まずは何はともあれ画像を見て下さい!!
今回は約15~20秒の息止めで、非造影肺血管(肺動脈&肺静脈)を撮像する方法をご紹介します。
正常ボランティア画像と臨床画像を提示します。
肺動脈はかなり末梢まで描出できていると思います。また、シャント後の血流の速い静脈も描出されています。臨床画像に関してもアーチファクトの影響がでやすい横隔膜直上&心臓近傍にも関わらず病変部の検出が可能です。
はじめに
肺動脈を非造影で撮像する場合、メーカーによっていくつか撮像方法があると思います。
例えばIFIR(GE)、Time-SLIP(Canon)やCUBE(GE)の収縮期、拡張期差分法などが挙げられます。これらは、呼吸同期や心電図同期などを使用し撮像を行います。しかし、1.5Tでは安定して画像が撮像できますが、3Tを使用すると図のように肺野の磁化率の影響が大きく、撮像困難な場合も少なくありません。
なぜ肺血管の撮像は難しい?特に3T
理由として考えられるのが、
・磁化率変化が大きい
・心臓・呼吸により絶えず動いている
・撮像がFIESTA系(GE)なので磁化率変化に弱い
・呼吸同期が必要
・心電図同期が必要なシーケンスもある
・撮像時間が長い
などが考えられます。
これらをふまえて、
・3Tでも撮像できる
・息止めで撮像
・FIESTA系以外での撮像
・簡単な計画と撮像方法
・速くて綺麗
以上を目指した撮像条件を考えました。
撮像シーケンスはTRICKS
TRICKS(GE)は主に造影4D検査で使用されるシーケンスです。これは、Elliptic Centric orderの3D-SPGRで高速&高分解能を実現できる撮像です。他のメーカーでいうと「TWIST、Keyhole」です。これを単純の撮像で使用します。一般的にこれらは多数回の撮影をするわけですが、通常は連続で撮像するところを1回で止めてしまえばよいのです。この撮像シーケンスの長所は、「撮像時間を短くできる(20秒以内)」と「バンド幅を可変させるとTE≦1msの撮像が可能になり磁化率変化に強くなる」2つです。短所は、「脂肪抑制が使えない」こと、また「SATが使えないので動静脈の選択が不可」であることです。しかし、動静脈選択は不可でも、最初の画像を見てもらうとわかるように動静脈のコントラストはついています。また、動静脈奇形などの撮像の場合は両方撮像できる事が利点になっていると思います。
撮像方法は簡単!!
撮像は、Coronal & Sagittalで計画するだけ!!呼吸・心電図同期などの設定はありません! TRICKSはSPGRなので血液のinflow効果を利用する事を意識するだけです。以下に計画方法と参考条件を示します。
(装置やバージョンによって若干条件は変わります)
この条件で当院の場合はTE=0.9msに設定できます。
FA(Flip Angle)については好みが分かれると思いますが、以下の図をみるとFAが5~7度あたりが動静脈のコントラストもついているので、当院では5〜7度の付近を使用しています。
応用はできる?
1.5Tでも撮像できますので以下に撮像条件の例を提示します。
また、肺血管以外にも使用する事もできるので応用範囲は広いと考えています。
ライター紹介
岡本 淳
(JCHO徳山中央病院 放射線部)
ローテでくるくる回って、6年ぶりにMRIに戻ってきました。MR歴は3年です。
MRI好きの方々といっぱいお話してみたいので、学会や勉強会などに積極的に参加したいと思っています。
「好きこそ物の上手なれ!」もっともっとMRI好きになって、もっともっと上達していきたいです。
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