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難聴とめまいの MRIについてのピットフォール
- 2016/1/25
- Any Modality, Other Writers, ミニレクチャー
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みなさん、こんにちは。
今日は長縄慎二先生(名古屋大学 放射線科)より原稿を頂戴しましたので早速紹介いたします!
はじめに
読者の皆さんも日々、難聴やめまいの精査目的で 内耳、小脳橋角部のMRI を撮影したり読影したりするケースが日常的に多いと思います。
多くの場合は、画像的に何もなく、“仕事としては楽勝だぜ”という感じの“おいしい仕事”と思っていませんか?
実際、一般病院でのスクリーニングの場合は9割以上そうかもしれません。“聴神経腫瘍だけ除外すればいいや” と思っていませんか?
今回は最近、私達がよく論文や学会発表をしている内リンパ水腫評価のためのガドリニウム造影剤静注4時間後撮影の話ではなく通常のルーチン撮影の話です。
スクリーニング検査でこそきちんと
やはりスクリーニング検査でこそきちんとした検査をしないと異常が発見できず、結局患者さんはその後、いくつもの病院を渡り歩くことになります。苦しい症状があるのに、“精密検査”で何もないと言われ続けることは、とても患者さん本人にとって辛いことです。
ですからスクリーニング検査こそしっかりとした撮像プロトコールで撮像し、かつしっかりとした読影をすることが必要です。患者さんにとってはMRIというのは精密検査中の精密検査ですので、それに恥じない撮像が必要です。
内耳の MRI においては Heavy T2強調の MR cisternography (CISS, FIESTA, b-FFEやSPACE, VISTA, Cubeなど) を撮像することは基本と思われます。脳脊髄液や内耳リンパ液が真っ白になり、脳や神経は真っ黒になるので形態診断のための撮像です。そのため、空間分解能が粗いと撮像する意味がありません。等方ボクセルなら0.6mm立法は最低クリアしたいです。
この撮像は内耳の奇形や聴神経腫瘍の除外に必要なのですが解剖学的な形態構造を精密に示すので内耳形態情報がやや分かりにくい他のコントラスト撮像(単純T1強調画像や単純3D-FLAIR)の読影の際に参考となります。
見逃しやすいポイント その1.突然の難聴とめまい
最初の症例は 突然の難聴とめまい とのことで内耳 MRI がオーダーされました。
MR cisternography (a) と三次元 T1強調画像(c)ではわかりにくいのですが三半規管膨大部には単純3D-FLAIR 法(b)で高信号がみられます。これは抗凝固剤服用中に時々見られる軽微な出血です。こういった点状の高信号も見逃さないことが重要です。こうした症例を見たら服用している薬を確認することが大切です。
その2.難聴
一見すると MR cisternography で特に異常がないようにも見えますが、よく見ると蝸牛の基底回転付近に本来は存在しないはずの高信号がみられます(矢印)。これは蝸牛型耳硬化症の際によく見られる所見です。活動性の高い海綿骨は高信号を示します。蝸牛型耳硬化症は感音性難聴主体でくる場合が多く CT を省略されて MRI 検査に回ってくることもあります。一度見れば忘れないので覚えておきましょう。
その3.めまい
この方はめまいを契機にMRIがオーダーされました。
一見、気づきにくいですが、MR cisternography で前庭内にリンパ液の欠損があります(a)。造影T1強調では強く染まります(b)。前庭内神経鞘腫の例です。内耳道や小脳橋角部だけでなく内耳の中もよく観察しましょう。
おしまいに
読影に自信がない施設ほど、3D-FLAIRを撮像しよう。
耳オタクと言われる私でも3D-FLAIRなしで内耳のスクリーニング検査をすることはとても不安なので、私達の施設では必ず撮像することにして10年近く経過しました。3D-FLAIRに助けられることを多く経験し、今ではなくてはならない撮像と思っています。
単純でも3D-FLAIRでは、内耳になんらかの病変があると、内耳リンパ液の信号上昇があることが多く、3D-FLAIRを見て、初めて病変に気づくことも本当に多いです。
個人的には3D-FLAIR付きに内耳MRと付いていない内耳MRが同じ点数というのは信じられない気持ちです。また自分が患者なら、撮像してもらえないような施設には、絶対に行きません。では、今回はこれくらいにして、また機会があれば、最近、問い合わせの多い内リンパ水腫検査について投稿したいと思います。
そうそう3D-FLAIRについては、以下の総説論文を参考にしてください。
オープンアクセスなので、どなたでもPDFをダウンロードできます。
Naganawa S. The Technical and Clinical Features of 3D-FLAIR in Neuroimaging.Magn Reson Med Sci. 2015;14(2):93-106.
Writer
長縄慎二(ながなわ・しんじ)
名古屋大学医学部 放射線医学教室 量子医学分野 教授
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