温故知新ーシーメンスの古い月刊誌から学ぶ

HIRE(High Intensity Reduction)テクニックってご存知ですか?

今から20年ほど前にシーメンスのアプリケーションからユーザ向けにNew Technique of MRというテクニック雑誌が発刊されていました。現在のSIEMENS-Futureみたいなものですね。この雑誌の内容が独創的で非常に面白く、今では考えられない切り口でMR情報を紹介してくれています。例えば、この 1996年7/8号を見ると『この夏の目玉商品』としてエコースペースをかなり短くした”改良型のHASTE”の紹介をしています。さらに次号の予告では『TurboFLASHの夜明け』、という斬新なタイトルで紹介されており、本当に遊び心のある雑誌です。そして、この号で特に注目して欲しい記事があります。

New Technique of MR

HIRE対FLAIR

FLAIRシーケンスというのは。ご存知の通り、IRパルスを使用して、ちょうどCSFの信号がゼロになったところで撮影を開始するわけですね。だから脳脊髄液を抑制することが可能で、脳室周辺の小病変の検出に定評がります。病変は一般にT2が長いので、エコー時間は通常長めにとり、100msぐらいのT2強調をつけるのが普通です。しかし一方で、IRパルスを使用しているためにT1強調にもなってしまいます。この結果、FLAIR画像はT1強調とT2強調がともに入った画像となります [詳しくは「MRI自由自在」の129~132ページをご覧ください] 。これにより質的診断が難しくなる場合もあるわけです。

HIREは、その存在が忘れ去られたシークエンスです。”High Intensity Reduction(高輝度抑制)” の略ですから、FLAIRと目的が良く似ています。FLAIRと違うのは、あくまでもT2強調像であることです。その原理と理由を説明しますね。

撮像原理
CSFの信号が(余り)減衰しなくなるTE領域で2つのエコー信号の画像を取得します(第1エコ-のTEを60~90ms、第2エコーのTEを160~250msに設定する)。そして前者の画像から後者の画像を引き算することによってCSFの信号のみが抑制される、という至って単純な技術です。この方法はCSFのT2値が他の脳組織に比べて著しく延長しているという性質を利用してCSF信号を抑制するわけです。

スライド1

特長として

  1. まぎれもないT2強調画像なので、コントラストの挙動が理解しやすい
  2. TI(反転時間)がないので撮像時間が短い
  3. 特殊なデータ収集方式を必要としない

と記事には記載されていました。

ためしてガッテン!!

では実際に20年前の記事を確かめてみました。

  • 使用シーケンス:2D-TSEシーケンスを使用します。
  • 設定方法①:SequenceカードのContrastsを2にすると2つのTEが設定できます。
  • 設定方法②:TE1=90ms前後、TE2=150ms前後に設定します。
  • 設定方法③:TR5000ms, マトリックス256, FOV250mm、撮像時間は45秒ぐらいになります。

・画像処理はTE1の画像からTE2の画像を引き算します。
スライド2

結果、簡単にCSF(水)の信号が抑制された画像ができました。通常のFLAIRに比べて白質/灰白質のコントラストが良い印象もあります。ただ臨床の現場で使用する際の疑問点としてCSFと同じようなT2値の病変は消えてしまうのでないでしょうか?(悩)

スライド3

では実際にHIREのコントラストは臨床に応用できるのでしょうか?

注目したい論文

JOURNAL OF MAGNETIC RESONANCE IMAGING 11:506–517 (2000)に掲載されていた論文です。撮像時間がかかるInversion Recovery法を使用せず2種類のTEの差分画像により脳脊髄液を減衰させた画像を作成し脳腫瘍部の淡い陰影を強調できる方法としてHIREの有用性を報告しています。
スライド4

今度、皆さんもお時間がありましたら試してみてください。そしてHIREを使って面白いコントラストが出たら”MRIfan.net”にご連絡ください!!

『古きを温ねて新しきを知る』・・・・なんとなく、この言葉がわかるような気がした今日この頃です。

 

Chief Editor’s Comments

忘れ去られたシークエンスについて掘り返してもらい、非常におもしろい考察をしてくれています。一般的に病変は、T2値だけでなくT1値も長い (long T1, long T2 lesion)ので、FLAIRにおいては、「病変のT1値が長い(CSFに比較的近い)」と、信号強度的には(不要に)小さくなる懸念があり、この意味でT1コントラストが少ないHIREがより役立つ可能性はあります。FLAIRでは、逆に、T1コントラストが混入していることを利用して、造影される病変が、(造影後)FLAIR画像で強調されるという使い方もありますね。このあたりについて、みなさんがいろいろと試行錯誤するとおもしろいかもしれません。この、HIREが出た時には、まだHASTEなどの応用が始まって歴史が浅い頃で、コイルの性能も悪かったわけですが、いまは(HIREで使用するような)長いTEの領域も、かなり問題なく使えるので、再度試してみる(北川さんのいうところの温故知新)はやってみる価値があると思います。

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北川 久東京慈恵会医科大学附属柏病院 放射線部

投稿者プロフィール

MRIの奥の深さにいつも悩まされています。
おそらくゴールの見えないMRIをこれからも追い続けるでしょう。

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