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動いているものが止まっているように!!
- 2016/2/15
- GE, Other Writers, 創意工夫
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Signa甲子園2015金賞をいただいた内容です。中央が筆者
背景
皆さんの施設では呼吸が止まらない患者さんの腹部造影検査をする時、どうしていますか?高齢者の方々や全身状態の悪い方に造影時の20秒弱の息止めは大変ですし、そのまま強引に検査を進めて、不本意な画像のまま検査を終了している施設も少なくないと思います。
しかしそんな検査がこのように変わるとしたらどうでしょう?
この画像はどちらも同一症例の平衡相の画像です。この方は90歳代で呼吸は止まりませんでした。しかし右の画像はあたかも呼吸が止まっているような画像に見えませんか?
どんな創意工夫でしょうか?
Signa ユーザーならおなじみ3D Vasc TOF FSPGR(3D 脂肪抑制T1W GE法)にRespiration Triggering(RT)を組み合わせただけです。そう、第10回のSigna甲子園優勝ネタです。詳細は当ホームページの「Signa甲子園2014金賞:Signaで使える呼吸同期EOB肝細胞造影相」を観ていただければ詳しく解説があります。
これを参考にしてLAVA(3D 脂肪抑制T1W GE法:肝臓に最適化)では呼吸が上手く止められない患者さんの造影検査をこのシークエンスで行ってみたところ、動脈相を得ることができました。
しかし、EOB肝細胞相撮像のシーケンスでは撮像時間が2分前後かかります。そこで、動脈相撮像として用いるために時間分解能を改善できないかと考えました。考えた結果、図のように撮像パラメーターを変更し30秒前後での撮像を可能としました。
多時相撮像
撮像時間を30秒前後とし多時相撮像が可能となりましたが、撮像時間は呼吸数によって変わるので、k-spaceの中心に造影のピークがくるタイミングで動脈相の撮像を開始します。後は続けて門脈相・平衡相と撮像して検査完了です。画像を供覧いたしますね。
60歳代男性 難聴にてアナウンス聞こえず
89歳女性 高齢で息止めは出来ず、肝血管腫が綺麗に撮影できました。
このシーケンスでの造影前の単純撮像は、ややSNRが悪いと思われるかもしれません。そのような場合は、単純撮像時に撮像時間を少し長めにして(SNRがよくなるようにパラメータを変化)撮像します。しかし造影後の画像は造影剤が入ることでSNRが高くなるので、あまり気にしなくても大丈夫です。また、全く意思の疎通が得られないような方でも呼吸さえ安定していれば、タイミングを見計らって撮像を開始してみてください。とにかく呼吸間隔が一定(間隔の長い短いは問わない)であれば、息止めができないような方でもあたかも呼吸を止めて撮像したかのような画像が得られるわけです。このように、さまざまな条件で呼吸が止められず診断に支障をきたす様な画像しか得られなかった症例が、安定した呼吸をしていただくだけでキレイな(診断可能な)多時相撮像が可能となりました。ここで最も重要なのは、とにかく撮像中の呼吸間隔を一定に保つことです。呼吸がうまく止められないような方は呼吸間隔が一定になるように練習してから撮像してみてください。また、全く意思の疎通が得られないような方でも呼吸さえ安定していれば、タイミングを見計らって撮像を開始してみてください。とにかく呼吸間隔が一定(間隔の長い短いは問わない)であれば、息止めができないような方でもあたかも呼吸を止めて撮像したかのような画像が得られるわけです。
まとめ
従来なら息止めができず不本意な画像であきらめるしかなかった腹部造影検査も、今回3D Vasc TOF FSPGRにRTを組み合わせパラメータを最適化することで、時間分解能を向上させ多時相撮像が可能となりました。さらに患者さんの呼吸間隔を一定に保つことで、息止めが困難な方でも息止めして撮像したような画像を撮像することができました。今回の手法は皆様の既存の装置で行えます。ぜひ皆様の施設で一度検証し日常業務に取り入れてみてはいかがでしょうか?
ライター紹介 財団医療法人 中村病院 佐々木 基充
学会場や研究会でいろいろな方とお話をしたいけど、話しかけることができない人見知り野郎です。話しかけていただけたらベラベラ話します、飲みに誘っていただけたらホイホイついていきます(沢山は飲めませんが)。見かけたら声をかけてください。
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