MR学会の感想(日本医大 関根鉄朗)

SyMRI

Synthetic MRIの講演で、高原先生の”我々はMRIコントラストを理解していたつもりになっていたが、例えばプロトン密度など、見落としているコントラスト情報が多いのでは無いか?”と言う問いかけは目から鱗でした。

我々放射線科医はconventional MRIにおけるsignal intensityの組み合わせ → MRIコントラストの定量値の推定 → 実際の組織コンポーネントの推定を行っている訳です。しかし、ここのMRIコントラストの定量値の推定を網羅的と言うか体系的にやっていたら疲れてしまうので、ある程度経験則的に直感的にやってる訳ですよね。
これって、例えて言えば、将棋の棋士が、盤面の状態から起こりうる全ての手を読んでいる訳では無く、ある程度、直感的に情報をそぎ落として圧縮して必要な手を考えているのと似ていると思います。

ただし、人間の直感には絶対にpitfallがありますので、読影力を向上させるためには、何処かで何かしらの正しいフィードバックをかける必要があると思うのですが、例えば、毎回定量画像を撮影してside by sideで確認する、とかはナンセンスですし、技術的に不可能であした。
このフィードバックを、Synthetic MRIの導き出す組み合わせ画像が担う事が出来るのであれば面白いと思いました。

大変大ざっぱな言い方になりますが、多くのMRI新規技術は新しいコントラストを追加する、と言う意味では興味深い技術が多かったものの、ベーシックなT1WI、T2WIに匹敵する物は非常に少なく、日常診療の枠組みでルーチンで撮影されているのはDWIくらいだと思います。
これは、”臨床現場で運用可能で解釈が簡便かつ真の意味で診断能の向上が得られるコントラスト”を開発する、と言うのが非常に困難だったからだと思います。
そんな中、診断能の向上と言う絶対的な命題に対し、Synthetic MRIが、”新規のコントラストを提示する”と言う方向の解決策では無く、”放射線科医の診断的直感力に良いフィードバックを与える事で、これをブラッシュアップする”、と言うヒトに光を当てた解決策を提示するツールになるのであれば、全然違う方向性の技術だなぁと思いました。
その意味で、Synthetic MRIが”T1定量値・T2定量値・PD密度が算出出来ます”で終わらせずに、”使いやすいGUIで簡便にコントラストが導けます”、と言う仕様にしたのは大変素晴らしかったと思いました。
診断困難例であればある程、こう言ったフィードバックが生きる技術な様に思いますし、一刻も早く使ってみたいと思っています。

会場で渡邉先生も質問されていましたが、Synthetic MRIが3Dでvolumeで撮影が可能になるのであれば、定量画像の算出は機械診断と相性が非常に良いので、そちらの方に向かうと思います。
そんな中、Synthetic MRIのインターフェースが放射線科医の認知にもフィードバックをかけるのであれば、何というかAi vs. 人間と言う文脈で見てみても面白いなぁ、なんて思いました。

私の研究分野について(PET/MR と 4D Flow)

私の研究範囲については、これがPET/MRと4D Flowなのですが、どちらも国内だとuserがまだまだ少なくて、と言った所でしたが、その分、私の様な若輩者がレベルの低い質問しても許されるので若干、気楽でした。
PET/MRの演題を6演題持っていって、JSMRMのPET/MRの演題の半分以上が私のZurichからの演題と言う嫌がらせの様な感じだったのですが、シンガポールのISMRMでもPET/MRのmeetingが設けられましたし、今まで交わる事の無かった、MRI屋さんと核医学屋さんが積極的に交流が可能になって相乗効果を生む良い研究ツールと考えています。
何とか国内のMRIに興味がある方々にも面白いと思ってもらいたいなぁ、と感じました。

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