気持ちが伝わるプレゼンテーション(関根鉄朗先生の感想)

日本医大の関根鉄朗先生が、「気持ちが伝わるプレゼンテーション」の感想をFaceBookにくださいました。

関根先生は、気鋭のCareNeTVでCT読影術の講師も務めています。

とても鋭い観点で丁寧にまとめてくださりありがたいです。ご紹介させていただきます。

全体的な感想

気持ちが伝わるプレゼンテーション、拝見しました。素晴らしかったです!

昨日見て、良いシンポジウムだったなー、と思った後、一晩寝て、何かひっかかる所があり、今朝、もう1回見てしまって、何となく気になってメモ起こししてみました。

セッション全撮りでオンライン会議の動画キャプチャ形式、というのが非常に珍しい。他のシンポジウムでも無いのでは?と思う。セッション内での演者の温度差が無いし、臨場感がある。

◆ 高原先生が所々出す森先生どうぞの手振り。キャプチャ画面と高原先生が見ている画面が同一なのであれば、手を出す向きはmirror imageになるので逆方向になる。少し意識しないと出来ない。

◆ 個性の強い演者を中和する様な森先生の座長進行。

 

高原先生の講演

◆総論として誰にでも当てはまる正論しか述べていない。高原先生みたいに個性がある人が徹底して正論しか述べない、というのが逆に個性なのか。

◆ 松葉さんの所にも出てくるプレゼンテーション中の“効果的なポーズ“、を既に使っていて、プレゼンテーションは”伝わる事が最大の目的“のスライドで出てくる。高原先生のスライドは全て、この命題(アウトカム)を達成するために向けて作成されているとも言える最も大事なスライド。奇しくも、松葉さんのプレゼンテーションでもシチュエーション別にスライドの目的合理性を意識する事が大事と述べられている事と、共鳴している。

◆ こういった異なった演者同士の多層的な絡みが出てくる。良く出来た小説の伏線回収みたい。

ポインタをピタっと止める、というのはノーベル賞の山中さんも自著で大変強調して述べており、当たり前の様で我々も出来ていない。また、この自著のタイトルというのが“「プレゼン」力 ~未来を変える「伝える」技術~』”というタイトルであり、高原先生のスライドと共鳴している。

◆ 突然、一眼レフの持ち方が出てくる。これをアップで見られる点で学会場での講演を超越した瞬間である。

飛び石法は凄く大事。どうしても時間が無い人はここだけでも見るべきと思う。(10分30秒から)

◆ 要点を要約する、というのは良く言われる事だが、むしろここでのキモは述べられている内容の接続詞を意識する事だと思う。ある1つのテーマについて関連するtopicが箇条書き状に述べられているが、それの関連が分からない、という事は良くある。この場合、本人自信も良く分かっていないので議論に手間がかかる。私見だが、込み入った読影レポートの記載などにおいても、前段を受けて後段の所見ないしassessmentがどの様な位置付けなのか?という接続詞を意識する事が大事に思える。これは松葉さんの4象限で述べる、と言う事にも繋がる。

まとめでのスライドキャプチャは、“○○のスライドがあったと思うんですが・・・”という突っ込みが講演で一番多い、という事は逆に言うと需要が高い。

◆ 長縄先生が、色弱の聴衆に対するカラーバリアフリーの観点について補う。

 

松木先生の講演

◆ 松木先生の講演。少しクセがある様に見えて、一番実践的である。case presentationにおいては症例・関連知識について熟読・熟考する事、スライドの推敲を重ねる事の大事さを説いている。その過程で学びが得られる事で、自分の勉強にもなるしスライドもレベルアップする。

実はfor myself、という観点は非常に大事。プレゼンを当たり前の様にする人、それが仕事との認識の人に取っては盲点だが、プレゼンはadditionalの仕事であり、出来れば避けたい、と考える人も一定数存在する。しかし、for yourselfを意識して、スライドを推敲するmotivationを挙げると、新たな学びが得られてfor myselfにもなる。利他だけで無く、利得がある事に自覚的になる事は色々な意味で大事。“発表する事は自分の勉強にもなるんだよ”というのは良く言われるけど、ここまで明示的に事例を示してくれる事は、実は今までに無かったのでは無いか。

◆ 脈絡叢ヘモジデローシスの症例提示。文献報告の所見と自施設症例を比較する事の大事さ、脈絡叢ヘモジデローシス → 下垂体ジデローシス → 脳マラリアと、わらしべ長者の様に連想していくとスライドがステップアップする。

