RADっていいとも 素敵な仲間とのペンリレー (6) 山本晃義

題名 『多芸は無芸!?私の心は何処へやら…』

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社会医療法人共愛会 戸畑共立病院 画像診断センター 山本晃義

北福島医療センターの丹治さんよりご紹介していただいた山本晃義と申します。私のような騒々しい脳の作りとは全く違って、学会でいつもご活躍されている丹治さんの豊富な知識や冷静さにはいつも敬服しております。

現在、社会医療法人共愛会 戸畑共立病院 画像診断センターに勤務しております。この病院に勤務して早くも20年が経ってしまいました。診療放射線技師になって26年…。この状況、どこかで見覚えがありませんか?初めて“Radっていいとも”のwebを見たときのことです。私と横浜栄共済病院の高橋さんはほぼ同じ年齢で、技師歴も同じ、しかも現病院の勤務歴までも同じなのです。ちょっとした驚きでした。

そして、私にバトン渡していただいた丹治さんもほぼ同じ年齢!不思議な巡り合わせですね〜。

自己紹介

さて、これより私の趣味と実益を兼ねた自己紹介をさせていただきます。私の最近の趣味は、もっぱら体を動かすこと(特にランニング!来春ハーフマラソン出場予定!)と音楽を聞くことですが、ギター演奏や作曲も大好きです。机の横には常に愛用の「マーシャルのアンプ」と「ギブソンのレスポール」を置いていますので、いつでもギターが弾ける状態になっています。この大好きな音楽を『エサ』に(!?) 家での仕事を頑張っています。後もう少し頑張れば、ギターが弾ける!頑張れ!という感じです。

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私がギターを始めたのは15才の頃です。現在でも結婚式等で弾き語りやバンドなどをやっていますし、時々、バンド仲間を集めてコンサートも開いたりして、音楽を楽しんでいます。最近では、B’zのギタリスト松本氏に追いつこうと、B’zの曲を沢山コピーしています。私は一体何になりたいのでしょう?…(汗)。

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音楽をやっている方は、感じていると思いますが、撮像時の音は音楽ではあり得ないくらいの不協和音ですよね。バンドの練習では、私は不協和音に聞き耳を立てる鬼!と化します。「ベースの“レ”が半音高い!」「ピアノのソロの“ラ”はオカシくない?そこは“ラの♭”でしょ!」という具合に、バンドの練習では僅かな不協和音にも違和感を覚えてしまうぐらいなので、MRIの撮像中は、TR、TE、TI、スライス枚数やシーケンスがいつもと違えば、直ぐに見破ってしまいます!「それってsaturation pulseが入っていないのでは!?」という感じです。でも、時々外してしまって、若い技師から睨まれます(笑)。

実は、他にも趣味はいくつかありますが、悲しいかな、何れも人に自慢できる程のものではありません。「多芸は無芸」とは良く言ったもの。まさに自分にぴったりの言葉だと心から思います。

 超音波検査と3Dワークステーションとの出会い

1988年に熊本大学の診療放射線技術学科を卒業したのち、初めて入職した病院で、内科の先生から超音波、胃透視、大腸透視の検査を教わりました。それから約7年後、現在の病院で超音波検査を中心に検査するようになりました。現在でもMRIよりも超音波検査の方が得意であることは間違いありません!やはりMRIは、私にとって超難解な検査技術だと思いますし、できれば避けて通りたいところですが、今更何をおっしゃる!と言われそうですね。時は過ぎて今からおよそ15年前、0.5T MRI装置(東芝:FLEXART)と初めて対面を果たすこととなりました。しかし、当時は全く興味がなく、CT検査が楽しくて仕方ありませんでした。超音波検査ではとても苦労していた消化器の病気が手に取るようにわかるのですから。しかも、その当時、3Dワークステーションが医療現場で使われ始めた頃で、肝臓癌の術前シミュレーション用に血管の3Dや心臓血管3Dを深夜まで没頭して作成していました。

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その頃から一緒に開発に取り組んできた3Dワークステーションの開発オペレーターや関係者の方々とは、現在でも親しくさせてもらっていて、新しいソフトの開発にも従事しています。(化粧品も販売しているメーカーと言えば、どこだかわかりますね)

