The best solutions need to be simple!
「造影剤を使用せずに血管の情報を得る事ができる。」これはMRIの得手であり、これまで様々の手法が開発され実用化されています。勿論このMRIfanでも驚きの素晴らしいテクニックが数多く紹介されています。あんな風に綺麗にとれたら理想的だけど・・・。
オプションが入っていないから撮れない。
ルーチンに追加して撮れるほど時間がない。
○○さんが検査しないと綺麗に撮れない。
ボランティアだと綺麗に撮れるのに。
この複雑な問題を最も簡単なテクニックで解決する方法のご紹介です。
極限までSimpleに・・・「2D-Gradient Echo」です
きっかけとなったのは胎児検査での妊婦骨盤MRA。。。
前置胎盤の帝王切開においては、いかにして出血量のコントロールを行うかが最大のポイントであり、総腸骨動脈血流を一時的にバルーンカテーテルにより遮断した状態で手術を行う事で、術中の出血量を劇的に軽減できる事が2005年に報告されました。当院でも出血リスクが高そうな全前置癒着胎盤症例に対し、手術直前にバルーンカテーテル留置を行った上で帝王切開を施行しています。その際に、たとえ高画質でないとしても、ある程度の血管情報がある事で手技の安全性を向上させ、使用造影剤の量や透視時間を極力減らす事ができます。しかし、術前のMRI検査は胎盤や胎児の状態把握が主な目的であり、MRAはあくまで追加撮像となります。まして患者は妊婦。長い時間の仰臥位は厳しい上に息止め等も困難です。
ニーズは ①安定性 ②非同期 ③短時間
どのような患者でも同じように安定して画像が得られ、息止めや心電図同期を必要とせず、短時間で撮像できなければ妊婦検査に追加する事はできません。さらにオペレーター側の複雑な操作で時間を費やすわけにもいきません。そこで、昔ながらの最もシンプルな手法に着目しました。「2D-Gradient Echo」に少しだけ工夫をして、TRとFAとConcatenations(分割数)を調整する事でIn-flow効果を最大限活用します。
【撮像条件】FOV: 320 mm, Matrix: 320 x 224, Thickness: 3.5 mm, 60 slices, TR: 60 ms, TE: 3.8 ms, FA: 45 degree, concatenations: 10, BW: 330 Hz/Px, GRAPPA: 2, Average: 1, Flow comp.: yes, Water Excitation, scan time: 1 min 14 sec.
綺麗な画像 < 価値ある画像
患者の検査負担を最小限に抑え、最大限の臨床的価値をもたらす事が理想的である事は言うまでもありません。この方法は決して綺麗な画像ではありませんが、鼠径部から総腸骨動脈分岐部に渡る血管走行と椎体との位置関係を正確に把握する事ができ、カテーテル術時のガイドとなる価値ある画像です。その他にも、鼠径部から弓部までのアクセルルート評価や骨軟部腫瘍の際の周囲血管情報も簡便に取得できます。患者に優しく、オペレーターにとって易しい簡易非造影MRAです。
図1 前置胎盤症例 (a) SSFP. (b) Original images of 2D-GRE. (c) MIP and Thin MIP images.
【執筆者】
加藤 裕 (Yutaka Kato):名古屋大学医学部附属病院
10年振りに大学病院に戻り、早4年が経ちます。僅かな工夫で画像が激変するのがMRの「魅」力ですが、私はいつもそれに「惑」わされっぱなし。
まさに魅惑の装置です。だからこそ常に勉強しないと・・・。努力が環境を変える!」 その先にはいつも素晴らしい出会いがあります。
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