3.0T-MRIにおけるMP-RAGEを用いたMR Direct Thrombus Imagingの落とし穴

頸動脈プラークイメージングについて

頸動脈狭窄症の治療を考える上で、狭窄部位におけるプラークの性状評価は治療方針を決定するためには重要であります。このため頸動脈プラークイメージングは様々なモダリティにて行われている現状です。特にMRIは、侵襲性の少なさ、普遍性などから研究が目覚ましくDouble-IR 法によるblack-blood imagingや3D-turboSE法など様々なシーケンスによりアプローチされている。そこでSIEMENSの装置では3次元T1強調画像法であるMP-RAGEによるMR Direct Thrombus Imagingがプラーク評価にも臨床応用されています。これまでも1.5Tを用いたエビデンスが多数あります。手法としては、水励起による脂肪抑制と血液信号を抑制するためのTI(inversion time)を設定する特殊法であり他のメーカーの装置では検査できません。しかし、3Tではうまく血液抑制ができずプラークを描出できないとの声を聞くことがあります・・・
スライド1

Fig1の高信号の意味は?

Fig.1はエコーやMRAにて頸動脈狭窄症を疑われた症例でありますが、観察したい内頸動脈と外頸動脈の分岐部(bifurcation)を中心に撮像範囲(FOV)を設定しております。また、折り返しアーチファクトなどが出ないように撮像条件も適宜設定してありました。左総頸動脈からbifurcationに至る部分まで血栓あるいは潰瘍形成と思われるような高信号域を認めましたが、何かおかしい・・・? そこでFOVの設定を変更し再度撮像!

FOVの設定を変えてみると・・・

血液信号は抑制され頸動脈は無信号となりました。そこでMP-RAGEによるプラーク評価のための撮像方法についてまとめてみます。

スライド2

MPRAGEシーケンスとは?

スライド3

3.0T-MRIにおけるMP-RAGEを用いたMR Direct Thrombus Imagingの落とし穴

総頸動脈に流れてくる血液信号を確実に抑制するには、適切なTI設定が必要であり3Tでは500msec程度となります。この値に関しては、幅があり高脂血症などにより個人差が多く1.5Tでも時々問題となる場合があります。3Tの場合は、組織のT1値の延長により縦磁化が回復しない状態で次のIRパルスがかけられる状態となるので1.5Tの時よりもnull pointが短縮される傾向になります。更に3Tでは、そのポテンシャルを活用するためFOVも小さくし、より高分解能に撮像しようと考えると思います。Fig.1ではFOV内に大血管が含まれておらず十分に血液にIRパルスがかかっていない状態です。そのため頸動脈では血液が高信号となってしまったと考えます。Fig.2では胸部大動脈弓部が十分に含まれるようにFOVを設定しており頸動脈が無信号となりました。
スライド4

従来、1.5Tでは信号強度やコイルなどの問題から300~350mm程度の広いFOV設定を行い撮像していました。このためIRパルスのかかる範囲内に大血管が十分含まれていました。しかし、3TではFOVを小さくした分、大血管系が入るようFOV設定に気を配る必要があります。適切なTI値を設定する方が格段に難しいと思われますが、パルスのかける範囲はオペレータが確実に決定できます。
スライド5

脂肪抑制効果は肩周辺で悪く、一見画像としては信号ムラがあるように感じますが目的とする部位はしっかりと脂肪抑制されソフトプラークは高信号として観察できます。提出する画像はトリミングや拡大などして保存し直してPACSへ送ればよいでしょう。

ということで自分もTI設定で迷惑をかけないようにドロドロ血には、ならないようにしたいものです・・・

ライター紹介

真壁武司

(市立函館病院 中央放射線部技術科)

MRIは1992年からSEIMENSのMAGNETOM Impact Version A1.1という装置をturbo-SEがまだ使えない時代から20年以上にわたり使っております。現在もMAGNETOM Symphony1.5TとSkyra3Tを使用しております。技師歴も四半世紀を越え、最近はMRの責任者を後輩に譲りちょっと装置を操作する機会が減りうずうずしております。
真壁さん顔写真

 

 

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