THAT’S BANANAS !? MG-Like MR imaging

YouTubeショート動画もご覧ください:https://www.youtube.com/shorts/9AIjlwmWjxY?feature=share

獨協医科大学埼玉医療センターの斉藤です。
フィリップス・ジャパンGyro Cup 2024 で発表した、Bone Like imaging(FRACTURE)を用いたMG-Like MR imagingをご紹介します。

はじめに

乳房検査において多くのモダリティが活躍する中で
「マンモグラフィで石灰化を捉えるのは当たり前。MRIは石灰化描出が苦手」
これは、画像診断に関わる多くの人が感じてきた“常識”ではないでしょうか。
ところが、今回ご紹介するMG-Like MR imagingにより、その常識が覆されるかもしれません。
MRIは乳房内の腫瘍の局在や広がりの評価に非常に優れていますが、石灰化は通常、無信号であるため描出が難しいという弱点がありました。その問題を解決する手段として、FRACTUREを用いて乳房MRIにおける石灰化描出を試みました。

MRIが石灰化に強い!?・・・・そんなバナナ!!と思いたくなるような話を今回はご紹介します。

撮像のコツ:FRACTUREを活かすために

パラメータ設定としては、脊椎などで用いられるFRACTUREを高分解能化する事がポイントとなります。石灰化は微細な構造であるため、できる限り小さなvoxel sizeで撮像することが重要となります。特にスライス厚を1mm以下(0.5 mm isovoxel)に近い空間分解能に設定することで、微小な石灰化の描出が大きく向上します。
次に、信号雑音比(SNR)を十分に担保するために、Flip angleは20°程度に設定します。
本撮像法では約5〜10分程度を目標とし撮像を行なっています。撮像時間の短縮はモーションアーチファクトを抑えることや、また患者への負担も少なくすることが可能です。しかし、高分解能化しているため、撮像時間の延長が問題となります。そこで撮像の効率と精度を高めるために、事前に撮像範囲を絞ることが重要です。マンモグラフィの画像を事前に確認し、病変の位置や広がりを把握しておくことで、最小限の範囲で撮像することが可能となります。これにより、撮像時間の短縮と画質の向上が期待できます。

Fig.1 MG-Like MR imagingの撮像パラメータ

BANANA Study:ファントムによる検証

本撮像法の評価には、独自に作成したバナナファントムを用いました。バナナは乳腺組織、ラードはその周囲の脂肪、卵の殻を石灰化と見立てて作成を行なっています(Fig.2)。このファントムにより、MRI上で各構造がどのように描出されるかを検証しました。DWIで高信号となる模擬病変を作成し、T1WIと他の撮像法との組み合わせにより、視覚的に評価を行いました(Fig.3)。

Fig.2 バナナファントムの構造(乳腺組織、脂肪、石灰化の模擬)
Fig.3 乳房MRIとバナナファントムの比較

黄色の矢印で示した領域を比較してみると、乳腺組織と脂肪のコントラストが非常に類似しています。

症例紹介

Case1:石灰化病変

Fig.4 石灰化の症例

乳腺組織、脂肪、石灰化、皮膚に至るまでマンモグラフィのような画像を描出しています(Fig.4)。

Case2:区域性病変

Fig.5 区域性石灰化の症例

Dense Breast(高濃度乳房)においても明瞭に石灰化を描出しており、良悪性の鑑別に必要となる石灰化の分布も評価が可能であると考えられます(Fig.5)。

Case3:DCIS(非浸潤性乳管癌)

Fig.6 DCIS(非浸潤性乳管癌)の症例

石灰化の位置と造影された病変が一致しており、3D撮像によるMPRやFusionにより石灰化の分布と腫瘍の広がりを把握することが可能となります(Fig.6)。FRACTUREを用いることで診断能の向上が期待できます。

おわりに

FRACTUREは乳房MRIにおける石灰化描出の有用なシーケンスとなる可能性があります。これまでMRIでは困難とされていた石灰化評価が、FRACTUREによって新たな局面を迎えようとしています。
“MRIで石灰化が見える”――そんな話、まるで冗談のように思えるかもしれません。
でも実際に画像を見れば、こう言いたくなるはずです。

「THAT’S  BANANAS!!」(そんなバナナ!!)

ライター紹介

獨協医科大学埼玉医療センター 斉藤 凌
(どっきょういかだいがくさいたまいりょうせんたー)(さいとう りょう)

学生時代は約15年間、柔道に打ち込んできました。現在は畳を離れ、MRIという手強い相手と向き合っていますが、柔道で培った粘り強さと集中力は、MRIに立ち向かううえで大きな支えとなっています。
研究や発表を通じて、迷いながらも学び続ける姿勢を大切にし、少しずつ前進を重ねています。これからも、自分らしく粘り強く取り組んでいきたいと思います。

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Takayuki Sakaiつくば国際大学 医療保健学部 診療放射線学科

投稿者プロフィール

MRIはルーチンを ただ撮るだけとしか考えていなかった技師が、この業界の多くの方に刺激をいただき、人の役に立ちたいと考えるようになりました。技師の知識や技術で救える患者数は圧倒的に変わると思います。様々なレベルの方に、価値のある情報を届けられるよう頑張ります!

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