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胸椎でもCHESS法を使ってみませんか?
- 2015/12/14
- GE, Other Writers, 創意工夫
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背景
胸椎を撮像する際、圧迫骨折・椎体腫瘍・脊髄炎等の診断には、脂肪抑制画像が必須です。しかし、胸椎は肺と隣接している為、磁場が不均一になりがちで、センターチューニングが非常に難しい部位と言えます
このため上記(左)のように、CHESS法でのT2WI脂肪抑制法では不均一な画像を生じます。この場合は、水信号も抑制されてしまっています。したがって、右のようにSTIRで撮像したくなります。
IDEAL法*はどうでしょうか?IDEALなら磁場不均一領域の撮像に優れますが、CHESS法で撮像するよりも時間がかかります。CHESS法好きの私は、なんとか胸椎もCHESS法で撮像したいと熟考いたしました。
*3point-Dixon法のひとつ((Iterative Decomposition of water and fat with Echo Asymmetry and Least- squares estimation法):3つのエコーを別々に収集して、脂肪、水、in-phase, out of phase 同時に4つの画像を作り出すことができる。3つのエコーを必要とするので通常の撮像時間よりも3倍撮影時間がかかる)
【Shim volumeの使い方でなんとかならないだろうか?】
CHESS法で脂肪抑制をかける場合、皆さんはどのようにShim Volume (SV)を設定しますか?胸椎でSVを置く場合、どこに置いても空気層を含んでしまいます。実質だけにするとSVのFOVが極端に小さくなり、非常に置く位置に悩みます。しかし、私は発見したのです。胸椎に対してこのように敢えて大きくSVを置くと、、、
この様に、非常に均一な画像が撮像できたのです。
GE社製の3台で検証してみました。(1) 1.5T Signa HDxt ver.15.0(CTL234コイルを使用)、(2) 1.5T Optima 360 Advance ver.23.0(HNS CTL234コイルを使用)、(3) 3T Discovery 750w ver.24.0(CT Spine 48コイルを使用)の3台で検証しました。驚いたことに、どの装置でも同様の効果がみられました。従いこの方法は装置や磁場強度に依存せずに使用できると考えています。
なぜこのような事が起こるのでしょうか?
上位はSVを置かないで、胸椎を撮像した場合のチューニングスペクトルです。(左の山が水、右の山が脂肪を表します。脂肪抑制を良好にするには、綺麗にそれぞれの山を分離させ、水の山の中心を左にあるラインに合わせる必要がある)水と脂肪の信号があまり分離できていない事がわかりますよね?
こちらは先ほどの方法でSVを置いて撮像した場合のチューニングスペクトルです。水と脂肪の信号が綺麗に分離できていることがわかります。SVの置き方をこの様にしただけで、こんなにもはっきりと水と脂肪の山を確認できます。SVを置く椎体の高さやFOVを変えて検証を試みたところ、(1) 上下方向の中心は撮像FOV中心に置く (2)前後方向の前縁は椎体前面に揃える (3) SVのFOVは撮像FOVと同等とする、の設定がよさそうです。
さて上記はT2WIでの例ですが、T1WIでの効果はどうなんだ?と疑問に思う方もいるかと思います。こちらは造影剤を使用して検査した化膿性椎間板炎の症例です。
ご安心いただけましたでしょうか?T1WI、T2WI共に効果が現れていることがお分かりいただけると思います。
まとめ
本法は、CHESS法で脂肪抑制を均一に得る方法です。良好な抑制効果が得られるメカニズムは以下の2つの理由によるものではないかと考えています。1)SV内に含まれている単純な空気層(背側部分)は無視することができ、単純に長方形SVとして使用できているのではないかということ 2)胸椎においては、背面にSVのセンターをズラし長方形Shimとすることにより、椎体部前面の肺野に含まれる微小構造物(=磁場を乱すと考えられる)を含んでいないこと。
本法により、IDEALでは撮像時間のかかる感度ムラの無いSE法の脂肪抑制画像、STIRでは取得できない造影後の脂肪抑制T1WI画像をCHESS法にて取得することが可能になると思われます。
SVを置く位置を上下方向はFOV中心、前後方向は椎体前面に揃え、FOVは撮像FOVと同等にする。これだけで胸椎でもCHESS法を使うことが可能です。とても簡単ですので、ぜひ皆様も検証してみてください。
ライター紹介
上尾中央総合病院の矢島慧介と申します。入職1年目からMRIを担当させていただき、現在MRI経験は10年目を迎えました。日頃の画質の悩みを、好奇心やアイデアで色々試しながら改善しようと努力しております。後輩の教育にも力を入れており、技師としてだけではなく、社会人としても立派な診療放射線技師を育てられるよう務めております。
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