Inhance 3D Velocityを用いた頭部造影3DT1強調画像

Inhance 3D Velocityとは

Inhance 3D Velocityとは、従来の3D-Phase Contrast (3D PC) 撮像シーケンスを改良して、撮像時間の短縮が図られた「非造影MRA」用のアプリーケーションです。下記に詳細な特徴を示します。

図のように3D PCなのでFlow ImageMagnitude Imageを同時に得ることが可能です。データ取得にparallel imagingを用いることが可能になり、実用範囲内で撮像可能になりました。Magnitude Imageは、従来法ではGRASS法(プロトン密度強調画像、T2*強調画像)でしたが、InhanceではSPGR(Spoiled GRASS)法(T1強調画像)で取得可能です。T1強調画像なので、図のようにsurface anatomy scan(SAS)が作成可能です。造影後では腫瘍を高信号で描出可能です。これにより図のように3D PCとFusionすることが可能になります。

スクリーンショット 2014-11-20 22.55.13

 通常の造影後T1強調画像(3D SPGR法)と、InhanceのMagnitude image (SPGR法)の違い

さて、話は代わって造影剤を使う検査について述べます。現在、MRIによる転移性脳腫瘍の検索では図左のように、造影後SPGR法(多くは3D)が一般に用いられています。しかし非常に小さな病変や多発性の場合は、赤矢印にあるように、造影剤により増強された血管が腫瘍と紛らわしい時があります。しかし、もともと非造影MRA用に作られたInhanceを撮影し、そのMagnitude画像を用いると、同じSPGR法であるのに、図右のように血管を抑制した画像を得ることができるのです。その理由を次に示します。

スクリーンショット 2014-11-19 20.57.46

位相分散により血管信号を抑制する

3D PC法の速度エンコード用の傾斜磁場により、血管信号を位相分散させることが可能なので、この時同時に得られるMagnitude Image(SPGR法)は血管信号を抑制することが可能になります。PhilipsのMSDEは、プリパルスとして分散用のbipolar gradientを用いますが、InhanceはPC法ですから、主シーケンス内でbipolar gradientを用います。こういった違いはありますが、位相分散をさせることにより、優れたblack blood効果が得られるわけです。

ポイントは速度エンコードパラメータであるVENC*の設定

出来る限り小さい値(10cm/sec程度)を選択します(=出来る限り大きなbipolar gradientを用います)。これは低速の血流(を)も消え易くするためです。ただしtrade offとして、速度エンコード用の印加時間が長くなるため、TRが延長し、撮像時間も延長してしまいます。動きの影響も受けやすくなるため、しっかりと固定する事も重要です。

* VENC: Velocity ENCoding(速度エンコーディング)

別の例を示します。図左の通常のSPGR法(造影後)では赤矢印に転移を疑う高信号が認められます。図右のInhance 3D velocityのMagnitude画像(SPGR法)(造影後)では、高信号は認められません。したがって、血管であるとわかります。

スクリーンショット 2014-11-19 21.04.10

今度は腫瘍の例を示します。図左のように、通常のSPGR法(造影後)で転移性腫瘍を疑う高信号が認められます。図右のInhance 3D velocityのMagnitude画像(SPGR法)(造影後)でも同様に高信号が認められます。信号抑制がないので、腫瘍であるとわかります。このように血管信号を抑制できるInhance 3D velocityによるSPGR法は非常に有用であると考えられます。

スライド3

 

まとめ

頭部造影後撮像にInhance 3D velocityのMagnitude ImageであるSPGR法を用いる事で、読影時に紛らわしい血管の信号を抑制した、3DT1強調画像が得られます。さらに同時に得られる3D PCによる、MR-Venographyと前述したSPGRを融合することで、術前情報としても有用であると考えます。

 

 

ライター紹介

JA尾道総合病院  放射線科  上中 治

上中先生

放射線技師歴は26年で、その内の後半13年間はずっとMRIに携わっています。 主な業務内容としてMRI業務全般と放射線検査全般(日直と夜勤に対応)そして医療情報技師として放射線科ネットワーク(放射線情報システム・PACS・Reporting System)や電子カルテを中心とした院内ネットワークの管理も行っています。 MRIは勉強すればするほど疑問が増えるばかりですが、やっぱり何年やっても面白いです。

Chief Editor’s Comments

Phase Contrast法は、動き(血流)により生じる位相分散を血管信号として写し出す方法です。「Bipolar gradientをかけないときの信号」から、「Bipolar gradientをかけたときの信号(動きがあると低下する)」を引き算すると、動いているところだけが見えるようになるわけですね。原理的に「造影なし」で撮像が出来る方法です。歴史的には、「(本来の意味では造影剤は不要でも)PC法にも造影効果を認める」といった報告がMR学会ではなされたりしていました。これは、「Velocity imageの造影後の利用法」です。・・・・・・その後とても長い間を経て、いま、「Magnitude image(これはbiplar gradient をかけたほうだと思われます=black blood imaging)の造影後の利用法」が考えられたことになります。GRASSとSPGRの話もするとおもしろいのですが、長くなるので省略します。50歳以上のひとは、GRASSとSPGRがでたときのことをよく知っているので、”Spoiled” の意味について、先輩に聞くと良いと思います。

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