Diffusion Tensor Image用いた頭部MRI ルーチン検査

背景 なぜDTIを用いるのか?

当院ではGE-HC社製 Signa HDxt 1.5T ver.15を使用しており、頭部MRIルーチン検査における拡散強調画像をDiffusion Tensor Image(DTI)で撮像しています。
通常の拡散強調画像のシークエンス(Iso DWI)では、ADC mapを自動で作成してくれないため、撮像後に解析ソフトを手動で立ち上げて処理する必要があります。一方、DTIのシークエンスではADC mapを自動で作成してくれます(Ver.23以降は拡散強調画像も自動でADC mapの作成が可能)。
スライド1 
スライド2  当院では、日当直時における緊急頭部MRI検査を普段MRI検査に従事していない担当者が対応しなければならない環境にあります。慣れていない担当者にとって、脳卒中が疑われた緊急頭部MRI検査で、検査対応するだけでも大変であり、さらにADCの作成となると決して容易ではありません。そこで、DTI撮像によりADC mapの自動化を図り、慣れていない担当者の不安を少しでも解消できるように工夫をしています。
今では、慣れていない担当者であっても、rt-PAを考慮した緊急頭部MRI検査などにも対応することができており、DTIを用いたADC mapの自動化は重要なメリットとなっています。
また、DTI撮像を用いたことで、撮像後にTractographyによる皮質脊髄路の可視化が可能であり、臨床的有用性も高いです。

「Tractography による局在診断の有効性」

DTIは皮質脊髄路をTractographyにより可視化をすることで、皮質脊髄路と急性期脳梗塞や脳腫瘍などの病変領域の関係を評価することができます。
ただし、この点に関しては、臨床的有効性は高いですが、通常のIso DWIとDTIではGradientの印加方法が異なっているため、ADC値が異なる可能性があることを考慮する必要があります。

・主訴~

左下肢麻痺の症状により当院ERを受診。CT検査施行後、右視床梗塞疑いにて、当直時の緊急頭部MRI検査が施行された。

プレゼンテーション1・画像所見~

右内包後脚レベルに拡散強調画像で高信号病変を認め、ADCの低下を認めた。

後日、Tractographyを可視化することで、右皮質脊髄路が同病変領域を穿通していることが確認でき、左下肢麻痺の臨床所見と合致していることが把握できた。

頭部MRIルーチン検査におけるDTIのメリット

・ADC mapの自動化により、MRIに不慣れな担当者であっても、 時間外の緊急MRIでのADC mapの臨床へ提供を含め、ルーチン検査を対応することができます。
・皮質脊髄路をTractographyにより可視化することで、画像所見と臨床所見を相関させての評価が可能である。

頭部MRIルーチン検査におけるデメリット

・通常のIso DWIと比較して、DTIではGradientの印加方法が異なるため、ADC値が異なることを考慮する必要があります。
・Iso DWIからDTIに変更した場合、約30秒撮像時間の延長を伴います。Iso DWIと同一の撮像時間にする場合、NEXを減らす必要がありますが、その場合、一つ一つのデータの信頼性が損なわれてしまいます。(=SNRが悪くなる)   このことを考慮し、撮像条件を検討する必要があります。以下に、当院での頭部MRIルーチン検査におけるDTIの撮像条件を記載します。

【撮像条件:DTI】
TR:8000ms、TE: Minimum、Matrix size:160×192、NEX:2、rBW:250kHz、
FOV:24cm、Thickness:6.0mm、b factor:1000s/mm2、slice count:22~24、
DWI:tensor(Diffusion Directions:6)、scan time: 1min30sec
※Iso DWIでは、上記撮像条件の場合、1min05secとなります。

ライター 昭和大学藤が丘病院 放射線室 本寺 哲一

写真

deputy editor’s comments

当院もSCUを6床持っているので、24時間MRI対応しています。MRIに慣れていない方(さまざまな技師さんがいる)がいる中で24時間、救急対応していると、本寺さんの工夫はとても良い方法だと思います。MRAの体裁もマニュアル作成、研修をおこなっても普段やっていないので人によってさまざまになります。当直者は、MRIのみでなく、さまざまな業務をこなさなくてはならないので、できるだけ自動化していることが望ましいと考えています。

横浜栄共済病院放射線技術科 高橋光幸

 

 

 

 

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