キヤノンMRI装置の最新バージョンを体験してきました!
いよいよ実機での実践です!
Vantage Orian 1.5T
この装置の最大の特徴は Multi-phase Transmission を搭載していることです。2台のアンプによる独立RF送信により、ムラの少ない画像が取得されます。患者開口径は71cmと広く、静音化機構 Pianissimo Zen も搭載されています。
操作性としては、プロトコール設定の自由度が非常に向上しているばかりか、頭部、脊椎、心臓、膝の検査の撮像操作を非常に効率よくアシストしてくれるため、効率よく検査ができると実感できました。
特に秀逸(再発明と言って良い)だったのは、撮像断面プラン画面で、オブリーク撮像などの断面を設定すると「どんな断面が得られるか」をリアルタイム再構成する機能です。これは “ForeSee View”(得られる画像を予見するという意味合い)と呼ばれています。例えば、膝関節の検査で矢状断を撮像する際に、前十字靭帯をきれいに描出したいとします。通常は横断像と冠状断像からスライス断面を設定し、撮像しますね。しかし、前十字靭帯は斜走するだけでなく、少し撓(たわ)んでもいますから、結果として診断が困難な断面となってしまい、やむなく再撮像せざるを得ないことがあります。そんな時、このForeSee Viewを使えば撮像断面を設定しつつ、インタラクティブに結果画像を見ることができる(リアルタイムMPR画像が表示される)のです。撮像前から結果が見えているのは大変便利です。これもITEM2019で紹介されていました。http://mrifan.net/blog/13207
今回特に興味があったのはDWIの撮像です。以下は検討時に実際に撮像したDWIBS画像です。頸胸部に渡る範囲も歪みなく、きれいに描出されていました。
私は今までに、Vantage XGVや Titan、ElanのDWIBSを見た経験がありますが、画質を良くするために補助具を使用するなど様々な創意工夫を施して撮像していました。今回Orianを使用するのは初めてですが、普通に寝台に寝ただけでDWIを簡単に撮像することができました。
Multi-phase Transmissionによる効果によるものなのか、背景信号もきれいに抑制され、大きな歪みもありませんでした。厳しい目で見てみると、頚胸部から背部にかけて少し輝度が高い部分や上腹部に見られる呼吸性のつなぎ目など少し気になるところもありますが、これは現場のオペレーターがいろいろ試して改善していけそうです。
Vantage Centurian 3T
続いて Centurianの見学を実施しました。
Centurianは最大傾斜磁場強度100mT/mを実現した研究機Galan3T ZGOを市販モデルとして販売開始した装置になります。高い傾斜磁場強度を特長とするだけでなく、近年話題となっているDeep Learning Reconstructionを製品として初めて搭載しています。製品化に伴い、キヤノンCTと同じAiCE(Advanced intelligent Clear-IQ Engine)というネーミングに統一されたようです。その他、圧縮センシング技術もCompressed SPEEDERとして搭載されていました。もちろんキヤノンのパイオニア技術である静音化機構も継承されており、静かな検査環境が確保されていました。
画像検討に関しては、はじめに上腹部のDWIを行いました。通常b800sec/mm2だとTE60msec台で収集されますが、Centurianでは非常に高い傾斜磁場能力により、なんとTE40msecでスキャン可能で、短時間でも非常に高いSNRの画像を得ることができました。また、AiCEと組み合わせることにより、スライス厚を2mmと非常に薄くした高精細条件や、加算回数を軽減した短時間撮像も容易に行うことができました。高い傾斜磁場能力がこれほどまでに画質に影響することやAiCEによるデノイズにより従来は困難であった検査が容易に実現できることを実感できました。
次に圧縮センシング技術を用いたCompressed SPEEDER(CS)を検討しました。これは、パラレルイメージング法と圧縮センシングを組み合わせた高速撮像法であり、圧縮センシングでは難しいとされる2D収集に適応されています。さらに、圧縮センシングとAiCEの併用も可能で、より自由度の高い撮像条件の組み合わせで高速撮像ができるようになっていました。
以下の画像は、前立腺の1.5mmスライスの高分解能T2強調画像(Original)です。通常ではSNRが不十分な撮像条件ですが、AiCEを使用することで、画質が飛躍的に向上しているのが分かります。また、CSを3倍速で追加してみたものは、AiCEと組み合わせることで画像劣化少なく短時間に検査することができました。CSとAiCEを併用した場合にややノイズが残ってしまいましたが、デノイズ強度は顧客の好みに合わせて調整可能とのこ
ことでした。実際にいろいろな組み合わせの検討ができる技術であり、更に現場のオペレーターによる磨き込みが期待できると感じました。
この時点で、帰りの新幹線の時間が近づいてきてしまったので、急いで那須高原駅へ向かいました。
装置を触ったのは実質半日であっという間だったので、たくさんのことを試せませんでした。
しかし、キヤノン装置でのDWIBSなどの拡散強調画像や乳房DWIBSの進化の可能性を見ることができました。また、AiCEという新しいノイズ低減技術を実体験でき大変充実した一日でした。
この時点でVantage Centurianを触ったのは研究施設以外では高原先生と私が初めてということで、大変貴重な経験をさせていただきました。
ご協力いただいたキヤノンメディカルシステムズ株式会社の関係者の皆様、ありがとうございました。
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