アーチファクトは友達:片手で両手?高分解能、欲張り撮像

編集長の高原です。MR学会でお目にかかった、新別府病院の加藤 広士さん(前記事参照)に、抜群のアイデアの投稿をいただきました! これこそ目からウロコのすばらしい撮像技術です〜。Sagittalもできちゃうんだ!


背景

みなさん突然ですが両手,両手関節MRIってどう撮っていますか?仰向けで大腿部の上に固定具を作って両手を並べて撮っている施設が多いのでなないでしょうか。

その撮った画像にみなさん満足していますか?多分満足していないと思います。ただ現状では仕方ないと諦めてしまっているだけですよね。

そこで

ウルトラCの裏技を使っての両手高分解能撮像法を紹介いたします。この撮像法は2015年 Signa甲子園でGE Application Selection賞を頂いたものです。

小さいFOVを使って「両手」を撮影する

通常は両手が全て含まれるように広いFOVにしなければなりません、すると当然空間分解能には制限が出てしまいます。そこで小さいFOVを使って両手を含める撮像法です。こんなふうに高分解能で撮影できます。

ではどうやって撮像したかと言いますと、左右の手を段違いにすることによって折り返した手が重ならない様にセッッティングするのです。

そしてコロナルでは右手にFOVを合せスライス枚数は両手を全て含めるようにプランニングします。当然右手は普通に描出されます。では左手はどうなるかと言いますと、左手も励起されているので当然信号は出ます。 しかしエンコーディングで決定したFOV(つまり表現できる位置とサイズはこの範囲になるので)左手はここに重なってくるのですが、そこには右手はないですから左手も重ならずに描出されます

アキシャルもこのように高さ方向で左右が入るように位置決めすると、当然右手はこのように描出されます。

そして左手は先ほどと同じように決定したFOVに描出され 両手の高さが異なるため左右の手が重なることはありません

ただしこの撮像法で必ず守らなければならない決めごととして 折り返しを利用するのでPhase encodeは必ずR-Lにして、No Phase Wrapは使用しないこの2点は必ず守らなければなりません 。

またこの他にも撮影にあたり注意点があります。まず脂肪抑制ですがchessは当然使えませんがSTIR, Dixon法のIDEAL,LAVA-FLEXはOKです。

但しIDEAL,LAVA-FLEXでは計算エラーが起こる可能性がゼロではないので画像確認をする必要があります。次にパラレルイメーニングですがGEには実空間で展開するASSETとk-spaceで展開するARCがあります。キャリブレーションデータを使うASSETでは展開エラーが生じるのでNGで、ARCはOKです。

次に左右の段差があり上からは固定し難いので毛糸の手袋とマジックテープをつかって固定します↓。

また左右を正確に位置決めするために消しゴムを置き基準にすることにより正確なポジショニングが可能となり、なおかつR-Lマークも兼ねます。これらのことに注意することにより両手高分解能撮像が可能となります↓。

おまけに

アキシャル、コロナルは可能ですが流石にサジタルはPhase encodeをR-Lに出来ないので通常は不可能だと思いますよね。しかし諦めたくないとの思いが通じて唯一撮像可能なシーケンスを見つけました。それはCUBEです、非選択励起法(Whole volume Excitation )によりスライス方向の折り返しを利用することでサジタルでも可能となりました↓。これが今回一番気持ちよかったです。

最後に

MRIって面白いですね。何年やっても次から次へと分からないことが出てきてそして解決した時の快感、たまらないですよね!

そのためには情報を単に言葉として覚えるのではなくしっかり理解してイメージしましょう。そうすればひとつの情報が何倍にも広がりいろんな発想が出てくると思います。皆さんもMRIを楽しみましょう!

 

国家公務員共済組合連合会 新別府病院 放射線科  加藤 広士

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