◆ 膀胱絨毛癌においては、1症例を丹念に見て行く事で、主所見のみで無く間接所見を拾う事の大事さを説いている。日常診療にも繋がる。

◆ こういった推敲の結果、スライドへの愛着が持てる程に準備が出来ればゆとりを持ってプレゼンが出来る、と繋がる。この観点から、指導医が作る/直すスライドは最小限に留めるべきだろうか。

◆ オチの下りでも、実は述べられている事は一緒。繰り返し症例・病歴を丹念に見て行く事でオチが降臨してくる、と。主張が非常に一貫している。

 

松葉さんの講演

◆海外研修のプレゼンテーションにおいて研修現場の写真を載せる事でイメージが沸く。聴衆と演者の間のfilling gapの役割を写真が効果的に果たしている。

◆ 米国の医療情勢についてのスライド。箇条書きで書いてあり論点が羅列されているために、逆に疑問点を削いでしまう。情報は最小限にキーとなる幹のみの全体像を提示して、疑問の余地を残してdiscussionを引き出す。自信が無いと出来ないと思う(考えが浅いなーと思われてしまう不安がある)。いっちょ、discussionしてやろうと我々は乗せられていた訳です。

ビジネスマンとしてのDNAを刺激する様なスライドを提示する、との下り。情報を提示するだけでは無く、見た時に自然に突っ込みが入る事まで意識している事が非常に伝わってくる。これらを人当たりが凄く良い松葉さんがやるから凄みがある。

◆ まとめで、背景・聴衆・文脈を意識する事がスタートポイント、目的合理性を意識することが大事というのを再認識。

◆ 松木先生の様なnatural-bornで個性がありそうにお見受け出来る先生が、松葉さんの個性について突っ込んだ質問が非常に面白い瞬間。ポージングの話が引き出されて非常に興味深い。

 

長縄先生の講演

◆ 長縄先生。海外座長・海外演者のお話。導入の目的として、目的をスライドの字の通りにゆっくり読む事は確かに。やはり発音が悪いまま、冒頭からまくし立てられると、ちょっと引いてしまう。

日独放射線やKCR、KSMRMがデビュー戦に最適、というのはなるほど、と。同様に日スカなども良いかもしれない。

◆ ただ、上記の話を除いて、実は多くの話が“明日から使え”ない話が多い事に気付く。恐らくは私も含め、聴衆の多くが長縄先生程にはactiveな海外学術活動を行わない可能性が高い。

◆ では、この講演の意味が無いのか?と疑問設定をしてみて、本講演の役割に思い当たる。全国の野球好き、あるいは野球をやらない物ですら、イチローの書籍を読んで、何かしら自分の生活に活かす事を思い出す。すなわち、“出来る人が海外講演や海外座長の時に感じている事”をなるべく素のまま語ってもらい、それを頭の中で臨場感を持って再生する事で、別個の事象にも活かす事が出来るという事に思いが至る。

◆ ここで、演者選定の妙に改めて気付く。恐らく、この演者設定の対極にあるシンポジウムの企画案を考えるのであれば、“私が考えるプレゼンテーション術のキソ”などとやって、“画像診断医の立場から”、”IVR医の立場から”、”放射線治療医の立場から”などとやって、高名な教授がやってきて内容が被る(話すスピード、スライドの文字数、体験談など)事だろう。

◆ こういった並列の演者の関係では無く、各演者が全く違う立場・違う観点で、同じ内容 (e.g. スライドの聴衆や目的合理性を意識する、スライドの推敲・準備が大事、聴衆の質問の余地を残すために敢えてスライドを間引く)を述べている所に、このシンポジウムの真骨頂がある事にようやく思いが至る。

◆ 松木先生から同一テーマについて、論文と発表のタイミングはどの様にしているか?についての質問あり。論文が完成しているタイミングで発表をすると、記憶もあるしファイルのありかも分かっているので効率が最大化される、との回答。別個のテーマになるが、“研究発表を最大限効率化するためにはどうするか?”と言う事が長縄先生の研究活動の命題にある事が伝わってくる。私の様なレベルが低い人間は学会発表を締め切りにする事で、研究を進行させるためのdriving forceとしている訳だが、いつか長縄先生の様に解脱したい。

 

という事で、森先生が明日から実践していただく事をお勧めいただいたので、まずは簡単な一歩から、という事でこの早口なプレゼンをいい加減直す方向かな?などと思いました

 

FB上のやりとり

 

JRC2020webでは・・・

「伝わる」もしくは「プレゼン」で検索してください。

 

 

 

 

 

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tarorin

tarorin東海大学工学部 医用生体工学科 教授

投稿者プロフィール

MRIの撮像・フィルム焼き・患者導入に従事していた経験を活かし、企・技・医の中間の立ち位置を大切にしています。モットーは研究結果を中立的に判断すること、皆で研究成果を愉しむことです。

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