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Time-SLIPにおける脂肪抑制法はCHESS or STIR?
- 2014/12/9
- Other Writers, キヤノン(旧東芝), 創意工夫
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非造影MRA (Time-SLIP) を行う時の脂肪抑制法は?
Time-SLIP法で腎動脈など非造影MRAを撮影する際、脂肪抑制パルスを印加しています。使用可能な脂肪抑制法はCHESSとSTIRですが、どちらを使用するかで描出能が変わります。
末梢血管を描出したいときはBBTI値を長く設定します。しかし、CHESSではBBTI値を長くするほど背景信号が回復してくるので逆効果なことがあります。そこでSTIRを使用します。STIRではBBTI値によらず背景信号が抑制されているため末梢血管まで綺麗に描出されます。
下図は腎動脈瘤の症例です。STIRの方が末梢の描出がよいのがわかります。
(図1)
ただし、STIRで綺麗な血管描出を行うにはコツがあります。それは、Shot intervalつまり呼吸間隔で背景信号の抑制のされ方が変化するということです。とくに問題となるのは水の信号で、尿や脊髄液が高信号として残ってしまうことがあります。この現象は、呼吸間隔ごとにBBTIの設定を変えることで改善されます。
最適な設定値は?
下図は呼吸間隔とBBTI値ごとの骨盤内を比較した画像です。最も膀胱の信号が抑制されているものを赤枠で記しました。呼吸間隔が長くなるにつれBBTI値も少しずつ長くすると、膀胱内の尿が抑制されていることがわかります。
(図2)
患者さんの呼吸間隔の時間から適切なBBTI値を設定するだけです。呼吸間隔の時間は、呼吸同期設定画面のP-P間隔となります。
(図3)
簡単なパラメータの設定で、time-SLIP法での血管描出能は変わります。
抹消血管まで、うまく描出できないときは、一度お試しください!
ここだけは注意!
検査をうまく行うためには、呼吸間隔によって脂肪抑制法を使い分ける必要があります。STIRは図2からわかる通り、患者さんの呼吸間隔が短い場合にはBBTI値が短くなり、逆に抹消血管の描出が悪くなってしまうので注意しなければ」いけません。
Time-SLIPとは?
Time-SLIP(Time-spatial Labeling Inversion Pulse)はIRパルスを用いて血管を選択的に描出する方法です。腹部の非造影MRAを撮像するときは、Move-in法といって選択的IRパルスが印加された領域に流入してくる血液をin-flowとしてとらえます。下に模式図を示します。
目的の領域に選択的IRパルス(180°反転パルス)を印加することで、その領域は低信号となります(背景、血管信号が抑制されます)この領域外からパルスの影響を受けていない血液が高信号として流入してきます。目的血管が描出される時間(BBTI)よりDATA収集します。
選択的IRパルスで反転された背景信号は時間(BBTI)が長くなるほど回復してくるので時間設定には注意が必要です。
ライター紹介
佐藤 秀二(順天堂大学医学部附属順天堂醫院)
就職して初めてMRIに就いた約20年前「魔法の機械だな!」と思い、あれから長くMRIに携わってきましたが、未だにいろいろ悩むことも。嗚呼、MRIって奥の深い・・・。