WARP EPISODE:1/新たなる出会い

はじめまして、初投稿をさせて頂く獨協医科大学越谷病院 放射線部 大橋一範です。 今回、磁化率アーチファクトの抑制テクニックであるWARPアプリケーションについて語りたい思います。初代WARPアプリケーションではView Angle Tilting(以下、VAT)法を使用しています。

磁化率アーチファクトの効果

いま、500円玉のファントムを撮像したとします。

(1) スライス傾斜磁場で目的のスライスを選択して (2) 周波数傾斜磁場で信号を読み取るとき、磁化率アーチファクトのない状況では、(図1)のように500円ファントムの画像が得られるとします。

(図1)磁化率アーチファクトがない場合の500円玉の描出

しかし実際には磁化率アーチファクトを伴います。

つまり、(図2)のように、 (1) スライス傾斜磁場を印加することによりスライス方向に位置ずれがおき、(2)周波数傾斜磁場を印加することにより周波数方向に位置ずれがおきるわけです。

(図2)磁化率アーチファクトがある場合の500円玉の描出

VAT法の効果

VAT法では上記のうち (2)に相当する、面内の周波数方向に位置ずれした磁化率アーチファクトを低減することができます。本来ならスライス選択時のみスライス傾斜磁場を印加するのですが、信号収集時に周波数傾斜磁場を印加すると同時にスライス傾斜磁場も印加します。このため斜めから信号収集することになり、周波数方向の位置ずれのみを低減することがでるわけです(図3)。

(図3)VAT法の原理

しかし、VAT法にもトレードオフがあります。EPISODE2へ……

WARP EPISODE:2/ファントム実験

私はこの世の中のことはほとんど一長一短があると思っています。やっぱりMRIの世界でも一長一短、トレードオフありますよね。

そこで先ほどから登場している500円玉ファントムを作成してVAT法の実験をしました。自作の500円玉ファントムは円柱系のプラスチック容器にゼラチンを容器の半分入れて冷やします。半日後にその冷やしたゼラチンの真ん中に500円を置いて再度冷やします。また半日過ぎてゼラチンが固まったらこれで出来上がりです(下図)。
VAT法はパラメータ数値を設定できます。この数値が高いほど500円の磁化率アーチファクトが低減できましたが、同じ条件で撮像した性能評価ファントム画像はVATのパラメータ数値が高いほどボケてしまいます(図4)。

(図4)

これがVAT法のトレードオフなのです。でも、このボケを低減する方法があります。それは、BWの数値を高く設定することです。性能評価ファントムでBWに対するVAT法のボケの評価をしました。

図5よりBWの数値が高いほどボケが低減できることが分かります。しかし、ここにもトレードオフがあります。BWの数値が高いとSNRの低下につながるのです。ただ、BWの数値が高くになると磁化率アーチファクトの低減にもなります。VAT法がいいのかBWの数値を上げればいいのか意見が分かれるところですね。

(図5)

 

WARP EPISODE:3/SEMACの覚醒

そして…2016年12月にSkyraがヴァージョンアップされ、新たにSlice encoding for metal artifact correction(以下、SEMAC)法と呼ばれる磁化率アーチファクトの抑制テクニックが追加されました。
このSEMAC法とは何か?
VAT法はスライス方向の磁化率アーチファクトの低減が不可能でした。
しかし、SEMAC法はスライス方向の磁化率アーチファクトの低減も可能です。
具体的に説明します。図6よりSEMACの設定数値を6と仮定します。目的のスライス位置を含めスライスエンコード方向に6回ずらしながらエンコードし、重ね合わせをしてスライス方向の位置ずれを修正します。

(図6)

500円ファントムと同じようにピンポン玉でファントムを作成しえ撮影した結果を(図7)に示します。T2W画像は空気との磁化率アーチファクトによって周波数方向にもスライス方向にも位置ずれが起きています。VAT法画像では周波数方向の位置ずれが修正されていますがスライス方向の位置ずれは修正されていません。SEMAC法は周波数方向もスライス方向も位置ずれが修正されてピンポン玉に近い画像が得られました。しかし、やっぱりトレードオフがあります。

(図7)

SEMACの数値(スライスエンコード数)を増やすとアーチファクトの低減効果につながりますが撮像時間の延長になります(図8)。

(図8)

また、SEMACは画像を重ね合わせて目的のスライス画像が得られるため、スライスギャップが0しか設定できませんが、SNRが上昇します(図9)。

(図9)
(図9)

よって、撮像時間の短縮をするためにパラレルイメージングファクターの数値を上げてもSNRの低下に関しては気にしなくて大丈夫です。上記からSEMAC法の最大の利点は2つあります。①磁化率アーチファクトの低減が可能である、②SNRの向上。
本法の欠点は3つあります。①撮像時間の延長を生じる、②シーケンスがTSEのみの使用に限定される、③ギャップレス設定になるので撮像範囲が狭くなってしまう、です。これらの特徴を理解してパラメータを設定し、使用することがベストだと思います。VAT法からSEMAC法 になり磁化率アーチファクトの低減は格段に良くなっています。しかし、撮像時間の延長などトレードオフをいかに最小限に抑えてルーチン検査に対応させるのかが今後の課題だと思います。SEASON2につながったらいいなあ…

●ライター紹介

獨協医科大学越谷病院 放射線部 大橋一範
愛知県尾西市(現:一宮市)出身です。あの一世を風靡した「ワイルドだろ~」で有名なスギちゃんと同じ出身です。MRIの好きなところはシーケンスの名前のセンスの良さです。WARP,SPACE,VIBE,BLADE,FBIなど…かっこいい。私のMRIのジェダイマスターの方々に教わってどんどん進歩するMRIに喰らいついていきたいと思います。
フォースと共に。

 

 

 

 

 

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北川 久

北川 久東京慈恵会医科大学附属第三病院 放射線部

投稿者プロフィール

MRIの奥の深さにいつも悩まされています。
おそらくゴールの見えないMRIをこれからも追い続けるでしょう。

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