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- ★SATをかけたのに、そこが消えない!?~意外と知らないSATの位置ずれ~
★SATをかけたのに、そこが消えない!?~意外と知らないSATの位置ずれ~
- 2026/11/6
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<新企画>「撮像のワンポイントアドバイス」
★〜★★★までの難易度を設定し、MRIにおける基本的な注意点や撮像のポイントなどをまとめていくコンテンツです。初学者の方やローテーターの方など是非ご一読ください!
YouTubeショート動画もご覧ください:https://www.youtube.com/shorts/egRIEfb6a0U?feature=share
今回の「撮像のワンポイントアドバイス」の難易度は★ひとつです。
北里大学病院の小見正太郎です。今回は、モーションアーチファクト対策などで日常的に使用する「空間飽和パルス(Spatial SAT)」についてお話しします。
思った場所が消えていない!?
空間飽和パルス(以下、SAT)は、本撮像の前に特定の領域へ選択的にRFパルスを印加し、その領域の磁化を飽和させて信号を抑制する技術です。血流信号の抑制や、呼吸・体動に伴うモーションアーチファクトの低減など、日常臨床のさまざまな場面で使用されています。MRIfan.netでも、これまでにpresaturation pulseの幅と信号抑制効果の関係などが紹介されています。
ところが、SATを設定したにもかかわらず、「思った場所の信号が消えていない」と感じたことはないでしょうか? 例えばFig. 1aのように腹壁へSATを設定すると、その領域の信号が低下します(Fig. 1b)。しかし、設定範囲と実際の信号低下領域を重ね合わせてみると、信号低下領域が設定位置からずれていることがわかります(Fig. 1c)。
なぜ、このようなずれが生じるのでしょうか? そこで、水(water)と脂肪(fat)を封入したファントムを用いて検証してみました。
脂肪にかけたSATがずれる
GE社製のMRI装置を用いてファントムを撮像しました。 SATを印加したところ、Fig. 2に示すように、脂肪(fat)の信号低下領域は水(water)に対して左側へシフトしました。また、このシフト量は1.5 Tよりも3.0 Tで大きく、さらにSATの設定幅を広くするほど大きくなりました。加えて、SATのタイプ(Light / Medium)によってもシフト量や信号低下領域のプロファイルが変化しました。
原因は「化学シフト」
SATは、通常のスライス選択励起と同様に、RFパルスと傾斜磁場を組み合わせて特定の位置を選択的に励起(飽和)します(Fig. 3)。
ここでポイントとなるのが「化学シフト」です。 水と脂肪の共鳴周波数の違いは、傾斜磁場が印加されることで空間的な位置のずれとなって現れます。その結果、SATで狙った位置と、実際に信号が抑制される位置との間に乖離が生じます(Fig. 4)。つまり、「SATを設定した場所 = 実際に信号が消える場所」とは限らないということです。
化学シフトによる位置ずれ量は静磁場強度に比例するため、1.5 Tより3.0 Tのほうが大きくなります。また、SATの設定幅を広くするとシフト量自体は大きくなりますが、設定幅に対するシフト量の割合(相対的なずれ)は大きく変わりません。これは、同じRFパルス帯域(BW)でより広い領域を選択するためにスライス選択傾斜磁場の強度が小さくなり、周波数差による空間的な位置ずれが拡大するためと考えられます。
なお、Fig. 2で示したようにSATのタイプによってシフト量やプロファイルが変化しますが、各タイプの詳細なパルス仕様はブラックボックスであるため、今回はこれ以上の深掘りはできませんでした。ただし、装置メーカーやソフトウェアのバージョンによっては、化学シフトによる位置ずれが生じにくいSATが実装されている可能性もあります。まずは自施設でお使いのMR装置において、SATがどのような特性を持っているかをファントム等で把握しておくことが大切です。
SATのその他のTips
MRIfan.netの過去記事でも触れられているように、SATの設定範囲と実際の信号抑制範囲、およびそのプロファイルは、装置メーカーや機種、バージョン、SATのタイプによって挙動が異なる場合があります(Fig. 5)。 あらかじめファントムや臨床画像でその傾向を確認しておくと、「思ったよりアーチファクトが消えない」といったトラブルの際に原因を特定しやすくなります。
最後に
SATは古くからある基本的な機能ですが、実は「設定した場所」と「実際に消える場所」は必ずしも一致しません。 特に水と脂肪の化学シフトを意識すると、1.5 Tと3.0 Tでの差異や、SATの設定幅を変えた際の挙動も明快に理解できるようになります。
モーションアーチファクト対策を行う際は、SATを「オンにするかオフにするか」だけでなく、「どこに、どのくらいの幅で設定するか」という空間的なズレまで意識してみてはいかがでしょうか。
ライター紹介
北里大学病院 小見 正太郎(こみ しょうたろう)
20年近くMRIに携わっていますが、まだまだわからないことだらけで日々勉強中です。先輩や同期・後輩に恵まれたおかげで、忙しい毎日ですが昔と変わらずMRIを楽しむことができています。MRIを通じたいろいろな方との出会いを楽しみにしています。

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