月経随伴性気胸とは
子宮内膜症性気胸とも言い、閉経前の女性が生理の前後に発症する特有の気胸です。これは、肺や横隔膜に子宮内膜症があり、生理の際に穴が開き空気が胸腔内に入り込むことで気胸を発症します。気胸は肺が長く痩せている男性の多くに発症しますが、女性の場合にはこの月経随伴性気胸を疑うことも必要です。
症例
40代・女性。検診のX線写真にて気胸が見つかり胸部CT検査を施行したところ、右横隔膜および胸膜に病変を認めました(図1)
(図1)
過去に気胸と診断されたことはありません。しかし、以前より月経時に右胸痛が出現しては1週間以内に改善するというエピソードを繰り返していたこと、また過去に子宮内膜症の診断を受けたことがあったことから月経随伴性気胸を疑いました。コンプライアンスなども考え、フォローアップにMRI検査を行うこととなりました。
UTE(Ultra short TE)-MRI
今回、バージョンアップに伴い当院でも使用可能となりました、UTE シーケンスを用いて撮像を行いました。気胸発症時のCT所見同様ブラ・ブレブは認めず、発症11日後のMRIでは気胸が改善傾向であること、さらに23日後では治癒していることが被ばくなしに確認できました。(図2)
(図2)
UTEはRF励起パルスのすぐ後にk空間の中心から放射状にデータ収集をするサンプリング方式のラジアルスキャンを行うことで、非常に短いTEで撮像することができます。
そのため通常では信号減衰して画像上は低信号に描出される靭帯や腱などが観測でき、動きの影響もうけ難いという特徴を持っています。
(詳細はMRI応用自在第3版P186-X₂-UTE参照)
さらに、このUTEに呼吸同期を併用することで今まで描出困難であった肺野内の信号を鮮明に画像化することが可能となりました。また、3D撮像のため再構成が可能です。(図3)
下図は、発症23日後の検査において、胸膜・横隔膜境界に高信号域を認めたため矢状断再構成を行い、縦隔・肺野が観察しやすいようにウインドウレベルを調整した画像です。
月経随伴性気胸は横隔膜や胸膜に所見が多いとされますが、ここが今回の責任病巣ではないかと推測されました。(図4)
画像はMIPで‼
スライス厚1㎜で冠状断のデータを収集し、臨床医への提出画像として各断面のパーシャルMIPを作成します。
下図はスライス厚ごとの画像での違いです。適宜、観察しやすい厚さに変更することが診断への有用性を増します。(図5)
撮像条件は以下の通りです
月経随伴性気胸は、妊娠可能な女性がなり得る病気であるため、完治するまで放射線被ばくなしにMRIでフォローアップできたことは大変価値の高いものだと考えています。
また、呼吸困難な気胸患者においても呼吸同期を用いて自然呼吸下で撮像することが出きるため、今後の臨床的意義も高いと考えています。
この病気は右横隔膜に穴が開くことが多いとされています。先に示した23週後の責任病巣と推測される箇所については、実際に子宮内膜症なのか気胸時に出来た傷跡なのかは胸腔鏡画像などと比較し評価しなければなりません。いずれかの機会にご報告できればと思います。
また、今後はさらにハイレゾ化を目指すべく検討を重ねていきたいと思います。
<この内容は、第25回・画論MRI-1.5T部門で最優秀賞に輝いたものです>
筆者紹介!
松戸市立福祉医療センタ- 東松戸病院 放射線科
守屋 勝
東京都立医療技術短大(6期生1994年卒)
松戸市立福祉医療センター東松戸病院(1994年入職)
趣味 登山 釣り(バス)
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