非造影腎動脈撮像
MRIにおける非造影腎動脈撮像は、造影剤を使用しないため低侵襲に検査を行うことができます。腎機能低下における患者は、造影CTでは造影剤腎症を、造影MRAではNSFのリスクを考慮しなければなりません。しかし非造影MRAではその心配はありません。
当院では、PHILIPSの装置を使用しており、腎動脈を非造影で撮像する場合、bーTRANCE法(balanced-TFE法)による呼吸同期にて撮像を行っています。(B-TRANCE法はPre pulseにより背景信号を抑制し、流入してくる血液を高信号に描出する非造影MRAの手法)
呼吸同期で撮像しているので、1)撮像時間が長くなった場合、2)呼吸が安定しない場合には画像が劣化します。こんな時、次の手として考えるのは何でしょうか?
それは息止めによる撮像だと考えています。
1.5T装置ではbalancedシーケンスによる息止め撮像が可能です。しかし、3.0T装置ではSARの制限(TRが長くなって息止めできない)やbanding artifactの影響などで、困難だと思われます。そこで3.0T装置でも腎動脈を非造影かつ息止めで撮像できるような撮像方法を考案しました。
息止め可能な撮像時間でかつ血管を高信号に描出させたいので、ベースとなるシーケンスは3D TFE法を用います。
設定のポイントは2つです。
1)脂肪抑制方法をmDixon に設定する
脂肪抑制方法をSPAIRとmDixon(water image)で比較したときの画像を示します(Fig.1)。脂肪抑制方法をmDixon にするとSPAIRを使用した時と比べてTR/TEが短縮できます。(=SPAIR法ではCHESSパルスを利用するのでTRが長くなります) そのため撮像時間の短縮とより強いInflow効果を得ることができ、血管の信号を高信号に描出できます。また、受信バンド幅は最大となるように設定します。Dixon法を使用しているので、計算エラーがないようにΔTEはできるだけ短くしたいからです。
2)FAの設定
次にFAの設定です。bーTRANCE法の画像と3D TFE法でのFAを変化させたときの画像を示します(Fig 2)。FAを低く設定することで末梢の血液の縦磁化まで十分に回復させることができ、末梢の腎動脈まで描出することができます。ただし、低すぎると血管の信号強度が落ちるので5°~7°に設定します。
このような設定ができると、20秒間というとても短い時間で撮像できます。
呼吸同期による撮像で同期がうまくいかなくても、この3DTFE-mDixon法を使用すれば腎動脈を末梢まで描出することができます。詳細な条件を下記に示します。是非皆さんもチャレンジください。
自己紹介
熊本地域医療センター 石橋謙吾
2011年に現病院に入職し、技師歴9年目になります。
入職して3年目の頃にMRIをもっと詳しくなりたいと思い、装置を使用した若手ユーザー会を立ち上げ、日々勉強に励んでいます。この撮像方法は「3.0T装置でも息止めで腎動脈を撮像できたらいいよね」ということから世話人のみんなで考案したものです。
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