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細血管・穿通枝の非造影MRA『Perforator Visualizing TRiggered Angiography Non-Contrast Enhanced(PerV-TRANCE)MRA』
はじめに
今回のお話はGyro cup 2022で発表した細血管・穿通枝MRAについてです。使用した多くの方から高い評価を頂きました。使用者からの不便の声を受け、改めて『PerV-TRANCE』という名称をPhilipsの公認を得て命名しました。穿通枝まで可視化出来るMRAという意味です。まずは画像をご覧ください(図1)。
では、これらの画像を考案するに至った背景から撮像のポイントまで説明させて頂きます。
背景
癌の広範な外科的切除は著しくQOLが低下するため、形成外科医による再建術が必要になる事があります。血管柄付き遊離皮弁の手術では、皮膚を栄養する穿通枝の正確な位置と解剖学的な変異を予め知っておく必要があります。
造影MRAには様々な手法が提案されていますが、その対象は虚血性疾患の診断を目的とした主幹動脈であり、穿通枝のような微小血管は描出困難です。これを受けて、1mm以下の穿通枝を描出できる非造影MRAシークエンスの開発に取り組みました。
撮像のポイント
図2にシークエンスチャートと腓骨動脈穿通枝用の典型的なパラメーターを示します。
脈波同期のT2prep併用水選択励起Multi-shot Gradient Echo Planar Imaging(MSG-EPI)になります。紙面の都合上、詳細は省略しますが、最重要パラメーターは空間分解能になります。
造影MRAではコントラストが高いため、パーシャルボリュームに負ける事はありませんが、PerV-TRANCEはコントラストが造影MRAに比較して弱くなるためパーシャルボリュームの影響を無視できません。空間分解能を低く設定することが、描出不良の最も一般的な原因です。腓骨動脈穿通枝の血管径はほとんどが1mm以下なのでvoxel sizeは0.7mm-iso収集(0.35㎜再構成)と、高空間分解能に設定する必要があります。
TFE factorを10、EPI factorを9にすることで、1心拍当たり90lineを充填する事が出来るため、これだけの高空間分解能でも、7分43秒と現実的な時間で撮像が可能です。
Trigger delayは基本的にshortestで問題ありません。高心拍や不整脈の場合にはTFE factorを小さくしてshot durationを短くし対応します。
虚血性疾患への応用
図3に発作性心房細動を有するASO症例を例示します。
不整脈の影響でBASS-TRANCEでは診断不可能な画像になってしまいましたが、Perv-TRANCEでは高度狭窄(赤矢印)を正確に描出できています。本シークエンスは脈波同期を併用していますが、そのコントラストはT2値を反映しているため、血流への依存度が低く、不整脈の影響を受けにくいメリットがあります。
図4に血管攣縮症例を例示します。
nTRANCEでは血管攣縮により右下腿のinflow効果が不十分で描出が不良でしたが、Perv-TRANCEでは狭窄がないことを明確に判断できます。主幹動脈を対象とする場合には1mm-iso収集(撮像時間3分程度)でも十分と思われます。
おわりに
この手法は多様な部位に適用可能で、1.5Tの旧型装置でも実施できます。EPIを併用しなければSiemens社製の装置でも同様の画像を取得可能です(図5)。さらに、不整脈にも強く、虚血性疾患にも有用です。
図6にExam cardとText fileをダウンロード可能なQRコードを提示します。是非ダウンロードしてお試し下さい。
また、PerV-TRANCEは英語論文としてPublishされておりますので、併せてご確認いただけますと幸いです。
JSRT非会員でもリンク先の下部にて、Supplementary informationとして原画像が動画で視聴できます。
Shigenaga, Y., Osaki, T., Murai, N. et al. Identification of peroneal artery perforators using non-contrast-enhanced T2prep multi-shot gradient echo planar imaging MRA. Radiol Phys Technol (2024).
https://doi.org/10.1007/s12194-024-00799-6
ライター紹介
兵庫県立がんセンター 重永 裕(シゲナガ ユタカ)
MRI専属12年が経過しようとしています。MRIの話題をツマミにおいしいお酒が飲めます。
最近は身に着けたMRI技術を如何に後輩たちに伝えるかを常に考えていますが、どんどん新しい技術が出てくるのがMRIです。まだまだ後輩達に第一線を譲るつもりはありません。
学会等で見かけた場合には是非声を掛けて下さい。MRIの話題で美味しいお酒をご一緒しましょう!
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