日立のprime FSEシークエンスについて

日立のprime FSEとは

日立のprime FSEシークエンスについて解説します。
prime FSEは日立独自のシークエンスで従来のFSEを改良したシークエンスです。本稿をより理解して頂くために、【FSE(ファーストスピンエコー)について—日立編】をぜひご一読下さい。

prime FSEの特徴

【FSEについて—日立編】の中で実効TEを直接入力することができないと書きましたが、prime FSEでは実効TEを直接入力できます。あまりMRIのことを詳しくない方でもTEを簡単に設定出来ます。またEcho Alloc(エコー配列)は自動的にCentricになります。k-spaceを2分割し、2回の励起でk-spaceを対称的に充填します。さらにk-space上の隣り合うエコーの強度差が滑らかになる様に自動的にエコーを並び替えるのでアーチファクトの少ない画像が得られます。(図1)

スライド1

 prime FSEの実践的使用法

もちろんFSEの代わりに使っていただいていいのですが、特に有用な使い方を4つご紹介します

1. FSEで大きなEcho Shift(エコーシフト)を使用する時

【FSEについて—日立編】でEcho Shiftを使ってk-spaceの中心を埋めるエコーをずらして実効TEを変えることができると書きました。しかしFSEで1回の励起の間に得られるエコーはT2減衰や位相分散の影響でエコーの後半になるほど小さくなります。Echo Shiftを入れなければ、k-space上でのエコーの配列は順番通りになり、隣り合う信号の強度差は緩やかですが、Echo Shiftを入れるとk-space上で1番目のエコーと最後のエコーが隣り合うことになり、k-space上で大きな強度差が生まれてしまいます(図1A)。この強度差がk-spaceの真ん中に近くなると、ringingアーチファクトやblurringアーチファクトが発生します。(例えばEcho Alloc.がSequential、E.factor(エコートレイン数)が10、Echo Shiftが5とか-5の場合(図2A))それに比べprime FSE法はk-space上の隣り合うエコーの強度差が滑らかになる様に自動的に信号がならび替えられます(図1B)。よってFSEで大きなEcho Shiftを使用する時はprime FSEを使用する方が、ringingアーチファクトやblurringアーチファクトが少なくなります。(図2B)

スライド2

2. 脂肪抑制T2強調画像を撮像する時

IRによる脂肪抑制法であるSTIRや周波数選択型(sinc、H-sinc)の脂肪抑制法を撮像する時、SNを稼ぐためにE.factorを大きく設定することが多いと思います。(E.factor を大きくして撮像時間を短くした分、短縮時間を使いSNを高くするために加算回数を増やすと言う意味です。)
FSE法やFIR法を用いたSTIRや周波数選択型の脂肪抑制法でE.factorを大きく設定すると実効TEが長くなってしまい、画像が真っ黒になってしまいます(図3A)。こんな時にprime FSEを使うと実効TEを自由に設定できます。その効果ですが、例えば1)TEを60msなど短めの値にして解剖学的情報を残したい場合(図3B) 2)マジックアングルアーチファクトの影響の少ないTE40msの設定などが出来ます。

スライド3

3. プロトン密度強調とT2強調のダブルコントラスト撮像時

ダブルコントラストは2つのTEを設定しなければならないのでFSEでは面倒です。
prime FSEでは2つのTEをそのまま設定出来ます。
(もっとも最近は別々に撮像しても時間的に変わらないので別々に撮像することも多いのですが…)

4. 動きに強い設定にしたいとき

骨盤腔の撮像(図4A)など、動きに強い設定にしたいときInterE.Time(エコー間隔)を短くすると、TEが短くなってしまいます。そんな時はInterE.Timeを最短にする→シーケンスをFSEからprime FSEへ変更→TEを設定すると簡単です(図4B)。初めにシーケンスをprime FSEにするとInterE.Timeが変更できなくなってしまうのでFSEの時に変更しましょう。(InterE.Timeを短くすると受信バンド幅が広くなります。動きに強くなりますが、SNは悪くなるので、撮像してみてSNが低いようでしたら他のパラメータで調整して下さい。)さらにRADAR(ラジアルサンプリング)をONにするとより動きに強くなります(図4C)。

スライド4

RADARの設定法についてはまた別の機会に書きたいと思います。

 

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