 MRI検査と人生の転機

人生色々あります。モダリティも色々。でも一番難しくて、想像力をかき立てられるのはMRIでしょう。先ほども説明しましたが、MRI検査に従事するようになったのは今から15年程前のことです。苦しみながら検査を覚えていたある日のこと、友人の母親が脳梗塞疑いで当院に緊急搬送され、私が頭部CTを撮影しました。残念なことにそれから1週間後にその方が亡くなられました。これは私にとって、とてもショッキングな出来事で、いつの間にか友人の母親を助けられなかったという自責の念にかられるようになりました。そこで、考えたのが「超急性期の脳梗塞をMRIで発見する!」という、とんでもないものでした。使用していたMRI装置は0.5Tですので、EPIも無ければDWIも無いという壊滅的な状況でした。というより、私のMRIの知識の方が壊滅的な状況でした。そこで素人ながら、本を読みあさって、ある答えにたどり着きました。それがFASE(SSFSE)を使った造影perfusionです。今考えてみると本当に無謀な試みでした。何せMRCPのシーケンスを造影perfusionに使おうとするのですから。東芝社の開発の方に手伝っていただきながら、何とか画像になるところまで至ったのですが、更に、これを学会で発表してみては?という話まで頂き、初めて磁気共鳴医学大会の場で発表しました。

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“FBI (Fresh blood imaging)”で悟る

それから間もなく、下肢非造影MRAシーケンス“FBI”を試す機会もいただきましたが、厳しい条件付きでした。動脈と静脈を分離して描出して下さい、とのことでした。当時、同じシーケンスがいくつかの施設で配布されていたようでしたが、結果は思わしくないようでした。私の施設は本当に最悪です。使っている私自身がMRIに関してド素人なので、逆立ちしたって何も出てくるはずがないと思っていました。当初、FBI法の位相エンコード方向“頭尾方向”に設定するよう、メーカーより推奨されておりました。それは、「血流と位相を同じ方向に設定することで、ブラーリングが血流方向に生じ、血液信号が高く描出される効果がある」と説明されていました。(後から考えてみると、この効果によって動脈に限らず、静脈も同様に強く描出されるため、動静脈分離を困難にする一因でもありました)。しかし、あの日がとうとうやってきました。ついにFBI動静脈分離(動脈血管のみの描出)手法を発見したのです。

ある日、FBI検査を行っている最中に(私ではありません!)、位相エンコード方向間違えて“左右方向”に撮像しているのを見つけましたので、注意いたしました。検査を行っていた者は、ただただ平謝りでしたが、その画像をよく観察すると動脈が全く描出されていませんでした。私は心の中で“万歳三唱!”しました。これだ!やっと見つけた!もう半泣き状態で喜びました。この瞬間、約1年間の苦労がようやく報われることとなりました。動脈が全く描出されないこと。これこそが私の探し求めていた究極の撮像手法で、拡張期(動脈+静脈)- 収縮期(静脈←これが未知パラメータ!)=“動脈”、という一般解を求めるための『Equation』パラメータの発見だったということになります。(大げさで申し訳ありません)

(Chief Editor注) いやいや、これはちっとも大げさでありません。発見とはこういうものです。FBI撮像法の真の発見者は、この間違いから現象を見出した山本さんです。なかなかこういうホームランは打てないですね!

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広大なダイヤの鉱山でダイアモンドの原石を見つけたようなもの。探しに探して、やっと発見した宝物!『発見しようとする“目”で見なければ、本当に欲しいものは見つからない』ことを悟りました。よほど運が良くない限り、ただ闇雲に「何か面白いこと見つからないかな〜」ではたいしたものは見つからないのでしょうね。

 工学の世界へ再びダイブ!?

50歳を目の前にして、次は何を探そうとしているのか、自分でもよくわかっていません。(皆さん、くれぐれも真似をされないように)2012年の秋、6年間かけてようやく国立学校法人九州工業大学大学院博士後期課程 機械知能工学科知能制御工学コースを修了して、人工知能、ニューラルネット、画像計測等の情報処理技術を習得しました。今は、赤﨑勇先生,天野浩先生,中村修二先生の2014年ノーベル物理学賞受賞を心より祝いながらも、工学の世界にまた首を突っ込みたくなっています。しかし、ここでもまた「多芸は無芸」という言葉がふと頭をよぎってしまいます。心に吹きつける風とは、まさにこのようなこと。

『私の心は、いったい何処へやら…。』

 

次の人は…

島根県‐MRIといえば…、その通りです!島根大学の内田さんに次のペンリレーをお願いしています。日本放射線技術学会の学術大会では、すっかり“顔”になってしまい、その一翼を担う若手ホープの一人といっても過言ではないでしょう。また、現在では技術学会の雑誌編集委員会の企画班として、更に学術大会の演題審査にも大きく貢献されておられ、私自身も雑誌編集委員や演題審査の一員として内田さんのもとで少々足を引っ張りながら、何とかこなしている状態です。私の100倍くらい多忙な、内田さんのあのバイタリティはいったいどこから湧いてくるのか、その裏側を教えてもらえることを期待してバトンタッチしたいと思います。

(「Radっていいとも」は1回休載し、次回は12月20日土曜日の予定です。ご期待ください)

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