非同期非造影・下肢静脈瘤の撮像(東芝装置)

当施設では静脈瘤外来からの依頼による下肢静脈撮像を行っています。
下肢静脈の非造影撮像と言えば、FBI法 (Fresh Blood Imajing) が代表的です。FBI 法は、心電同期により拡張期と収縮期を得ることで動静脈分離が可能な撮像方法です。
しかし、不整脈など心周期が一定でない場合には分離が困難なこともあります。
そんな時に、心電同期を使わずに分離像を得る方法があります。
今回は、FSBB法を用いて動脈信号を消し、静脈像のみを描出する方法をご紹介します。

FSBBとは?

FSBB法(Flow Sensitive Black Blood)は、FE 法 (Field Echo ) に MPG (motion proving gradient ) パルス を3軸に印加することで血液の流れを拡散する Black Blood-MRA法です。シーケンスチャートを示します(表1)
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表1.FSBBのシーケンスチャート

FSBBを用いた下肢静脈描出方法

下図は、下肢動脈を想定して作成した5㎜径の血管ファントムに、30mm/s の流速を与えた時の画像です。b値を0.1ずつ変化させています。
b=0 では高信号です。これは流速のある血液信号をとらえていることを示しています。b=0.1ではほぼ低信号であり、さらにb値を上げていくことで完全に低信号となります。このことから下肢動脈のように流速のあるものは、b=0.1で抑制されることが推測されます。

図6

この結果を臨床で使用するための、b値を考えます。b=0 では動静脈像が描出されますが、b値を上げることで流速の早い血管の信号抑制がされることが分かります。そして、静脈瘤のように流速がほとんどなく、停滞しているような血液信号は抑制されずに残ります。この結果から、b=0.1に設定することで流速の早い動脈血はディフェーズされ、流速がほぼ0に近い静脈信号が残ります。

FBIと比較してみました

FBI(下左図)に比べ FSBB (下右図)は、表在静脈の描出能が向上しているのがわかります。静脈瘤も FBI に比べ明瞭に描出されています。Full MIP 処理しているので SNRも高く難しい画像処理も必要ありません。

図7

FBIでは大伏在静脈が大腿中部で分岐した後の描出が不十分ですが、FSBBではしっかり描出されています(図2)。皮下脂肪の脂肪抑制効果もFBIより良好のため、表在静脈瘤が明瞭に描出されています。

図2

また、スラブMIP表示や横断像に再構成することで、深部静脈から表在静脈瘤に交通する穿通枝が明瞭に描出され、高位結紮術の術前画像として有益な情報を提供できると考えています。

図8

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まとめ

FSBBを用いた下肢静脈の撮像方法を紹介しました。FSBBは停滞している血液、いわゆる静脈瘤を明瞭に描出できます。しかし、2つ前の右側のFSBB像を見てわかる通り、深部静脈はFBIに比べ描出能が劣ります。これは、深部静脈はある程度流速があり最小のb値(=0.1)でもディフェーズされるためと考えています。よって現段階ではFBI法をルーチンとし、動静脈が分離できない場合や、表在静脈と深部静脈との穿通枝を見るための+αの追加撮像としています。まだまだ工夫の余地があると思われますので今後報告できればと思います。

Writer紹介!

千葉県済生会習志野病院の永田覚です。今年で技師歴10年目を迎えました。MRIは7年目になります。今回のこの記事は昨年に画論で入賞した時のものです。まだまだ分からないことが多くこのサイトで勉強させていただいております。当院は部活動が多く、私は軟式野球部のキャプテンをしています。その経験を生かし、仕事でもリーダーシップを発揮していけるよう頑張っていきたいと思います。FullSizeRender

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