意味で患者さんのためになるなぁ〜と思いました。
◆撮影枚数が増えるとエラーが増える
いま、放射線科医は、なぜか知らないけれど、読めば読むほど、病院に加算がつくことになっています。
やれる量を超えても無限に加算がつくというのは誰が考えてもおかしいですよね。当たり前ですが自然とおざなりになります。
実際に以下のように、読影時間が50%減ると(つまり読影するべき人数が2倍になると)、エラーが17%増えたることが報告されています。
これに加算をつけるんですから、日本の行政はどうなっているのでしょうか。
むしろ、適正読影数を読んだときに一番病院に収入が増えるようにしなくてはならないですよね。上向きの放物線みたいな点数にするのが正しいです。
まあ行政の問題は置いておくと、シーメンスでは、モダリティ(左側)がどの企業のものであっても、真ん中のAI-Rad Comparinonが取り持って、、
肺の単純CTを撮影したなら下のように自動的に心臓の冠動脈の石灰化を検知してその程度を示したり、
大動脈の太さを自動的に測って、動脈瘤がないか調べたり、
肺の線維化がないかな〜って調べてくれたり
それぞれの計測値が表示されたり
、、、といったことを、左の画像を見ながら、右側にピピっとでる、という将来を考えているようです。
最後は、コミュニケーションですね。このあたりは複雑な問題を含むので、このレポートではこの辺にしておきます。いろいろと面白い経験ができました。
コメント
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コメント (2)
RSNAレポート大変興味深く読ませていただきました(番外編の情報も大変有益でした!)。可視光カメラ・赤外線カメラでの体表面合わせは、放射線治療分野でも導入されつつあります!体表面合わせの精度が気になるところです。
コメントありがとうございます。励みになります。
シーメンスの説明では、「たとえ毛布をかぶっていてもかなり正確」ということでした。実際にはある程度の誤差は含むことと思いますが、このあたりの改良は日々進むことと思います。